表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全無欠と噂の幼馴染が生徒会長になったら、ポンコツ過ぎて泣きついてきた  作者: なぐもん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/33

28話 お願いします

「火気使用教室の監督体制についてですが、現時点では各教室に責任者を一名配置し、加えて生徒会の巡回担当を増員しています」


 智也が発言すると、先生たちはみんなそちらを向いた。


 スクリーンが切り替わる。

紺野が、すぐに該当スライドを表示していた。


「えっと? あとは混雑時の誘導責任者と、雨天時の代替導線と、緊急時の第一報でしたね」


 智也がわざとらしく質問を言い直して私を見ると、

「それは会長から返答させていただきます」

と言って、一歩下がる。


 ああ、そうだ。

これは私の勝負なんだ。

智也は全てを自分でやるつもりなんかないんだ。

私にさせようとしている。


 さっきから想定外のことが起きすぎて、混乱していたが、智也がいてくれるだけで落ち着けた。

私は練習した通り、答えるだけだ。


 ――もう、なにも怖くない。


「非常時の最終判断は、教室責任者単独ではなく、担当教員と生徒会巡回担当の連携で行う想定です。こちらに連絡フローをまとめています」


 矢印付きのフローチャート。

先生たちの視線が、今度こそはっきりと資料に向く。


「混雑時の誘導責任者は、実行委員会を組織して、各階に二名ずつ配置予定です。雨天時については、外部導線を使わず、昇降口側に一本化した代替ルートを用意しています」


 ひとつずつ。落ち着いて。明確に。

何度も確認した通りに。


「緊急時の第一報は、各模擬店責任者から担当教員へ。その後、生徒会本部と教頭先生に即時連絡。必要に応じて保健室、職員室への連携を優先します」


 先生たちの表情が、少しずつ変わっていく。

懐疑から、確認へ。

確認から、納得へ。


 それが、わかる。


「……以上が、安全対策に関する現時点での対応案です」


 言い切ったとき、喉の奥につっかえていたものはもうなくなっていた。


 ……言えた。

ちゃんと、全部。


 いや――智也が助けてくれたんだ。

 

「わかりました。結構です」


 質問した三年の学年主任も納得したような表情を浮かべていた。


「他にご質問はありますか?」


 優乃がそう言って次の質問を促すが、先生たちから手はあがらなかった。


 だけど、優乃はおかしなことを言った。


「はい、黒瀬くん」


 前ばかり見ていて気づいていなかったが、どうやら隣の智也が手を挙げていたようだ。


「すいません。これは生徒会としてというより、個人的なお願いなんですが」


 智也がおもいっきり頭を下げた。

 

「お願いします! 文化祭をやらせてください!」


 智也は、腹の底から振り絞るような声を出した。


「金城会長は就任以降、ずっと必死にやってきました!」


 あの智也が? いつも論理的で、理屈屋で、こんな感情的に?



 私は、息を呑む。智也は、私を見ない。

先生たちに向かって、まっすぐに言葉を重ねていく。


「予算の再調整も、各クラスとの交渉も、出店配置の見直しも。うまくいかないことがあっても、最後まで投げ出さずにやってきました」


 やめて。

そんなの、言われたら。


「僕たち生徒会は、それをずっと見てきました」


 その言葉に、隣で優乃が小さく息を呑む気配がした。

紺野は、唇をきゅっと引き結んでいる。

千景は、無言のまま、それでも前を見ていた。


「未熟な部分は、あると思います」


 智也は続ける。


「でも、会長は生徒のために、蒼山高校のために――」


 淡々と。でも、熱い想いを――。


「金城会長はとても真剣に取り組んでいました! どうか、文化祭を、やらせてください」


 そう言って、智也はもう一度深く頭を下げた。


 その背中を見ていた優乃が続く。


「お願いします」


 紺野も、千景も、慌てたように立ち上がり必死に頭を下げた。


「……お願いします」


 私は、呆然とその光景を見ていた。


 ……もう限界だった。

沸々と、目の奥から熱い物が込み上げてくる。


 ダメだ。泣いてる場合じゃない。

これは、私の会議だ。


 私が、会長だ。


 ぐっと唇を噛んで、私は震える足で前に出た。


「……お願いします!」


 声が、少し掠れた。

それでも、私は頭を下げる。


「文化祭を……やらせてください」




 沈黙が落ちた。


 ――長い。

ほんの数秒のはずなのに、まるで永遠みたいに長い。


 やがて、椅子のきしむ音がした。


「……頭を上げてください」


 鷲尾教頭の声だ。


 顔を上げると、教頭は腕を組み、しばらく私たちを見ていたが、やがて小さく息をついた。


「皆さんの覚悟は、よくわかりました」


 その一言に、私は不安で押し潰されそうになる。

でも、教頭の口から飛び出したのは意外な言葉だった。


「これだけしっかり準備をしてくれたのです。胸を張ってください」


「教頭先生……」


 鷲尾教頭は振り返り、職員室中に響くように言った。


「先生方、私は文化祭の開催に問題はないと思うのですが、異論はありますか?」


 お願い。


 お願い。


 届いて!


「問題ないと思います! このまま生徒会に進めてもらいましょう」


 そう言ったのは神崎先生だ。

他の先生もみんな、うんうん、と頷いている。


「では、反対意見もないようですので、今年度の文化祭の開催を認めます。生徒会のみなさんは引き続き、準備をよろしくお願いします」


 鷲尾教頭が聞いたことないくらい穏やかな口調でそう言うと、私は全身の力がふっと抜けてしまった。


 よろめく私を、智也がガッと肩を掴んで支えてくれる。

「わっ」と、変な声が出た気がした。

 智也が近い!


「聖羅、よくやったな。ほら、最後だ」


「う、うん」


 私はなんとか唇を噛んで、深く頭を下げた。


「あ、ありがとうございます!」


 声が、少し裏返ってしまったが、そんなことはどうでもよかった。


 智也、みんな、


 ――ありがとう。


【作者からお願い】


私は趣味で小説を書いてる、幼い子どもが二人いる父親です。


少しでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新がんばれ、応援してる!」


と思っていただけましたら、

広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】をタップして、

【★★★★★】にしてくださるととても嬉しいです!


皆様の応援が、作品を書く最高の原動力になります!


なにとぞ、ご協力お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ