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完全無欠と噂の幼馴染が生徒会長になったら、ポンコツ過ぎて泣きついてきた  作者: なぐもん


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25話 筋肉はお喋りだ

 生徒会室を出た俺は校門に向かっていた。

辺りは薄っすらと暗くなってきていて、まるで自分の気持ちみたい沈んでいる。


 聖羅には悪いことをしてしまったな。

中途半端に手を貸した俺が悪い。


 そんなことを考えながら、特別棟から渡り廊下を渡ってトレーニング室の前を通ると、中から気合いの入った声が聞こえてくる。


 スマホで時間を確認すると、時刻は午後六時。

運動部が部活終わりに自主トレでもしているのだろう。


 聞き流すようにして足を早めようとしたら、

「ぐ、ぐおぉおおおおおお」と、心配するぐらい大きな叫び声が聞こえてきた。

続けて、「あ、やばい」と耳に入ってきたので、

俺は「はっ」となって、トレーニング室の中を確認する。


 そこにいたのは……

ベンチ台とバーベルに挟まれている我らが担任、神崎先生だった。

ジタバタ足と動かしている姿は、まるでひっくり返った

虫のようだ。


「なんだ、神崎先生でしたか。大丈夫そうですね」


「黒瀬!? 待って待って待って。助けて」


「いや、俺そんな重いの上がらないですよ」

 

 ぱっと見だが百五十キロは軽く超えている。

その重さに耐えている先生の筋力はどうなってるんだ。


 先生は苦しそうな声を上げる。


「ちょっと補助してくれるだけで、上がると思うんだ……頼むよ!」


「……はいはい。やってみますよ」


 俺はブレザーを脱ぐと、シャツの袖をまくり、先生の頭側に回り込む。

バーベルを掴み引き上げようと腰に力を入れると、先生もグッと歯を食いしばった。

 

 ゆっくりとバーベルが上がっていき、セーフティーにバーベルが乗ると、先生は大きく息を吐いた。


「黒瀬、ありがとう。助かったよ」


「一人でこんな重さは危ないですよ。俺が通らなかったらどうするんですか」


「可愛い妻が泣くことになってたな」


 いや、惚気かよ……。


「そんなことにならないように、気をつけてください」


「面目ない……今日は調子がよかったから新記録に挑戦しようと思ってさ」


「それはいいですが、補助つけないと危ないですよ」


「すまん。柔道部と筋トレしてたんだけど、妙に熱が入っちゃって。黒瀬も筋トレか?」


「帰宅部ですよ俺」


「もったいないよなぁ」


「えっ……なにがです?」


「運動神経いいのにもったいない。体育祭でも活躍してたじゃないか」


「まぁ中学は陸上部だったので……」


「どうして高校でやらないんだ?」


「自分の実力くらいわかりますよ。俺は全国では勝てませんでしたから」


「ますますもったいないな」


「はっ?」


「黒瀬はそういう所がもったいない。『俺の到達点はここだ』って勝手に線引きして、幕を下ろすにはまだ早いんじゃないか?」


「いや、そんなことは……」


「筋肉が泣いてるぞ」


「はっ?」


「筋肉が泣いてると言ったんだ」


「先生、筋肉は喋りませんから」


「俺もそう思ってたんだよ!」


 ますます意味がわからない。なにが言いたいんだこの人。


「んー、なんて言ったらいいのかな? 筋トレばっかしてると、筋肉の声が聞こえるようになるんだよ」


「はあ?」

 

 ……うちの担任はどうやら悲しい人のようだ。

イケメンで運動神経が抜群で人当たりもすごくいい。

だがその実態は筋肉と会話するという頭のおかしな先生だった。


「信じてないよな?」


「じゃあ、俺の筋肉はなんて言ってますか?」


 先生はじっくりと俺の顔からつま先まで見ると、腕を組みながら小首を傾げた。


「金城と喧嘩したんだな」


「っ!!」


 ――ごめん。やっぱこの人、マジな人だった。


「しかも自分が悪いと思ってるな。さっさと謝って仲直りした方がいいぞ」


 怖すぎる。なんでそこまで分かるんだ?

俺の筋肉ってお喋りだったのか!?


「『筋肉は口ほどに物を言う』って言うだろ?」


「それを言うなら“目”ですよ。先生……」


「細かいことはいいんだよ」


 神崎先生はケラケラ笑いながら、肩をすくめた。


「でもな黒瀬」


 ふと、声のトーンが落ちる。


「筋肉は正直だぞ」


「……は?」


「鍛えれば応えるし、サボれば落ちる。無理すりゃ壊れるし、守りすぎても育たない」


 どこかで聞いたような話だ。


 いや――違う。


 ついさっき、自分で考えていたことと、妙に重なる。


「神崎先生は、顧問でもないのによく運動部に指導してますよね。どこまで、踏み込んでいいのかわからないときってないですか?」


 先生はふと考えるような素振りを見せると、ベンチ台の片付けを始めた。


「結局さ」


 先生は軽くストレッチをしながら言う。


「どう付き合うかは、自分で決めるしかないんだよ」


「……」


「相手を想ったつもりでも、傷付けてしまうこともある。でも、なにもしないのはその人のことを見捨てたように感じてしまうんだよ」


 それだけ言って、先生はいつもの調子に戻った。


「まぁ俺は踏み込む派だけどな! 筋肉的に!」


「はいはい」


 適当に流しながらも、引っかかるものがある。

さっきまで、重たく沈んでいたはずなのに。

気づけば、少しだけ前を向けているような気になった。

 

「黒瀬!」


 先生が俺を呼ぶ。


「なんですか……」


「明日の職員会議、楽しみにしてるぞ。黒瀬や、生徒会の想いを俺たち教師に見せて欲しい。きっとうまくいくさ」


「でも、俺は生徒会じゃ……」


「そんなことはいいんだよ。金城もきっと待ってるさ」


「はい……」


 生徒会には関わらない。

それが、俺の引いていた一線だった。


 ……だが。

聖羅を支えると決めた以上、俺は、俺のやり方で、あいつの隣に立つ。

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私は趣味で小説を書いてる、幼い子どもが二人いる父親です。


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― 新着の感想 ―
やっぱりお前は剛十郎の息子だよ… って筋肉ギャグかと思ったらちゃんと主人公の心情とリンクさせてきて これは…生徒に寄り添うやり手の先生だわ でも奥さんは泣かせちゃダメだぞ
存在がチート、登場の巻。 黒瀬ガンバ。 結末までできているので安心して読んでいます。 今は、次の作品の準備ですか?
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