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完全無欠と噂の幼馴染が生徒会長になったら、ポンコツ過ぎて泣きついてきた  作者: なぐもん


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22話 紅蓮

 聖羅と一緒に入った店は、『麺屋 紅蓮』という激辛ラーメンの店だ。

名物は、辛さを選べる激辛味噌ラーメン。麺の上に山盛りになったもやしが特徴的だ。


 以前、紺野と一緒に来た店だ。

初めて入ったが駅前にこんな美味い店があるなんて知らなかった。


 テーブル席の向かいで、聖羅が眉を寄せてメニュー表を睨んでいる。


「ここの店は美味いぞ」


「智也ってほんとに辛いの好きだな」


「辛いのはいいぞ。カプサイシンで神経が刺激されて、頭が冴える」


「いつもそんなこと考えながら選んでるのか?」


「そんなつもりはないけどな。あったらつい選ぶんだよ。普通のラーメンもあるぞ」


「うむ……智也はどれにするんだ?」


「俺は激辛味噌ラーメン。辛さは紅蓮の一択だ」


 ちなみに辛さは三段階。下から焔、煉獄、紅蓮だ。


「じゃあ私もそれにしよう!」


 パタンとメニュー表を閉じて、華麗に髪をかき分ける。

……どう見ても、ラーメン食うような見た目してないよな。


「いいのか? けっこう辛いぞ?」


「ふふん。私は生徒会長だぞ。辛いのなんか余裕だ」


 聖羅はまた根拠のない自信で胸を張っている。


 甘い。甘いぞ聖羅。ここのラーメンは、そんな生半可な覚悟で食うもんじゃない。


 ――まあ、止めても聞かないだろうけど。


 しばらくすると、店員がラーメンの入った丼を運んできた。見るからに危険な色の湯気が立ち上っている。


 赤い。

とにかく赤い。

スープの表面が、もはや警告色だ。


「……ふ、ふん。余裕だ」


 聖羅はそう言ってレンゲを手に取り、わずかに逡巡したあと、スープを一口すくう。


 そして、そのまま口へ――。


「っ!」


「どうだ? 美味いだろ?」


 聖羅のレンゲを持った手が止まり、目を泳がせている。


「ふ、ふむ……なかなかだな」


 完全にアウトだなこれは――。


「無理すんなって」


「む、無理などしていない。たしかにちょっとだけ刺激が強いが、食べられる!」


 そう言って麺を箸で掴み、聖羅は勢いよく一口すする。


「んん〜〜〜〜〜っ!!」


 ほらみろ言わんこっちゃない……。

ただ、その反応が可愛らしくもあり、面白い。


「顔真っ赤だぞ」


「い、いけるなこのラーメン。う、美味いぞ」


「それは良かった」


 俺も一口スープを飲み、麺をすする。


 うん。このなんか全てのことがどうでもよくなる辛さがたまらん。

頭がスッキリするし、食った後は謎の達成感に包まれる。


 ……なんかやばいもんでも入ってるんだろうか。


 聖羅は涙目になりながら少しずつ食べていた。性格上、残すのが嫌なのだろう。


 目の前の愉快な生き物を眺めながら、俺は心の中でそっと応援した。




 


 ――時刻は午後七時半。


 『紅蓮』を出た俺と聖羅は公園のベンチで腰掛けながら、コンビニで買ったアイスを食っていた。


「ちゃんと完食したな」


 聖羅が『ギャリギャリくん』を一口かじると、氷が砕ける音を響かせながらポツリと呟く。


「……当然だ。あの程度で音を上げる私ではない」


「途中、水がぶ飲みしながら泣いてたよな?」


「な、泣いてない!」


「まぁ、完食したのはさすがだな」


「智也が誘ってくれたから……」


「うん?」


「智也が誘ってくれたから残したくなかったんだ……」


「そんなこと気にしなくていいさ」


 聖羅は溶け始めたアイスの棒を眺めながらぽつりと呟く。


「私が凹んでたから誘ってくれたんだろ」


「まぁ……な」


「ありがとう智也。ここまで支えてくれて」


「なんだよ急に」


「だって、私が智也に泣きついたとき、生徒会には私しかいなかった。こうして、生徒会のメンバーが揃って、文化祭の準備を進められたのは、全部智也のおかげだ」


 ふっ、と聖羅が息を吐く。

街灯に照らされた横顔が優しい笑みを浮かべていた。

いつも的外れなことを言って、俺を困らせるトンチンカンな幼馴染とは違った横顔だ。


「俺は誰でも助けるわけじゃないぞ。聖羅を手伝って、生徒会長にしたのは俺だからな。責任はとるさ」


「そんなこと言いながら、昔から困ってる人は放っておけないじゃないか」


「それは違うぞ」


 俺は残っていたアイスを一口で食べると、立ち上がる。

数歩前に進んで夜空を見上げた。


「俺は夢や目標に向かって努力してるやつが好きなんだ。聖羅だって、優乃だって、紺野や千景もとびきりの才能を持ってる。なんとなく、応援したくなるんだよ」


「私はなんにもないぞ? いつも智也に甘えてばかりだ」


「アホか」


「アホとはなんだ、アホとは!?」


「お前の才能は絶対に諦めないことだろ」


「……え?」


 ぽかんとした顔で、聖羅が俺を見る。


「普通のやつなら、とっくに折れるんだよ」


 夜空から視線を戻して、聖羅を見る。


「人がいない、準備が進まない、反対される――理由なんていくらでもある。それでも『やる』って言い続けたのは、お前だろ」


「それは……会長だからやらないと……」


「違うな」


「会長だからやるんじゃなくて、お前だからやり続けたんだよ」


 聖羅の目が、少しだけ潤んでいるように見えた。


「才能ってのはな、特別な何かができることだけじゃない」


 自分で言っておいてなんだが、急に照れくさくなってしまった。

だけど、これだけは聖羅に伝えたかった。


「折れないことも、立派な才能だ。お前はそのままでいろ」


「……うん」


「もう、一人じゃない。生徒会のみんながいる」


 少しだけ、肩をすくめる。


「……智也が連れてきてくれたんだ」


「きっかけはな。でも、ついてきたのは聖羅が会長だからだ。優乃も、紺野も、千景も。あいつらは、誰にでもついていくわけじゃない。俺を含めて聖羅だから、やりたいって心の底から思うんだ」


「だから自信持ってろ。お前は俺と違って、ちゃんと生徒会長やってる」


 風が吹いて、木の葉が揺れる音だけが聞こえた。

聖羅は俯いているので、どんな表情をしているのかわからない。


 でも、できたら笑っていて欲しい。

こいつの笑った顔は最高に輝いてるから――。


 少しの沈黙の後、聖羅も立ち上がった。


「智也……」


「ん?」


「文化祭、絶対やるぞ」


「おう。隣で見ててやるから――最高の文化祭にしてみろよ。会長さん」


 二人で満天の星空を眺めながら、俺と聖羅は青春していた気になってた。


 ただ……職員会議を翌日に控えた放課後、俺と聖羅は真正面からぶつかってしまった。

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私は趣味で小説を書いてる、幼い子どもが二人いる父親です。


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― 新着の感想 ―
長く成りそうな予感が。 2時間で追いついた。
おや、いい感じと思ったらもう一波乱か
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