偉そうな奴
「おはよう柳くん。」
朝、玄関を出ると静奈の姿があった。
「おはよう。」
挨拶を済ませ、学校へ。
やや狭い通学路は歩道と車道が区切られておらず、白線ひとつないアスファルトが佇んでいる。
幸い車通りは無いので余裕を持って並んで歩けた。
いつものような空模様。いつものようにひしめく住宅街の声。
「見ろ静奈。今日も高そうな車通ったぞ。」
指差す方向には黒く長い車が排気ガスを吐き出しながら走っている。
車には詳しくないので高級車だろうという推測しか出来ない。
「………本当だ。……あぁいう車って、運転…大変そうだよね……。」
「確かにな!曲がり角とか、俺だったらぜってぇぶつけるぞ!」
「……………うん。柳くんなら……一日で廃車にしそう…。」
「流石に一日ではぶっ壊さねぇよ!?」
一体、静奈の中の俺はどれだけ乱雑なのか。ここは異議を申し立てたいところである。
が、その前に。通過した黒い車が俺の目を引く。
いつものように通り過ぎることのない車は、端に寄って止まった。
トラブルでもあったのか、車内から人が出てくる。
運転席から一人と後部座席から一人。
「申し訳ございません、お坊ちゃま。どうやらエンジンに不調が…。」
「はぁ。点検ぐらいしといておくれよ。」
坊ちゃま、と呼ばれた少年は前髪をかき上げる。見たところ、同い年のようだ。
「おい。そこの水商売してそうな奴。」
「…………俺じゃねぇよな。」
「キサマに決まっているだろう。万年どん底、底辺ホストという肩書きがぴったりだろう。」
「失礼すぎんだろ!なぁ、静奈!」
「…………良い例えだと、思う……。」
「お前もかよ…!」
今日の静奈は一段と辛辣な気がする。
何故、俺の印象がホスト崩れなのか。髪型か。服の着こなしか。いずれにせよ失礼な奴らだ。
心外という言葉はこの時のために作られたのだと思う。
「……ふむ。キサマらにはワガハイと話す権利をやろう。車が来るまで何か話せ。」
「偉そうだなお前…。」
「しかも……センス、ない。……車が来る前、だって……。」
「全く。キサマらのような凡人にはこのセンスが分からんか。」
「ただのオヤジギャグじゃねぇか!」
おかしな奴に絡まれた朝。
俺達は無事に登校できるだろうか。




