2人乗りする奴
放課後。
俺と不和は必死に頭を捻っていた。
というのも、浅の2人乗りをしたい、という願いを叶えたいからだ。
悲しいかな。自転車の2人乗りは違反となる。そもそも危険であるし、罰金もまっぴらごめんなので何かひと工夫必要だ。
「うーん。浅ちゃんが今から100センチぐらい縮んでくれたらチャイルドシートに乗せられるんだけどなぁ。……あっ。柳くんが縮んでもいいよ。」
「よくねぇよ!それに2人乗りって浅が後ろに乗るんだろ。……別の案出さなきゃな。」
不和は人差し指を顔の輪郭に当て考える。
俺もなんとか思案するが、一向に名案は浮かばない。
「ご、ごめんなさい…やっぱり2人乗りは、」
「いや!絶対に2人乗りするぞ!だから任せとけ!」
「そうそう。今にも柳くんが良いこと思いついてくれるよぉ。」
「俺かよ!?」
突然突き放され、焦ってしまう。
が、その瞬間。脳裏には浅の理想に近しい画が見えてきた。
「思いついたぜ!これなら2人乗りできるはずだ…!よし!さっさと試しに行くぞ!」
「は、はい。」
まずは急いで家へ戻る。そこで自転車を調達して向かう先は付近の土手だ。自転車2人乗りスポットの金字塔、といえるだろう。
今日は天気も味方をしており、程よい夕日が前髪から僅かに見える額を照らす。
「んじゃ、まず浅。普通に乗ってくれ。で、不和は乗らないで近くでハンドル握ってくれ。」
「りょうかぁい。」
そうして俺自身は車体の後ろへ。ここでの役割は荷台を掴んで押すだけだ。
「よし!んじゃ不和!あとはハンドル握って全力で走れ!浅は不和の腕でも肩でも掴まってろよ!危ねぇからな!」
「……なるほどねぇ。わたしと留唯くんが自転車を動かすってわけかぁ。」
意図を理解した不和は呟く。
「よぉし。浅ちゃん。準備はいいかなぁ?」
「は、はい…!いつでも…!」
「それじゃあしゅっぱーつ!」
同時に不和が走り出す。
予想よりもぐんぐんと前へ進む。無論、俺も負けじと車体を前に押し出した。
「か、風が…すごいです!スピードも……あって…。」
「そうか!良かったぜ!」
「これこそ手動の全自動自転車だねぇ。」
「手動って…全自動じゃなくないですか…!?」
「細かいことはいいのいいの。」
「そうだ!今はスピードに身を任せろ!」
「は、はぁい!」
サドルに乗る浅の髪が、温かい風に撫でられ揺れる。
後ろからでは見えないが、どうか彼女の顔があの夕日のように間抜けなほど輝いていてほしいと、そう思った。




