何も出来ない奴
「………………はぁ。」
細川 浅は帰路につく途中、ひとりでにため息をつく。
というのも、今日という日は他人に迷惑をかけてばかりの一日だったからだ。
クラスメイトの柳 留唯、そして担任と作った昼食。浅は邪魔だてをするだけであった。
2人は気にするなと言ったが、それでもやはり情けなさと申し訳なさが内に渦巻く。
何故、自分は何も出来ないのだろう。
夕暮れを背に自問自答する。
「…………あ。」
そんな中。
行く先で買い物から物を散乱させた人を発見する。その人は慌てた様子で散らばるものを拾っていた。
浅もまたそれを手伝おうとする。
が。
「大丈夫ですか!?」
声がした。
そして次の瞬間、通りがかった高校生らが屈み、お菓子やら文房具やらを集めていく。
「……………。」
その様子に、浅は肩を落とす。
別段、悪いことをしたわけではない。ただ、何もしなかっただけ。何も出来なかっただけだ。
「…………仕方ない……ですよね……。」
自然と唇を噛む。
仕方がないのだ。
何故なら彼女は影が薄くて、何も出来ない故に、その場に居ようが居まいと影響なんてない。
いや。むしろ自身の存在が足を引っ張ることだってある。
「……………………。」
立ち止まり、道の端にあるミラーを見る。
そこにはひとりの少女。
しかし、その存在に意味はない。
他者を邪魔だてしているのなら、存在などしないほうが良い。
「やっぱり、このままの方がいいですよね。」
影の薄い自分を変えようとした。だが、変えてどうなる。
存在を許してしまえば、害ばかりを与えるなろうに。ならば、変わらずこのまま透明でいよう。
少女 浅はひとりでにそう思った。




