パンケーキを食べる奴
浅のイメチェンも済んだ所で、俺はこの先どうするか考えあぐねていた。
髪や爪を整えたのは良いものの、これからどうすべきかピンと来ないのだ。
「浅。お前は何か変えてぇところとか、やりてぇことはあるか?」
そう聞くと、浅は控えめに口を開く。
「そ、その………パンケーキ………食べたい、です……。お、大通りに沿いに……パンケーキ屋さんが出来た、みたいで……。」
隣にいた美奈さんが食いつくように瞳を輝かせる。
「まぁ!いいわねぇ。行きましょう!行きましょう!」
「ちょ、ちょっと待ってください。それって、俺も行って良いんですか?」
腕を引っ張られたので思わず尋ねた。
大通り沿いにできたお洒落なカフェ。流石にいち男子高生である俺には相応しくないというか。
正直なところ、肩身が狭い思いをしそうだ。
「あら。恥ずかしいのかしら。留唯くん。」
「そりゃあそうですよ…。俺の姿見てください。こんなのがシャレてる店に入ったら変じゃないですか。俺、男ですし…。」
「良いのよ!細かいことは!ほら!行くわよ!」
「ちょ、ちょっと!?」
美奈さんに引っ張られる形で、パンケーキ屋さんへ赴くことになった。
話題になっている為か、学生らが長蛇の列を成している。
待つこと数十分。ようやく店内に入ることが出来たので、ボックス席へ座りメニューを開く。
「げっ。パンケーキに1800円…!?」
流石に失礼だと思ったので小声で呟く。が、2人には聞こえてしまったらしい。
「………私も、びっくりしました……。これが……オシャレパンケーキ価格、なんですね……。」
「もう!2人ともよぉく見なさい。ドリンクセットで1800円よ?それにおかわり自由!破格じゃない。」
言葉通りメニューを見ると、確かにドリンク付きであった。
「ほんとだ。なら安いな…。」
「で、ですね。言うなれば……チョベリグな、メニューです……!」
「!えぇ!そうね!チョベリグよ!チョベリグ!」
いよいよ浅が美奈さんのセンスに侵されつつある。そのことに恐怖しつつ、口を開く。
「……浅。ムリに古臭い言葉使わなくても良いんだぞ?」
「失礼ね!無理にじゃないわよ!ね?浅ちゃん?」
「は、はい!………私、ナウいヤング……ですから……!」
「今時の若者はナウいヤングなんつー言葉使わねぇよ。」
化石のような言葉使い。しかし、当の本人は満足しているようなのでこれ以上指摘しないでおくことにした。
「お待たせ致しました〜。」
店員の軽快な声と共にパンケーキとドリンクが運ばれる。
見た目は迫力があり、小指の長さほどの分厚さであった。なおかつ、その上にはたっぷりのクリームが。
「ん。うめぇ。…けど胃が…。」
「私も胃もたれしそうだわ。」
「そ、そうなんですか……?でしたら……私が食べます?」
「助かるぜ。」
浅はあれよという間にパンケーキを口に押し込め、次なる標的を定めるのだった。




