イメチェンする奴
尋常ではないほど影の薄い浅。そんな彼女を変えるべく、イメチェンをすすみでた。
のは良いものの、俺個人は女子のイメチェンに関して毛ほども知識がない。
なので、ここは経験豊富な人間に任せることにした。
「んなわけで、この人は竜上美奈さん。同じクラスなんだ。」
「浅ちゃん…よね。話は聞いたわよ。」
コンビニから移動した先、公園にて。美奈さんは自己紹介をする。
「え、えっと…その……今日は、よろしくお願いします……。」
「ふふっ。そう固くなる必要はないわ。」
そう言い優しく微笑む彼女。
美奈さんは同学年だが、同い年ではない。
しかし、だからこそ少し長く生きた故の余裕が浅の緊張を解すのではないかと思った。
「それで、存在感が出るようにしたいのようにイメチェンするのよね。ふふっ。早速やっちゃいましょう。」
が、ガサゴソと何処か楽しげに手にしていた紙袋を漁る。
「美奈さん。ソレ、何ですか。」
「よく聞いてくれたわね。これはエクステって言うの。」
「えくすて?」
「つけ髪のことよ。イメチェンには髪型をかえるのが手っ取り早いじゃない?でも急に髪を切るなんてハードル高いもの。だから、まずはコレ。」
つけ髪を手にして説明する。
ベンチに腰掛けた浅の後頭部へ回り、地毛とつけ髪を調和させるように編み込む。
ややウェーブがかったエクステとやらは、元々短い浅の髪を派手な印象に変貌させた。
「どうかしら。」
スマートフォンで後ろ姿を撮影し、見せる。
「!す、すごい、です…。……これなら、かなり目立ちます…!」
「ふふっ。でしょう。あー、それと爪も忘れちゃ駄目ね!」
「つ、つめ…?」
更に紙袋から取り出したのは、それはもう長いつけ爪だ。太陽光を反射し、ピカピカ光る様は一種の凶器のようでもある。
「こんなに長いのをつけるんですか?女子ってのは大変ですね。」
「……ですね……。」
「ですねって、浅ちゃんもなのよ!ほら、手だして!」
「は、はい…。」
つけ爪もエクステと同様に、テキパキと装着される。その手際の良さは熟練度を伺わせた。
そうして髪、爪ともに存在感を醸し出すようになると美奈さんは突然声を出す。
「んー!カワイイわ!とても!ステキ!ステキよ!」
スマートフォンを構えたかと思えば、縦横斜め下、あらゆるアングルから撮影を始めた。
カシャカシャとシャッター音が響く。
「み、美奈さん!浅が引いてます!落ち着いて下さい!」
「そういうわけにもいかないわ!んー!とってもカワイイ!その困り顔も!チョベリグよ!チョベリグ!」
「なんですか、チョベリグって!というか、薄々思ってましたけどセンスが古いですよ!!」
「ふ、古くないわよ!ね!浅ちゃん!」
「は、はい……。その……チョベリグ……だと思い、ます…!」
「お前無理しなくて良いんだからな?」
言わされた感満載の言葉。果たして本心なのかは分からない。
しかし、爪を見つめる彼女は不思議と嬉しそうに見えた。




