答えを出す奴
クラスでのボーリングはあっという間に終わった。
俺はあれからずっと不和の言葉が頭に残り、集中なんて出来なかった。
ボーリング場からの帰り道。
「それじゃあ私達はこっちだから。留唯くん、せいちゃん。気をつけて帰るのよ。」
「はい。さようなら。」
美奈さんへ挨拶する。その横では何故か不和にのぞみが掴まっていた。
「…………たちばなちゃん?わたしに、何か用でも……。」
「おう!あたしはまだあんたと格ゲーしてないからな!これから行くぞ!ついて来い!」
「は、ちょっと、まっ、」
珍しく不和は戸惑いを見せて、のぞみに連れられていく。残された俺と静奈は大人しく帰ることにした。
せっかくのチャンス。何か話そうと言葉を手繰り寄せるが、うまくまとまらない。
胸には不和の言葉。
俺が静奈に嫉妬しているという言葉。
もし。もし本当に、そうであったら、俺はどうしようもない人間だ。
勝手に彼女に嫉妬して、勝手に彼女を避けたがっているということなのだから。
静奈は摩訶高に入って初めての友人。故に、そんな醜く情けない姿で一緒にいたくはない。
混濁する意識の中、不意に静奈が口を開く。
「…………今日、楽しかった。………皆と行けて良かった………。」
「あぁ。俺もだ。」
「…………でも、全部ストライクじゃなかったのは……悔しい。」
「全部は難しいだろ。プロでも目指すのか?まぁお前ならなれそうだけど。」
車道を1台の車が通る。夕暮れ。通りがかった車は既にライトをつけて走っていた。
「…………ボーリングって……プロ選手とか、いるのかな……。」
「うーん。どうだろうなぁ。でもいたらなんて名前だろ。プロ…ボーラー?とか?」
「ふふっ。………それだと……人じゃなくて、ボールそのものみたい……。」
「確かに。そうだな。ははっ。」
下らない話は不思議と弾む。
胸のつっかえはない。ただ、静奈とのなんでもない会話が楽しかった。
それに気付いた俺は、自然と彼女の顔を見る。
「………どうしたの……?」
「いや。なんでもねぇ。…ほんと、なんでもねぇんだ。」
「?そっか。」
言葉通り、何でもないことだ。
彼女と話して、彼女の顔を見て、それがはっきり分かった。
今なら胸を張って言える。俺は静奈を疎ましく思っているわけではない。ただ寂しかったのだ。
俺の知らない話を、友人としている彼女がどこか遠くに感じたのだ。
それもまた情けないが、疎んでいたわけではないという事実に安心する。
俺は静奈の友人だ。
静奈は俺の高校はじめての友人だ。そんな彼女を決して嫌ってはいなかった。
「明日から学校だな。」
「………うん。………先生に会えるから、楽しみ……。」
「前向きだな静奈は。まぁ、俺も学校は好きだけどよ。そうだ。今度は先生もボーリングに誘おうぜ。」
「…………いいね。……というか、先生……誘われてなかったの知ったら………拗ねちゃうかも……。」
「かもなぁ。」
自宅の前につく。
俺の家のすぐ隣は静奈の家だ。だから、俺はそこで彼女と別れた。
また明日、と手を振る姿が映る。今日、外出をして良かったと心の底から思った。




