ボーリングする奴
休日。俺はクラスの皆とボーリングに来ていた。発案者はなんとあの不和だ。
「なんか企んでんのか。」
隣を行く不和に尋ねる。
「ん?まさかぁ。ただわたしはみんなと仲良くなりたいだけだよぉ。」
わざとらしく手を振り答えた彼女の姿は、本心からくるものには見えない。一体何を狙っているのだろう。警戒しつつボーリング場へ辿り着く。
「静奈ちゃんはボーリング得意かしら?」
到着するなり、ボールを指にはめながら美奈さんが言う。俺も気になっていたところだ。
「…………ううん。……でも、皆とするから楽しみにしてた。」
そんな言葉に、のぞみが照れくさそうに笑う。
「ま、まぁ、あたしも楽しみだったぜ!」
「あらら。のんちゃんってばせいちゃんには素直なのねぇ。」
「………………だね。」
3人が仲睦まじく話す。その輪のなかに入るのは少し憚られた。
俺の様子を見てか、不和が脇腹をつついてくる。
顔には嫌なニヤケ顔が浮かんでいた。だが、何か言う前にボーリングのピンが倒れる音がする。美奈さんが早速ボールを投げたのだ。ピンは3本残される。中々上手だ。
今回はグループ分けすることなく投げるので、再び美奈さんの番。
ごろごろとボールは右2本のピン目指して転がっていく。
カコンッと爽快感のある音。ピンは見事に倒された。
ストライクやスペアとはいかないが充分すごい。
「……次、柳くんだね。……がんばって。」
「お、おう。」
突然声をかけられ驚いたものの、腕をまくりボールを手にする。
腕をひき、思い切り前へ。
勢いののったボールは、そのまま全てのピンがなぎ倒す。
「ストライク!すごいじゃないの留唯くん。」
「俺もびっくりしてます。まぁマグレだと思いますけど。」
「………運も、実力って言うよ。………私も頑張らなきゃ……。」
「ははっ。やる気いっぱいだな。」
不思議なことに、静奈とは普通に話せていた。以前感じた違和感はない。そのことに安堵し、静奈の応援をする。
彼女は綺麗なフォームでボールを投げる。後ろに下げた右足から手前の左足まで安定感のある姿勢だ。
そこから繰り出されるボールはやや左カーブを描いたかと思うと、緩やかに中央へと行き全てのピンを倒す。
「わぁお!すごいわねぇ。せいちゃん!」
「まっ。あたしは分かってたけどな。この間ゲーセン行ったときもバスケのゲームうまかったし。」
「………………バスケとボーリングは、だいぶ違うと思う………。」
「私もそう思うわ。」
「い、一緒だろ!一緒!」
「そうかしら…。」
「……うーん……。」
ボーリングたバスケの違いについて3人は盛り上がっていた。
正直、話の内容はどうでもよかった。ただ3人でゲームセンターへ行った話。そこでの話が俺に引っ掛かりを覚えさせる。
考えてみれば当たり前のことではある。俺は遊びに参加していないのだから、混ざることはできない。
それでも。
頭で理解していても、胸がつっかえた。
「あー。俺、トイレ行ってくる!」
「確か突き当たりにあったわ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
美奈さんへ一礼してトイレへ向かう。
曲がり角を曲がった先で、不意に裾を引かれた。
何かと思い振り向くと、そこには不和の姿があった。
「…………なんだ。連れションか?女子ってのはやらねぇと思うけど。」
「やだなぁ。女子こそトイレにでたまるものだよ。………まぁ、今はそういうワケじゃないけど。」
ヘラヘラとする彼女を前に、表情を硬くする。やはり不和は何かを企んでいた。その目論見が、今分かった気がする。
「………お前、俺の様子を見て面白がってるだろ。」
そう言うと彼女の口角はさらに上がる。
「わぁ。バレちゃった?ふふっ。さっきのきみの顔、可哀想で情けなくて面白かったよ。……ねぇ。君が静奈ちゃんを避けたいっていう理由教えてあげようか。」
不和はイヤな笑みのまま顔を近づける。
「きみはあの子が自分より目立つのを許せないんだよ。だから、あの子のまわりに人が集るのが嫌なんでしょ。」
ゆっくりとそう告げる。
つまりは、なんだ。俺が静奈に嫉妬しているということか。
「………そういう、わけじゃ、」
「本当にそう言い切れる?もし、そうじゃないなら、きみはどうしてあの子を避けたいの?」
何も言い返す事が出来ない。
先まで静奈と話すことが出来ていたはずなのに、気付けば彼女のいる場から逃げ出していた。
沈黙のまま突っ立つ俺が、不和の瞳に映る。
それはひどく情けなく見えた。




