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光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


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33/58

第33話:最後の選択

本作は毎週水曜・土曜の21時に、2話ずつ更新予定です。

夜の街は、やけに明るかった。


ネオンも、街灯も、

全部が「普通」を装っている。


相馬恒一は、歩いていた。

行き先は決めていない。


ただ――

立ち止まると、何かが壊れそうだった。


(処理完了、か)


スマホに表示された短い通知。

誰の名前もない。


でも、分かる。


「……また一人、いなくなった」


声に出すと、現実になる気がして、

今まで言わなかった言葉。


*


相馬は、人気のない高架下に入った。


天井のコンクリートには、

古い染みと、無数の補修跡。


ここなら、多少壊れても

「事故」で済む。


右手を、ゆっくりと握る。


――反応が、早い。


考える前に、

力が集まろうとする。


「……まだ出すな」


自分に言い聞かせる。


止めたい。

止めなきゃいけない。


でも。


(止められない側、か)


昨日まで、

“選べているつもり”だった。


使うか、使わないか。

守るか、逃げるか。


でも今は違う。


使わなくても、

出る。


選ばなくても、

起きる。


相馬は、苦笑した。


「最悪だな……」


*


ふと、

昼間の顔が浮かぶ。


結城透。


まだ何も知らない目。

でも、確かに同じ“側”の匂い。


(あいつは……)


一瞬、迷いが生まれる。


――何も言わなければ。

――何もしなければ。


あいつは、

まだ“戻れる”。


相馬は、右手を見つめる。


包帯の下で、

力が、じわじわと滲んでいる。


「……俺が消えれば」


口に出して、止めた。


それは、逃げだ。


消えることで、

誰かを守ったつもりになる。


でも。


「それ、あいつに一番嫌われるやつだな」


透の顔を思い出す。


あの、真っ直ぐな目。


(……選ぶなら)


相馬は、息を吸う。


深く。

ゆっくり。


「俺は、使う」


それは、

生き残るための選択じゃない。


守るためでもない。


――“自分で決める”ための選択。


*


相馬は、スマホを取り出し、

一件の連絡先を開いた。


表示される名前は、

登録されていない。


ただの番号。


【通話開始】


数秒後。


『……どうしました』


低い声。


相馬は、口角を上げた。


「確認っす」


『何を』


「俺、まだ“処理対象”じゃないですよね?」


一瞬の沈黙。


『……保留です』


「じゃあ」


相馬は、空を見上げる。


「今から起きること、

 全部“事故”ってことで」


『――待て』


通話は、そこで切れた。


相馬は、スマホをポケットに戻す。


右手を、前に出す。


今度は、

止める気はなかった。


「見てろよ」


誰に向けた言葉でもない。


「俺は、

 俺の選択で立ってる」


次の瞬間。


高架下の空気が、

大きく歪んだ。


*


その頃。


透は、家の天井を見つめていた。


胸の奥が、ざわつく。


理由は、分からない。


ただ――

嫌な予感だけが、消えなかった。

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