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光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


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33/38

第33話:最後の選択

本作は毎週水曜・土曜の21時に、2話ずつ更新予定です。

夜の街は、やけに明るかった。


ネオンも、街灯も、

全部が「普通」を装っている。


相馬恒一は、歩いていた。

行き先は決めていない。


ただ――

立ち止まると、何かが壊れそうだった。


(処理完了、か)


スマホに表示された短い通知。

誰の名前もない。


でも、分かる。


「……また一人、いなくなった」


声に出すと、現実になる気がして、

今まで言わなかった言葉。



相馬は、人気のない高架下に入った。


天井のコンクリートには、

古い染みと、無数の補修跡。


ここなら、多少壊れても

「事故」で済む。


右手を、ゆっくりと握る。


――反応が、早い。


考える前に、

力が集まろうとする。


「……まだ出すな」


自分に言い聞かせる。


止めたい。

止めなきゃいけない。


でも。


(止められない側、か)


昨日まで、

“選べているつもり”だった。


使うか、使わないか。

守るか、逃げるか。


でも今は違う。


使わなくても、

出る。


選ばなくても、

起きる。


相馬は、苦笑した。


「最悪だな……」



ふと、

昼間の顔が浮かぶ。


結城透。


まだ何も知らない目。

でも、確かに同じ“側”の匂い。


(あいつは……)


一瞬、迷いが生まれる。


――何も言わなければ。

――何もしなければ。


あいつは、

まだ“戻れる”。


相馬は、右手を見つめる。


包帯の下で、

力が、じわじわと滲んでいる。


「……俺が消えれば」


口に出して、止めた。


それは、逃げだ。


消えることで、

誰かを守ったつもりになる。


でも。


「それ、あいつに一番嫌われるやつだな」


透の顔を思い出す。


あの、真っ直ぐな目。


(……選ぶなら)


相馬は、息を吸う。


深く。

ゆっくり。


「俺は、使う」


それは、

生き残るための選択じゃない。


守るためでもない。


――“自分で決める”ための選択。



相馬は、スマホを取り出し、

一件の連絡先を開いた。


表示される名前は、

登録されていない。


ただの番号。


【通話開始】


数秒後。


『……どうしました』


低い声。


相馬は、口角を上げた。


「確認っす」


『何を』


「俺、まだ“処理対象”じゃないですよね?」


一瞬の沈黙。


『……保留です』


「じゃあ」


相馬は、空を見上げる。


「今から起きること、

 全部“事故”ってことで」


『――待て』


通話は、そこで切れた。


相馬は、スマホをポケットに戻す。


右手を、前に出す。


今度は、

止める気はなかった。


「見てろよ」


誰に向けた言葉でもない。


「俺は、

 俺の選択で立ってる」


次の瞬間。


高架下の空気が、

大きく歪んだ。



その頃。


透は、家の天井を見つめていた。


胸の奥が、ざわつく。


理由は、分からない。


ただ――

嫌な予感だけが、消えなかった。

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