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第百二話 デルフィナ対【神の呪毒】

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

好きな遊園地アトラクションはキャラクター(猫)との触れ合いコーナー。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽい女面鷲ハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

好きな遊園地アトラクションはジェットコースターと映えスポットとお土産コーナー。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

好きな遊園地アトラクションはホラー系アトラクション。


◇デルフィナ・フォン・アンスバッハ

西方大陸西部の大国『リルネフ王国』の女王。

白いオオカミの耳と尻尾が生えた白髪金瞳の少女。

愛狼『シャーナ』を毛皮にされた怨みで親族や狂戦士たちを毎日殺戮していた。

アリエラたちが魔王軍だと看破した上で呼び寄せていた。

好きな遊園地アトラクションはキャラクター(犬や狼)との触れ合いコーナー。


◇イースネス

西方大陸を支配する『光の女神』。

日焼けした肌に白髪白瞳の戦乙女の聖女に憑依しており、白狼が引く戦車に乗って毎日太陽として空を東西に駆けている。

あらゆる物事への関心が薄いような態度を取る。


◇ 【神の呪毒(サマエル)

イースネスの側近『至高天使』の一角。

蛇率の高い蛇人の男で全身に生えた赤黒い鱗が特徴の軽装戦士。

デルフィナに決闘を申し込まれた。



「よーし! 女神からお墨付き貰ったね! お互いに怨みは無いけど……まあ、がんばろうね!」

 デルフィナはこれから殺し合いをするとは思えぬ軽い口調で準備運動を始める。


「いやつい今し方、女神に無礼を働いた怨みがあるぞ……楽に死ねるとは思わん事だな」

 対する【神の呪毒(サマエル)】は牙から黒い粘液を滴らせながら投擲短剣に手を掛けた。


「キャハハハハッ! 嬲られる〜! コワ〜い! アタシも心臓を潰さないように手加減してあげるね♪」

「シュルルッ……いつまで巫山戯ていられるか……見ものだな」

 

「さて……では私は周囲に被害が出ないように結界でも張らせて頂きますね。……広さはこのぐらいで良いですか?」

 レイメイは向かい合う二人を中心に円を描くように呪符を配置し、直径30m程の結界を張る準備を始める。


「ピチカ。ワタクシの石棺(サルコファガス)を出して頂戴。立ち見も何だし椅子代わりにして観戦しましょ」

「オッケー。あんま楽しいモンでもないと思うケドね……」


 ピチカはアリエラの提案通りに神業(チートスキル)楽々御粧し(ドレスアッパー)】を発動させ黄金石棺を亜空間より召喚すると、共に座って決闘の準備が整うのを待つ構えに入った。


 すると、『至高天使』たちを引き連れた女神イースネスが何か思い出したように近付き、ピチカに目線を向ける。


【お前……私の神業(チートスキル)を蹴った女面鷲(ハーピィ)の聖女か】


「ギャッ!? ギャヒヒ……いやァその節はどうも……」

「ああ……確かに初対面ではないのよね。どんなスキルの譲渡を提案されたの?」


「なんかダンスしてる間、無敵になれるみたいな──」


【──無敵ではない。お前に提案したのは舞っている間飛び道具を無効化する神業(チートスキル)【矢避けの舞】だ】


 イースネスはスキルの説明をしながら当然のように石棺に腰掛け始め、その両脇には【神の言葉(ガブリエル)】と口元を白布で隠した銀髪のウサギ獣人の少女【神の命令(サリエル)】が座り始めた。


 魚率が高いナマズ魚人の【神の霊薬(ラファエル)】と魔人化巨人牛(ミノタウロス)の【神の煌輝(ウリエル)】は背後に立って待機している。


「“狭いぞ。もっと端に寄れ痴れ者が”……と女神が仰せだ! もっと端に寄れッ!」

【言ってないが……?】

「隣に失礼。(ニン)ッ!」


 すぐ隣に座る【神の命令(サリエル)】が手印を次々と素早く組み替えながら徐々に距離を詰めて来るため、ピチカはどんどん端へ寄って行き、アリエラもそれに押されて石棺の角に座る。


「ァ……シャッス……(いっしょに見るの!? ていうか忍者キャラなの!?)」

 ピチカは『至高天使』の中でも相当なイロモノ枠であろう【神の命令(サリエル)】に気圧され、か細く気の抜けたような返事をしてしまった。


「貴様……確か名は『隙間風のガブリエラ』だったな? 私と同じ由来の名を持ちながら聖女という大役を軽々しく投げ出すとは嘆かわしい……」

「ァ….サーセン……(何気にこういう反応初めてだな〜……)」


【安易に他の女神の信仰に口出しをするな【神の言葉(ガブリエル)】……そろそろ始まるぞ】

「はッ! 申し訳御座いませんッ!!」


 イースネスが【神の言葉(ガブリエル)】を諌めると同時にレイメイが結界の準備を終えた。

 すると、呪符に氣を込めて結界を張ろうとするレイメイにデルフィナが近付き頭に被ったシャーナの毛皮を手渡す。


「レイメイちゃん! ちょっとシャーナ預かってて! アイツの心臓奪ってあげるから〜……魔王陛下に(ボソッ……)よろしく伝えてね」

「復活の確約はできませんが……最善を尽くします(ヴンッ……)

 ──では、私が座ったら開始という事で……アリエラさん詰めてください」


 レイメイはシャーナの毛皮を畳んで抱え込み、僅かに白く濁った結界障壁を張るとアリエラを肩で押しながら石棺に座った。



 ──瞬間、【神の呪毒(サマエル)】は視線も向けずデルフィナにドス黒い魔力を付与した短剣を指先の力だけで投擲し、地面を滑って這うような低い体勢で牙と両手の爪に呪毒を滴らせて襲いかかる。


「シャアッッッ!!!」

「うひゃッ気持ち悪ゥッ!!(キンッ)


 デルフィナは咄嗟に短剣を回避し、続く牙も回避、関節を外して伸ばした【神の呪毒(サマエル)】の両手の爪を剣で弾きながら跳び退いて距離を取った。


「ほォ……だがもう退がれんぞ!? シャアッッ!」

 【神の呪毒(サマエル)】は結界障壁に背中をぶつけて足を止めたデルフィナに追撃を加えるべく鎌首を擡げて毒牙を剥き出しにして襲いかかる。


「キャハッ──〈逆撫斬り(バルムンク)〉ッ!」 

「ムゥッ!?(タンッ) ……女王デルフィナよ、その術は….!」


 対するデルフィナが剣を振るうと同時に高密度の白金色の魔力を纏わせ、恐ろしく斬れ味の跳ね上がった剣との衝突を避けるため、【神の呪毒(サマエル)】は両手と尻尾で地面を叩いて右に転がって回避した。


 “剣に魔力を込めて強化して斬り付ける”……というのは極めてありふれた行為ではあるが、【神の呪毒(サマエル)】はデルフィナの口から発されたこの世界に於いて戦闘に身を置くならば一度は聞いた事のある術の名前に反応して攻撃の手を止める。


 アリエラたちも反応しそうになったが、女神や『至高天使』たちに魔王軍だとバレると何が起こるか分からないため沈黙を貫いた。


「凄いでしょ? 魔王軍の上級戦闘員とかが使ってるヤツだよ! アタシのは我流だからちょっと違うかもだけどね!」

 デルフィナは魔力を付与した剣を見せびらかせ、さり気無くアリエラたちに視線を遣る。


「そうか。恐ろしい程の斬れ味なのだろうな……しかし──(ズッ……)──()()()()()()()!?」

 隙を見た【神の呪毒(サマエル)】が姿勢を更に低くすると、身体を漆黒の影そのものに変化させて地面の上を泳ぐようにデルフィナに迫った。


 地を這う影をデルフィナは剣で斬り付けるが、不定形となった【神の呪毒(サマエル)】は刃をスルリと躱し、防御が甘くなった隙を突く。


「この〜ッ! うをッ(ビッ)……あ、ヤバ──(ドロ……)ゔェっ……」

 影から伸びた【神の呪毒(サマエル)】の爪が頬を掠ると、目・鼻・口からは黒ずんだ血が溢れ出し、デルフィナはよろめいて動きを止める。


「不遜を悔いて死ぬが良──「〈戦ぎ穿ち(グングニル)ッ!〉」──ぐ(ドズッ)ぁアァッ!? ちィッ……!(ズッ……)

 【神の呪毒(サマエル)】がデルフィナの心臓に爪を突き立てようと影から立体化させたもう片腕を伸ばした瞬間、魔力を纏った黄銅の短槍がその腕に突き刺さった。

 堪らず【神の呪毒(サマエル)】は再び影になり地表を回遊して距離を取る。


「よーし当たったー!」

 デルフィナが魔力から創り出したもう一人のデルフィナの投げた槍が【神の呪毒(サマエル)】の攻撃を阻止したのだ。


「よ゛ぐや゛っだ! も゛ゔ一人のア゛ダジ!」

「うわぁ……キツそうな毒だね〜」


 流血が止まらないデルフィナ(剣)とデルフィナ(槍)が呑気な会話をしている間にも【神の呪毒(サマエル)】は影となって回遊を続け、デルフィナの使う術の考察し攻撃の好機を窺う。


(抜かったわ……! 噂には聞いていたが、ああも精巧な分身を一瞬で創り出すとは……! だが本体には毒を打ち込んだ! 最早維持するのも辛い──「〈万雷砕き(ミョルニル)〉ッ!!」──がァあ(バギィッ!)アッ!?」


 呪毒が効いている事を確信した【神の呪毒(サマエル)】は観戦者たちの盛り上がりなどは一切気にせず、本体であろうデルフィナ(剣)が衰弱し切って息絶えるまで回避に専念する腹積もりであった。


 ──しかし、またもや瞬時に創造された新たな分身デルフィナ(鎚)が魔王軍の高等打撃魔術〈万雷砕き(ミョルニル)〉を発動して【神の呪毒(サマエル)】が自らを投影していた地面を粉砕。

 その衝撃と、衝撃によって発生した白い魔力の雷が結界内を迸り、【神の呪毒(サマエル)】は影化を強制解除されて上空に撥ね上げられ、結界障壁には亀裂が走った。


「あッ……ちょっと結界の補強してきますね」

 それを見たレイメイはすかさず呪符を取り出して駆け寄る。


「キャハハハッ! 線や点じゃなくて面で叩けば効くのかー!」

「かッ……ハ……(バサッ)や、やるではないか女王デルフィナよッ!

 白い小娘ッ! 結界を(しか)と補強しておけよッ! 漏れ出せば大惨事になるからなァッ!!

 ──神業(チートスキル)解放! 【神の呪毒(サマエル)】!」


 宣言と共に【神の呪毒(サマエル)】の魔力は頭上に蠢く黒い粘液のような光輪(ヘイロー)を形成し、背には漆黒の六翼が展開され、結界内にはそれらが揮発する事によって発生した瘴気に満たされた。


「お゛っ……?」「本領発揮かな?」「来い来い!」

 瘴気に曝されたデルフィナ×3は身体を単なる毒に侵されるのとは何かが異なる不快感を覚えながらも、どこか余裕──と言うより危機感に欠ける反応を見せて武器を構える。


「その余裕もすぐに剥がれるだろう……この呪毒は肉体ではなく、精神を蝕み苛むのだ! 貴様のここ一年の所業は聞いている……自国の王侯貴族を殺戮したとな! 

 その罪業・罪悪感がこの呪毒を強めるッ!! 分身とて例外ではないぞッ!」


 逃げ場の無い結界内での戦い……という圧倒的有利が毒を散布できる【神の呪毒(サマエル)】を饒舌にさせた。


 ──が、その言葉を聞いたデルフィナ×3は首を傾げる。


「ぞれ゛ばづま゛り゛……」「アタシらには効かないって事?」


「……何だとッ?」

 想定外の反応、そして言葉通りに大して呪毒が効いているように見えないデルフィナ×3の様子に【神の呪毒(サマエル)】は困惑する。


「──! “()()”!」

 その隙を見逃さなかったデルフィナ(槍)は手を翳して魔力を込めた声で呼びかけ、【神の呪毒(サマエル)】の腕に刺さったままになっていた短槍を手元に呼び戻す。


──(ズボッ)ぐッ! クソッ──「〈戦ぎ穿ち(グングニル)〉ッ!」──なッ!?」

 必殺の呪毒が通用しなかった動揺を突かれた【神の呪毒(サマエル)】は反応が遅れ、補強された結界内を鋭角軌道で飛び回る万能黄銅(オリハルコン)の短槍に翼を次々と貫かれる。


「ギャハハッ! 〈逆撫斬り(バルムンク)〉ッ!」

「くッ──(ザグッ)ぐぉア゛ッ……!」


 毒に侵された身体を押して動くデルフィナ(剣)の攻撃が容赦無く振るわれ、翼を失い落下する【神の呪毒(サマエル)】は反射的に身体を捻りつつ魔力強化した両手を交差して防御するが、呆気なく両手は斬り裂かれ右肩にも深傷を負ってしまった。


「──〈万雷砕き(ミョルニル)〉ッ!!」

「待っ────(ドグシャッ!!)

 

 墜落し、無い両手を差し出してデルフィナ(鎚)に何か言おうとしていた【神の呪毒(サマエル)】は問答無用で魔力強化された片手鎚によって頭を光輪(ヘイロー)ごと叩き潰されて絶命。

 数千年もの永きに渡り闇属性の『至高天使』として君臨してきた蛇人の暗殺者は呆気ない最後を迎えた。


 ……かと思われたその時──


「よーし後は心臓を摘出して──(ボゴコッ)うわッ!?」


潰れた【神の呪毒(サマエル)】の頭からは黒い粘液で出来た蛇の大群が溢れ出し、デルフィナ×3に殺到して大量の呪毒を浴びせかける。


「気゛色゛悪゛〜ッ!」「悪ッ! 足掻きッ! すんなッ!」

 瞬間的な殺傷力は低いものの、これによって精神に作用する呪毒しか受けていなかったデルフィナ(鎚)とデルフィナ(槍)までもが肉体を侵食する呪毒を受けてしまう事となってしまった。



【…… 【神の呪毒(サマエル)】の敗けか。だが……女王デルフィナもこのままでは永くはあるまい……結界を解け。手遅れかもしれんが解呪してやろう】

 最後の悪足掻きを見届けた女神イースネスは石棺から立ち上がると、結界を維持していたレイメイの近くまで歩み寄り、デルフィナの助命を申し出た。


「あ゛〜大゛丈゛夫゛!」

「アタシらは自力でどうにかなるから!」

「棄教しといて助けてもらうのもちょっとね……」


 ……が、デルフィナ×3はそれを断り、毒で衰弱した身体をなんとか立ち上がらせる。


「じゃあ゛()()()よ゛ろ゛じぐ〜」

「はいよーッ〈万雷砕き(ミョルニル)〉〜ッ!!(グシャッ)


 するとデルフィナ(鎚)は本体であろうデルフィナ(剣)の頭を躊躇無く叩き潰した。


◇ 【神の呪毒(サマエル)

『光の女神イースネス』と『闇の女神』による合作神業(チートスキル)

俗に『天使系』と呼称されるスキルの中でも最高峰の一つ。

保有者の闇属性魔術を強化し、魔力が強力な毒性を帯びるようになる。

『至高天使』として数千年間イースネスに仕えていた蛇人の暗殺者は最初にスキルを授与された異世界人から同意の上で譲渡された。

蛇人はレイメイの修める〈蛇道鬼門拳〉の開祖の師にあたる人物でもあった。

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