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王の鏡と廻る時計  作者: 蒼井のあ
第1章 何度目の桜だろう
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逢いたい理由



「もう大丈夫だからね」



そう言って少年は着ていたコートをボクにかけてくれた。ふわふわしていて、とても暖かい。



その後ボクは少年の家に連れて行ってもらった。



「お父さん、お母さん!この子、道で捨てられてたの。家で飼ってもいい?」



「あら…どうしましょう?」



「…いいんじゃないか?但し、その子のお世話は自分でするんだよ」



「うん、分かった!ありがとう!」



それから、ボクは少年の家で飼われることになった。



ボクらはいつも一緒に遊んだ。最初のうちはまだ人への恐怖心が拭えなかったが、少年と過ごすうちにいつの間にか無くなっていた。



今思えば、ボクは殆どあいつの隣にいた。あいつと居るときは捨てられた悲しさを忘れてしまうくらい、毎日が楽しかった。



ボクが家に来て何年か経ったある日。あいつとボクは喧嘩した。ボクが勝手におやつを食べたから、あいつがすごく怒ったんだ。



そのときのボクは自分は悪くないと思っていて、反省もせずに「ちょっとくらい良いだろ」なんて考えていた。



その日の夜は、この家に来て初めてあいつと別々に寝た。



そして、ボクは久々に夢をみた。



大きな鏡がだけがある空間だった。鏡に触れると、いきなり鏡が光りだして、あまりの眩しさにボクは目を閉じてしまった。



それで…目が覚めたらボクはこの世界に居たんだ。



またあいつに会いたい。あいつに謝って、また一緒に遊びたい。ボクはあいつにずっと助けられてばっかりだった…次は、ボクがあいつを助けたい。



―――――――――――――――――――――――



「あいつに会うために元の世界に戻りたい…その思いで、ボクは諦めずに今まで生きてきたんだ」



「そうだったんだ…シアンはずっと頑張っていたんだね、凄いよ」



「いや、そんなことない。ただ必死に生きてきただけだ」



「それが凄いんだよ。諦めずに必死に頑張ることなんて、みんなが出来ることじゃないから」



「…そうか」



それにしても、シアンも鏡の光でこの世界に来たのか…鏡は元の世界に戻るヒントになるのかもしれない。



「あ、そういえばさ、この世界に来たのはどのくらい前なの?」



「さあ?100年くらい前か?」



「え、100年!?…シアンって今何歳?」



「ボクも覚えてない」



「そ、そうなんだ」



「…まあ、ボクもこんだけ色んな経験してるけど、今までずっと生きてる。だからさ、お前もそんなに気負わなくていいよ。お前は別に悪いことしてないし」



「シアン…ありがとう」



シアンの言葉が胸に染みる。



「…ちなみに、お前は向こうの世界に家族は居るのか?」



「うん、居るよ。1個下の妹が居るんだけど、妹は小さい頃から身体が弱いんだ…」



「そうか…なら早く戻ってやらないといけないな」



「うん…一緒に戻れるように、頑張ろうね!」



「ああ、そうだな」



シアンのおかげで少し前向きになれた気がする。僕が落ち込んでる場合じゃない。早く元の世界に帰らないと…!



―――――――――――――――――――――――



あれから、僕は長時間勉強する日々を過ごした。リーマ先生の補習ももちろん受けている。先生の説明は分かりやすくてとても助かった。



僕は元から頭が良いわけではないので、時間をみつけてはひたすら勉強していた。勉強が好きなわけでもない僕が、何時間も何週間も勉強するのはかなり辛かった。



学園の生徒たちには相変わらず好奇の目で見られているが、シアンの励ましの言葉もあり、思ったより頑張れていた。…もちろん、生徒たちは悪くないんだけどね。興味を持ってしまう気持ちはとても分かるし、そもそも記憶喪失なのは完全には否定できないし…



ちなみに、あれからアイビーとはずっと話していない。もうこれ以上迷惑はかけたくない…ある程度噂が落ち着いたら、直接謝りに行こう。



…もう今の時点でかなりゲームのシナリオから逸れている。僕が知る限りでは、ソラが記憶喪失の設定なんてなかった。



シナリオが変わったことが良いことなのか、悪いことなのかは分からない。



取り敢えず、僕は僕なりに努力することしか出来なかった。



―――――――――――――――――――――――



とうとう5月がやってきた。あっという間に中間テストの日がやってきてしまった。



今日こそ勉強の成果を見せる日だ。頑張ろう。そう思いながら廊下を歩いていると、1人の男子生徒に声をかけられた。



「あ、ソラ。アイビーが呼んでるよ」



ん?彼は確か…



「…そっか、じゃあ放課後屋上に来るようにアイビーに伝えておいてくれない?」



「あーいや、俺今日忙しいんだよね。アイビー、今体育館倉庫に居るらしいから。今から行こうよ」



…なんで体育館倉庫にいるの?



「そうなんだ…ありがとう。じゃあ行ってくるね」



「え、俺もついて行くよ」



「ありがとう、でも大丈夫だよ。1人で行ってくるね」



「いやいや、王子に何かあったらいけないからさ」



「…でも君、今日は忙しいんじゃなかったの?」



「ああ、いや…別に今は大丈夫だからさ」



「へえ、そっか…というかさ、僕と君、初対面だよね?」



「え、な、何言ってるんだよソラ。去年同じクラスだっただろ」




「…でも君、1年生でしょ?」



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