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王の鏡と廻る時計  作者: 蒼井のあ
第1章 何度目の桜だろう
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捨てられた仔猫



「ボク、仔猫のときに捨てられたんだ」



「…え?」



困惑している僕の顔を見て、シアンはふっと笑った。



「…お前には、特別に話してあげるよ」



―――――――――――――――――――――――



これは、ずっと昔の話…



ボクはまだ、生まれたばかりの仔猫だった。



ボクには沢山の兄弟がいた。人間と違って、猫は1度の出産で何匹も子どもを産むのが普通だ。ボクらは日本の一般的な家庭に生まれた。



ある日のこと、ふと夜中に目が覚めたボクは家の人間たちが集まって何か話しているのを見つけた。ボクはこっそり、ドアの向こうの彼らの様子を伺った。



「こんなに沢山産むなんて…育てられないわ」



…どうやら人間たちは、ボクらについて話しているようだ。



「取り敢えず、誰か引き取ってくれそうな人を探すか」



「そうね…」



それから、数日経つごとにボクの兄弟は1匹ずつ居なくなっていった。家族と離れるのは悲しくてたまらなかった。



…2週間後には、家に居る仔猫はボクだけになってしまった。



「あと1匹か」



1人の人間がボクを見て困ったように呟く。



「もう、引き取ってくれそうなところは無いわ」



「うーん、どうしようか…」



人間たちは黙り込んでしまった。…数分後、1人の人間が重苦しい沈黙を破った。



「…外に逃がしてきたら?」



「え、そんなこと…」



「大丈夫、野生に戻すだけでしょ?」



「…確かに、そうだよな。そうするか…」



この人間たちは正気か?今は真冬で雪も降っている。外は仔猫が耐えられる寒さでは無いだろう。



…でも、ボクは何もすることが出来なかった。



その日の夜、ボクは街の裏道に置いていかれた。人間たちは最後まで「これはしょうがなかったんだ」と自分を正当化していた。ボクは怒りを通り越して呆れてしまった。



街はきらきら輝いていて、人々は浮かれ立っている。今日はきっと何かがあるんだろう。歌も流れていて、みんな、本当に幸せそうだ。



誰もボクが捨てられていることなんて気にも留めない。きっと今は自分たちの幸せにしか目を向けられないんだろう。



…本当に、人間は勝手だ。自分の都合でボクらを簡単に手放すんだから。



楽しげな歌も、眩い光も、今のボクには鬱陶しいとしか思えなかった。



―――――――――――――――――――――――



「そんなことが…」



シアンの話を聞いて、僕は心が引き裂かれそうなほど苦しくなった。どうして彼がこんなに辛い思いをしなければならなかったんだ…



「…ごめんね、辛いことを話させてしまって」



「いや、いいんだ。ボクがお前に話したかっただけだから」



「…それに、この話にはまだ続きがある」



「え、続き…?」



―――――――――――――――――――――――



あれから何時間経っただろう。もう街の賑わいも落ち着いて、人も少なくなってきた。



それにしても、冬の夜は本当に寒い。身体の熱がどんどん奪われているのが分かる。ボクは身体の震えが止められなかった。



…そろそろ限界だ。



ああ、ボクはここで生涯の幕を閉じるんだ。



そう悟ったとき、頭の上から声が聞こえてきた。



「ねえ、こんなとこにいたら風邪ひくよ?」



幼い少年がボクのことを不思議そうに見つめている。身体が思ったように動かなくて、ボクはなにも反応できなかった。



「…大丈夫、怖くないよ」



少年はぎこちない動作でボクをそっと持ち上げる。そして、小さな体でボクをぎゅっと抱きしめてくれた。




このとき、ボクは初めて人の温かさに触れた。



ずっと更新できていなくてすみません。最近忙しかったのですが、だいぶ時間が取れるようになったのでこれからは更新のペースを戻していこうと思います!


今回も読んでくださり、ありがとうございました. ̫ .♡

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