僕たちは、ジェイを失った
8人の冒険者の遺体が教会の聖堂に並べられていた。その中のひとつは、ジェイの冷たくなった死体であった。
ジェイの隣の棺は蓋が閉じられていた。その中には、リリィの死体が入っていた。
セーラが教会の扉を勢いよく開き、聖堂に走り込んできた。彼女は息を切らしながら、並べられた棺に歩み寄った。その彼女の体を、トグマが手で押しとどめた。
「お前は見ない方がいい」トグマは言った。彼女はそれを振り切って、棺のそばまで駆け寄った。彼女はひとつの棺を覗き込んで、次は右に歩き、また別の棺をのぞき込んだ。彼女は首を振った。やがて彼女は蓋の閉じられた棺を見た。彼女は棺の蓋に手を当てて、蓋をずらし中を見た。その蓋をずり落ち、床にガシャンと大きな音を立て落下した。しんとした聖堂に大きな音が響いた。リリィの黒焦げた死体が、熱によって収縮した筋肉によって両手を天に突き伸ばして、高い天井を見つめていた。布にくる。彼女の死体を包んでいる布は、死体から染み出た体液で茶色く汚れていた。
「リリィ!リリィ!」セーラは慟哭した。棺に伏せた彼女の泣き声が、人気のない教会に響いた。
その日、キッピス亭に冒険者たちが集められた。エリスもその場所に来ていた。
「まず、昨日起こったことを話そう。冒険者のほとんどが新市街と旧市街をつなぐ橋を渡り終えたのち、どういった方法でか彼らは旧市街のど真ん中から出現した。そして我々を出し抜き、仲間を殺した。無論我々はルケントに冒険者を出し、奴らを皆殺しにするつもりだ。騎士団も30人ほど人員を出すと言っている。それでは、仲間たちの死を悼んで」
エリスはそういい杯を上げた。冒険者たちは皆立ち上がり、それに倣った。
「俺は飲む気になんねえや」トグマは椅子に座ると、そう言った。
「俺もだな」アイルは言った。
反対側のテーブルでネネがジョッキに給仕していたが、もちろん誰も体に触るものなどいなかった。
「俺が疑問に思ってることは1つある」トグマが話し出した。「俺が見つけた金貨だ」
「何だっけ。確かロードラン第3王朝金貨……だったか?」アイルは言った。「その金貨がどうした?」
「もう全部両替して使っちまったよ」
「使ったって、何に使ったんだ」
「スラムの連中にやった。まとにかく、その金貨なんだがな。そもそもなんであんなもん手に入ったんだろう」
「どういう意味だ」
「金貨を持ってたのは下っ端のかなり弱いゴブリンだった。前が初日に会った居合とかいうやつよりもだいぶ弱かったんじゃないか」
「ああ、だいぶな」
「金貨を手に入れたのは確か4日目だったかな。あの日戦ったやつらはルケントのゴブリンの中でも最弱だったな。俺はあのゴブリンたちが囮だと思ってるんだが」
「囮」
「上の連中が言うように、能力者たちはロードランから侵入してるんだと思う。ただそうじゃない雑魚のゴブリン達はルケント生まれの地湧きのゴブリンだろ。なんでそんな奴らが大陸向こうの金貨なんか持ってるんだ。多分身分が上のやつらから渡されたんだ。こいつを囮にして冒険者でも連れて来いってことだ。そして油断した冒険者たちを後ろからぶっ殺す。それが作戦だな」
「なるほど。ただ問題はどうやって俺たちの後ろに回り込んだかだ。入り口も塞いでたのに」
「城壁でも乗り越えたんじゃね?」
「多分そんな簡単な方法だったら誰かが気づくだろ。ギルドが言ってたけど、このルケントのゴブリンは絶滅させても何度も何度も湧いてくるんだろう?そのこととまさに関係あるんじゃないか。俺が思うに、どこかに地下道みたいなものがあって、そこから侵入してくるんだと思う」
「だけどそんなのあったらとっくに見つかってるんじゃないか」
「その通り。だからもう直接行って調べるしかない。
「どういう意味だ」
「俺は夜中にルケントに侵入する」




