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仕事

 ブリスコーの冒険者ギルドは城門前の広場に面した一等地に立っていた。といっても、アイルが五年前にブリスコーに来た時には、この辺境の地に好き好んでやってくる冒険者などおらず、広場も閑散としたものだったが。

 事務所の前には立て看板があり、そこでは戦闘能力のないものでもこなせる雑務が大っぴらに募集されていた。その日は城壁の堀浚いの仕事があった。アイルたちは、義勇兵団から招集が来るまで手持ち無沙汰だったので、この仕事に参加することにした。


 彼はその仕事に行く道すがら、彼はスラム街に寄った。そして、昨日りんごを盗んだ少年を堀浚いの仕事に誘った。

 彼の名はミゲルといった。彼もまたここから北西のホルムという村の出身で、魔物に故郷を追われてここにたどり着いたのだった。

 城壁の堀は既に水が抜かれていて、たくさんのスコップが地面に並べてあった。堀の下に降りている人間を見ると、そこには昨日喧嘩になったのツンツン頭の野郎がいた。

「あ、お前昨日殴ってきたクソ野郎じゃねーか。どこ逃げやがった」彼はアイルを見ていった。

「はあ?クソ野郎がてめえの方だろ」アイルが応えた。「誰の女のケツ触ってんだよ」

「なに?てめーの女だっての?あんなべっぴんが?口からでまかせ言ってんじゃねーぞ」

「おめえもっかいぶん殴られたいわけ?」

「てめえ喧嘩の最中にどっかに消えやがったよな。ぶっ壊れた店の修繕費は全部騎士団が肩代わりしてるの知ってっか?俺がお前のことチクったら一巻の終わりだぜ?騎士団総出でリンチ確定だぜ?」

「うぜえ。お前も店ぶっ壊しただろうが。お前こそ賠償請求されねーのかよ」

「いや全然?俺はソッコー逃げたからな」

「じゃお前もその場から逃げたんじゃねーか。お前こそ俺がチクったら終わりだろうが」

「まあまあ喧嘩はよそうや」仲間の恵体の大男が割って入った。

「そうだよ、やめてよトグマ」ミゲルが言った。

「ミゲル、お前いたのか。お前そいつと知り合いか?」トグマと呼ばれたツンツン頭が言った。

「昨日話したリンゴを盗んで捕まった時に助けてくれた人だよ」

「ほ~。お前がその男なのか。ミゲルを助けたとかいう。そうかそうか。そんならお前のことは黙っておいてやらあ。これは貸しな?」

「うぜえ」

 アイルはトグマから離れて堀の端へ移動した。しばらく後、ようやく人が集まり、堀の上で監督官が指示を出した。男たちは堀の底のヘドロを掬い出した。

 トグマは勢いよくスコップで掘りのそこの泥をすくい上げ、アイルの方をチラチラと見た。

 どうやら競争してるつもりらしい。アイルも負けずにスコップを動かした。

 アベル達はその様子をやれやれという面持ちで見ていた。


 仕事が終わり駄賃を受けた取った後、アイルとミゲルは市場の青果店の前にやって来た。

 青果店の店主は二人に気づくと、腕を組んで二人を見ていた。

 アイルはミゲルの背中を押した。ミゲルはりんごを下さいと言い、右手の駄賃を差し出した。

「ほら謝んな」アイルは後ろから囁いた。

「昨日はごめんなさい」ミゲルはうつむきながら言った。

「ったくしょうがねえなあ」と店主は頭をかきながら言い、りんご三つを袋に入れて渡すと、おまけの一個をミゲルに持たせた。

 ミゲルは顔を上げ、欠けた歯を出して笑った 。


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