セーラ達に起こったこと
セーラ達が北部連隊とともに避難してくるところを、ドアンナが見たのは昨日のことだった。広場は血糊のついた鎧を着た帰還兵でごった返していた。セーラはシータに肩によりすがってうつむいて泣いていた。彼女は誰かの返り血を浴びて顔や襟首が赤く汚れていた。
「セーラ!」ドアンナはセーラに駆け寄った。「セーラ、無事だったの?」
「彼女はうつむいたまま目を潤ませてうなずいた。
「あんたたちも、無事みたいね」セーラは言った。
「ええ」シータは短く答えた。
「学校のみんなはどうしたの」
「分からない。何もかもぐちゃぐちゃでだった……今は思い出したくない」
「そう……とりあえず今日は休みましょう 」
その時、突然セーラが喉を震わせて泣き出した。
「お父さん……お母さん!」
「かわいそうに」ドアンナは言った。「今日はとりあえず休みましょう 。私達の宿に来なさいよ。定員オーバーだけど今日は大目に見てもらえるわ」
そういうと、ドアンナはセーラ達を引き連れて歩き出した。
ドアンナたちはスラム街に隣接するボロ宿屋に泊まっていた。扉を開けると、おかみさんはセーラ達を一瞥してうなずいた。
彼女たちは二階に上がり、部屋のドアを開けた。
「ごめんねこんなボロ屋で。私たちは義勇兵に入ったから、招集がかかれば兵舎に入れるの。だから家は借りてないのよ。
「うん」ドアンナは短く答えた。
部屋ではレイセンとアンジェラは横になって眠っていた。四人はそろりと部屋の中を移動すると、ベッドのシーツ床に敷いた。彼女たちはそのまま靴を脱いで床に雑魚寝した。
明かりを消してしばらくした後も、セーラのすすり泣きが暗い部屋に響いていた。
明け方、セーラは部屋の物音で目を覚ました。彼女が暗い部屋で身動ぎせず目を開けた。何やら艶めかしい吐息が部屋の何処かから聞こえてきた 。
彼女が目だけ動かしベッドの上を見ると、アンジェラが股間に手を入れ、シャツの下に手を入れ乳首をいじりながら身をよがらせてあえいでいた。
「ちょちょっとあなた!何やってるんですの!?」
アンジェラはも返答とも喘ぎともとれる声を出すと、股間を広げて首を反らし、さらに激しく自慰を行った。
やがて彼女は体を反らせ、大声を上げて絶頂に達した。
「んなななななな」
セイラは目を丸くしてドン引きしていた。
アンジェラは股間に差し込んでいた指を引き抜いたその先は愛液に塗れてい。 彼女はその匂いを嗅ぎ、舌で舐めとると今度は右手を股間に入れて左手で乳首を弄り出した。
「ななななななななな!」セーラはわなわなと震える指を指した。「おやめなさい!ハレンチすぎますわー!」
「いやいや、彼女は何言ってもオナニーやめないわよ」寝起きでまぶたが半開きのドアンナは言った。「寮では彼女は激オナアンジェラって呼ばれてたわ」
「毎日一日中ずっとオナニーしてるのよね」レイセンが言った。「彼女、寮で同室になった初日からずっとオナニーしているの」
「……。いやいやいやいや」
「えぐい張方とかいっぱい持ってるからねそいつ」
「……」セーラは押し黙った。別にそんな情報知りたくもなかった。
「あらたまってだけど、ネーヴェで何があったのか話してくれる?」みな部屋の中央に円座を組んで座っている中、ドアンナが言った。
セーラは話しだした。「襲撃が始まった時、私たちは図書館で調べ物をしていたの。最初は司書さん達が何か騒いでいて、なんだろうと思っていたら、すぐ図書館の外に出るよう言われたわ。
外に出ると警鐘が鳴っていて、ただそれは毎年あることだからそんなに驚きもしなかったんですけど、そのあと通りから人通りがなくなって、なんだかおかしいなと思ったの。
私たちは城門の前に行くと、城壁に沢山のひとが登って外を見ていたから、私達も城壁に登ったわ。そしてら外に魔道士の集団がいたの。
彼らはオークと混じってネーヴェを取り囲んでいたわ。そいつらは外の草むらを道具で踏み倒して、地上絵みたいな魔法陣を作ったの。
そして誰かが呪文を唱えると、空中に大きな火球が浮かび上がったの。それは、大体直経八十フィートくらいあるのまぶしい火の玉だった。
その火の玉が突然扉に向かって加速して、ぶつかって爆発したの。
城門は吹き飛んで、その後からオークが入ってきて戦闘になったわ。でも衛兵はほとんど城門の上に陣取っていたから、多分即死したんだと思う。
防御が足りなくて城門はすぐに突破されて、なかにオーク達がなだれ込んできたわ。
あとはもう、街で虐殺が始まったわ。
私たちは衛兵の一人に連れられて逃げてきたの。そして西門からヴェリザードに向かうよう言われたわ。
その時ヴェリザードからの救援が西門から入ってきて、私たちはその人達と入れ替わりになって逃げてきたの。
あとはもう、ここまでひたすら歩いて来ただけ」
セーラは話し終えた。部屋の皆は沈痛な思いに押し黙った。
「わかった。災難だったわね」ドアンナが言った。
「多分みんな、皆殺しにされてるわ」セーラが声を震わせて、目に涙を湛えて言った。
ドアンナは彼女の肩を抱いた。
「ブリスコーの人達はかなり寛大よ。あなたがこの部屋に留まっても別に割増料金請求されたりしないわ。だから今日はゆっくり休んでね」
そいうとドアンナは立ち上がった。
「ドアンナさん、どこへ行かれるのですか」
「私は仕事があるから」
「もうお仕事なされているのですか?」
「あたし酒場で皿洗いの仕事やってるんだけど、昨日は兵士たちが乱闘騒ぎを起こして店がしっちゃかめっちゃかになったから。朝のうちに店の掃除をしないといけないんだ」
「ごめんなさい。私お金持って逃げるべきだったけど、頭回らなくて……」
「まー心配すんな。困ったときはお互い様だろ」
「あろがとう。ところでドアンナさん、その首の文字は何ですの?」
「これか?これは義勇兵団に入ったんだよ」
「義勇兵ですか……しかし義勇兵に入ると拒否できない任務があると聞きましたが」
「確かにあるらしいね。でもあのときはそうするしかなかったんだ。それに私は、強くなって人を助けたい」
「義勇兵に入ると特別な力を授かると聞きましたが」
「もうバリバリに魔法使えるよ」
「強くなれましたか」
「ああ」ドアンナは強い眼差しで答えた。
「シータさん、リリィさん」セーラが言うと二人は顔を上げて彼女を見た。「一緒に義勇兵団に入りましょう」
ドアンナはキッピス亭の前に立ち、中を覗き込んだ。椅子やテーブルは滅茶苦茶にひっくり返り、壁にかけた絵画はトマトソースがべチャリと張り付き、支えの片方が外れて傾いてぶら下がっていた。
彼女が店に入ると、床板はこぼれたビールで湿気っていて、床は割れた皿と料理の油でネチョネチョとしていた。
店の奥に進むと、すでに床をモップで磨いている女性がいた。
「おはようございますネネさん」
「おはようドアンナちゃん」三角巾をかぶったネネが応えた。
「いや~昨日は災難でしたね」
「あははは」
「あの喧嘩した男の子、知り合いですよね」
「そうよ~ 弟みたいなものかな」
「私も彼も義勇兵団に入ってるんです。まあ知っていると思いますけど」ドアンナは襟を下げ、首の線を見せながら言った。「招集がかかればお給金出ますからこんなところすぐ止めれますよ」
「あはははは。でもまあこの店はやめないかな」
「やめないんですか 。あんな風に尻とかとか弄られていやじゃないんですか。今回が初めてじゃないのに」
「まあ昨日は特別だったから。しょうがないんじゃない」
「嫌なら嫌ってはっきり言わないと調子乗るだけですよ」
「ありがとね心配してくれて。でも私は全然平気だから」
「すみません」店の入口の方から声がした。見ると、茶色い服を着た背の高い男が立っていた。
「北部連隊の者です。昨日の騒ぎについて謝罪に伺いました」
「店長なら奥の部屋にいます」ネネが言った。「今から案内します」
兵士は店に入り、ネネの前で立ち止まって言った。
「あの、あなたには大変なご迷惑をおかけしました」
「いえいえ構いませんよ」ネネが答えた。
「あなたは大変に美しい女性ですから、色々な人間があなたの話をするんです」
「あらそうでしたか。一体どんな話をするんでしょう?」
「あー、それは、……ええと」
兵士は盛大に口ごもった
その時、店長が厨房から現れた。
「あねさん!」
騎士は店長の元へ向かい、ぺこぺこと頭を下げた。
ネネはドアンナの方を振り返り、言った。
「ドアンナさん」
「はい何でしょう」
「その首の線だけど。命令を聞かないとその呪いで首を切り落とされるって聞いたんだけど」
「ええ、そういわれました。でもその代わりにすごい力が手に入ったんですよ 」
「私、彼のことが心配で」
「義勇兵になったからには、戦士になったからには死はつきものだと思います」ドアンナは言った。「でもきっと大丈夫ですよ。私たちは下っ端だしそんな重要任務なんて任されません。それに私達が授かった力は本物です。だからきっと大丈夫」
通りではレイセンがはちまきを巻いて焼き鳥をひっくり返していた。パフォーマンスで口から火を噴き鶏皮を焼くと、皆大受けして拍手していた。




