焔の首飾り
「よし。とりあえず何となくの状態は掴めたからレアンさんの所に行こうかな」
結構な時間ここで過ごしちゃった気がするし、そろそろ出て行かないと痺れを切らしてどこかに行っちゃうかも知れない。
そうなる前に早く行かないと。
私はそう思い、神殿の外に出てレアンさんの姿を探す。
「んー……と。どこに居るのかな?」
あれだけ街中では目立つ鎧。
すぐに見つけられると思ったけど、さっきよりも人の往来が激しくなって簡単に見つける事は出来なさそう。
スカーレなら案外場所が分かったり?
「ねぇスカーレ?レアンさんの居場所、さっきみたいにマップに表示出来たりしない?」
《申し訳ありません。私がまだお会いしていない方を特定してマップに表示する事は出来ません》
流石に駄目か。
レアンさんと会ったのはスカーレに出会う前だもんね。
でもこの言い方だと一度出会った人なら特定出来るって事なのかな?
《ですが》
「ん?」
《ティルファの記憶を元に大まかな位置を推測して表示する事は出来ます》
「そんな事が出来るの!?」
《はい》
どうやらスカーレの性能は私の想像以上に高いみたい。
今までマップ機能のあるゲームに沢山遊びに行ったけど、不特定に動き回る人の位置を推測して表示するなんて機能が付いているゲームなんて見た事が無い。
……この感じだとまだまだ私が驚くような機能があるんだろうなぁ。
《恐らくこの辺りにいます》
スカーレが表示してくれた場所に行くと飲食店らしき場所に着いた。
「ここに居るのかな?……あっ!」
お店の中を覗くとキッチンと食事をしているお客さんが見え、更にその奥に見える室外のスペースにはパラソル付きのテーブルが3つ程あり、そのうちの1つにレアンさんが座っていた。
「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?」
「いえ。待ち合わせをしていて。あの、外に居る水色の鎧を着た人と」
「分かりました。では、また後程お水をお持ち致しますのでお席の方でお待ち下さい」
「ありがとうございます」
うん。多分飲食店だね。
似たようなお店は[Frontier]にもあったけど食事の必要が無いから食べるって事をした事は無いんだけどね。
まぁそれはどうでもいいや。
「レアンさん」
「あっ!ティルファさん!もう終わったんですか?」
「はい。待たせてしまって申し訳ありません」
「いえ!もっと時間がかかると思っていたので全然待ってませんよ」
「そう言ってもらえると助かります。……ところでそれ、今何を作っている途中なんですか?」
ふとテーブルに視線を向けると、何やらアクセサリーのような物を作っている途中みたいだ。
なんだろう?
「え?あぁこれですか?僕が生まれた村で代々受け継がれている首飾りを模した物を作っていたんです」
「首飾り?」
「はい」
「僕の生まれた村では炎属性のダメージを完全に無効化するという太陽の首飾りが代々村に受け継がれているんです。神聖な物だから誰も身につける事は許されませんけど、それを模して作った首飾りは少なからず太陽の首飾りの加護を受けると言われているんです」
「そんな素晴らしい物があるんですね」
「はい。だからこれをティルファさんにプレゼントとしようと思って今作っていたんです」
「え!?そんな貴重な物を私に!?」
「加護を受けると言っても眉唾ものの伝承ですから本当かどうかは分かりませんし、僕と同じ村で生まれた人なら誰でも作れますから。それに、ティルファさんは命の恩人ですから気持ちだけでも何か受け取って欲しいんです」
なんか……こういうのは凄い嬉しいなぁ。
ここまで感謝をしてくれて、私の為に何かを作ってそれを贈ってくれるなんて。
[Frontier]では決して受ける事の無かった気持ちだなぁ。
「ありがとうございます。本当に、嬉しいです」
「喜んでもらえるなら何よりです。それは僕にとっても嬉しい事ですから」
レアンさん、良い人だなぁ。
「もうちょっと待って下さいね。後少しで完成しますから。ん……!これで良しっと。はい!出来ました!これが太陽の首飾りを模倣した焔の首飾りです」
「綺麗……」
赤い紐に太陽を象った木製の装飾品をいくつか通して、中央には真っ赤に輝く宝石のようなものがつけられている。
どう控えめに言っても、見る人の目を奪う品だ。
「良ければ今付けてみますか?」
「良いんですか?」
「勿論です!」
「なら」
そう言われて手渡された焔の首飾りを身につけてみる。ふふ。似合うかな?
《炎熱耐性が付与されました》
ん?炎熱耐性が付与された?
スカーレ、説明をお願いしても良い?
《はい。ティルファが今身につけたのはラーホムと言う村の出身者のみが作る事の出来る[焔の首飾り]です。その首飾りは作成中に作り手の想いと魔力が込められる事で身に付けた物に対して炎熱耐性の効果を付与させる事が出来ます》
ならレアンさんが言ってた太陽の首飾りの加護が少なからず受けられるっていうのは本当になの?
《厳密には違います。正しくは、太陽の首飾りの加護を受けたラーホムの村人が焔の首飾りを作る事によって炎熱耐性を付与する事が出来ます。それ故にラーホムの村人以外の者がどれだけ精巧に焔の首飾りを作ったとしても炎熱耐性が付与される事はありません》
それってかなり凄い事なんじゃないの?
なら、太陽の首飾りって一体何?
《古の時代に存在していたアトリアの民がその時代の支配者に献上する為に作成した装飾品です。太陽の首飾りを身につけると炎・熱によるダメージと苦痛を完全に無効化し、例え溶岩の中に入ったとしても一切の火傷を負う事無く活動出来ます。また、身につけずに祀る事でその地域に住む生物に[太陽の加護]の能力が与えられます。現在では太陽の首飾りの作成方法は失われ、聖遺物の1つに該当します》
それはとてつもない力を秘めた首飾りなんだね……
でも聖遺物って何なんだろう?
《古の時代に高度な技術を持って作成された武器・防具・装飾品等の事を指します。いずれの品も高い殺傷性や防御力、特殊な効果が付与されており、現在では再現する技術が失われているという共通点があります。稀に遺跡や海底から発見される事があり、それらの品が市場に出た場合はゆうに5000万ゴールドを超えます》
5000万ゴールドがどれ程の大金なのかは想像すらつかないけど、凄い価値があるものなんだね。
レアンさんの村で大切に受け継がれてきたのも分かる気がする。
「あの……お気に召しませんでしたか?」
あっ!
スカーレの説明を聞くのに必死でレアンさんを放っておいたままだった!
首飾りを身につけた後無言で固まっちゃったらそう思われるよね!
ごめんなさい!
「う、ううん!そうじゃなくて、こんなに良い物を私なんかが貰ってもいいのかなって考えてたんです」
なんとか取り繕わないと!
「良かった……お気に召さなかった訳じゃないんですね。そういう事なら本当に気にしないで下さい。さっき言った通り、気持ちだけでも受け取ってもらいたい一心で作ったものですから」
「そっか……本当にありがとうございます。レアンさん」
「いえ!それよりもティルファさん、もし堅苦しいのがお好きで無いのなら敬語をはずしてもらえませんか?」
「いいんですか?まだ初対面なのに」
「勿論です。多分僕の方が年下ですし、実力的にも僕じゃ敵いそうにありませんし。そんな方にずっと敬語を使われるとちょっと変な気分なんです。それにちょっと失礼かも知れませんが何となくティルファさんの使う敬語が不自然に思えたのであまり慣れて無いのかなって思いまして」
あ、バレてる。
「えっと、それならレアン君?でいいのかな?」
「はい!」
「何か色々とありがとうね。街を案内してもらったり、素敵な首飾りを作ってもらったり。本当に助かったよ」
「この程度、なんて事はないですから。お役に立てただけで充分です!」
「ありがとう。なら最後に案内してもらいたい所があるんだけどいいかな?」
「勿論です!」
「えっとそこはね……」
多分そこは私がこの世界で生きて行く為にはきっと避けてはならない場所。
私はレアン君に次の行き先を告げるとそこまで案内してもらう事にした。




