聖邪連合(ユニオン)・エルトア支部
「ここが聖邪連合・エルトア支部になります」
「ここかぁ……」
私が来たのは聖邪連合という場所。
街に来た時に連合支部長と呼ばれている人が居たからこの街には冒険者をメインに扱う何かしらの組織があるんじゃないかなと思ってたけど、やっぱりあったね。
「ここで何をされるんですか?あっ!ベヒモスベビー討伐の賞金を受け取りに来たんですね!」
「ううん違うよ。実は私、まだ冒険者認定を受けてないからこの機会に受けておこうと思って」
「ティルファさん程の実力者がまだ冒険者になって無かったんですか!?」
「あはは……何となくね」
ここに来る途中、スカーレにこの世界でどう振る舞えば良いのかを色々と模索してもらっていた。
トリエンタさん達に話したように、流浪の旅人として名乗る事。
あえて表舞台には一切出ず、影から魔獣・神獣を討伐して行く事。
聖邪連合で冒険者認定を受けて冒険者を名乗る事。
他にも色んなパターンを考えてもらったけど、その中でも1番都合が良さそうな冒険者になる事に私は決めた。
スカーレによると、この世界における聖邪連合とは魔獣・神獣や魔物・獣による国家や街、一般人への被害を抑制する為に力のある者を冒険者として登用し、その冒険者達をそれらの脅威と戦ってもらい排除・撃退する事で世界の安全を図る為の組織らしい。
そして冒険者になるには聖邪連合から正式に冒険者として登用されなければならないらしい。
聖邪連合の登用無しに冒険者を名乗る事は恥にも等しく、何より冒険者に登用される事で得られる恩恵がそもそも受けられないという。
その恩恵とは、
まず、倒した魔物や獣の数や種類によって金銭が得られる事。
次に冒険者として登用された時に発行される連合証は世界中どの地域でも通じる身分証明書として使える事。
そして冒険者にはGからSまでのランクがあり、ランクがSに近づく程に聖邪連合から好待遇で迎え入れられ、各国でもある程度の融通が効くようになるという事。
大まかにこの3つが主に挙げられる。
そしえこれらの事から長い年月をかけて魔獣・神獣を討伐していくと考えると冒険者になるのが1番都合が良いという結論に至ったのだ。
私なんかで冒険者になれるかは分からないけど、スカーレ曰く、
《ティルファの実力で冒険者になれないのならこの世界では誰も冒険者になれません》
との事だし、
《知識面でも私がサポートするので全く問題ありません》
と、スカーレから太鼓判を押してもらったから多分大丈夫な筈。
これで駄目だったら恥ずかし過ぎる。
「だからレアン君、私冒険者認定の受け方を知らないから一緒に来てもらえないかな?レアン君、冒険者みたいだし知ってるかなって」
「勿論です。任せて下さい!」
レアン君にも一緒に付き添ってもらい、これからの流れを事前に聞いておく。
これで多分大丈夫だろう。
よし。行こう!
私達が扉を開けて中に入ると、それと同時に何故か入口付近に居た人達がざわめき始める。
え?何?
「お、おい!あれってもしかして……?」
「あぁ。間違いねぇ。可憐なる【真紅】の女戦士だ」
「あんな華奢な体のどこにそんな力が……?」
「てか隣に居る鎧の奴、【千撃】のレアンじゃねぇのか!?あの2人、もしかしてパーティを!?」
「ヤバイな……俺もうかうかしてられねぇ!」
なんか私、噂になってる?
それにレアン君も?
「ティルファさん。行きましょう。外野は無視して大丈夫です」
「あっ!待っ!」
ぐいぐいと手を引かれて前に進められていく。
なんかちょっと苛立ってる?
「クティさん!今時間ありますか?」
「あら。レアン。あなたが誰かと一緒に居るなんて珍しいわね。そちらの方は……あぁ!可憐なる【真紅】の女戦士!有名人が揃って何の用かしら?今はそんなに大した依頼は来てないわよ?」
「いえ。こちらの女性の名前はティルファさんと言うのですが、ティルファさん、まだ冒険者に登用されてないので冒険者認定の手続きをしに来たんです」
「嘘!?ベヒモスベビーを単騎で倒すだけの実力がありながらまだ冒険者じゃないの!?分かったわ。すぐに準備するわ。それと連合支部長も呼んでくるわ。彼女にお礼が言いたいって言ってたし」
なんか私が分からない所で凄いスピードで話が進んでる。
私、置いてきぼり?
「あの、レアン君?こちらの方は?」
「あ。ごめんなさい。僕ったら……」
「あら。まだ何も話して無かったの?勢いに任せて女の子を置いて行ったら駄目よ?説明は私の方からするわね」
「こめんなさい……お願いします」
「私はクティ。クティ・ミルレーヤ。この連合支部の受付嬢をしている者よ」
「私はティルファと申します。流浪の旅人をしています」
なんか私、自己紹介する毎に流浪の旅人を名乗ってるな。一回も旅なんかした事ないのに。
まぁそう名乗るのが現状一番無難そうだったからしょうがないんだけどさ。
「よろしくね。ティルファ。あなたの事は先のベヒモスベビーの件でよく耳にしているわ。噂通りの真紅の装備に身を包んでいるのね」
そういえば私が身につけてる装備って、紅色を基調にしているんだよね。
ブーツにバトルドレス、籠手にピアス。
どれも必ず紅色をメインに使っている。
見た目は確かにぱっと見真紅と言えなくもない。
「それに女の私から見ても整った容姿をしているのね。正に可憐なる【真紅】の女戦士の呼び名に相応しいわ」
その可憐なる【真紅】の女戦士って呼び名はあまり広まって欲しくないなぁ。
なんかこう、気恥ずかしいよね。
出来れば名前で呼んで欲しい。
「いえ、そんな!私なんかよりクティさんの方がよっぽど綺麗です!」
「あら。嬉しい事を言ってくれるわね。それも人族の女性が。肌の色のせいかしら?あまり私達の容姿を褒めてくれる人族の女性っていないのよねぇ」
事実、クティさんは本当に私なんかより綺麗だ。
綺麗な銀色の長い髪。どの角度から見ても整った顔に抜群のプロポーション。
ただ、肌が少し浅黒く耳が尖っているのは何故なんだろう?
「やっぱり肌の色って大事なのかしら?というか好みの問題?魔族と人族が和解してから数百年は経つのに未だに肌の色で意見が分かれるものねぇ」
魔族?
というか魔族ってあの魔族?よく人間と敵対する種族として扱われているよね。
でもそんな雰囲気は一切感じないけど。
「魔族?クティさんは魔族なんですか?」
「えぇそうよ?魔族を見るのは初めてかしら?」
「あ、はい。魔族の方に会うのはクティさんが初めてで、どうしてちょっと肌が浅黒くて耳が尖ってるのかなって思いまして」
「今時珍しいわね。魔族を見た事がない人間なんて。まぁ私達魔族は人族に比べると個体数は少ないし、旅のルートと出身地によってはそんな事もあるかもしれないわね」
「えっと、ごめんなさい」
「別に謝らなくてもいいのよ。そんな事気にする必要も無いわ。あなたは見た目で偏見を持つような人じゃ無さそうだしね」
なんだろう?
魔族って私達の世界ではよく悪役として扱われているけどこの世界ではそうじゃないのかな?
スカーレ。解説お願い。
《この世界には主に三種類の人種に分ける事が出来ます。人間・巨人族・小人族などを一纏めにした[人族]。悪魔族・獣人族・魚人族などを一纏めにした[魔族]。長命族・小鍛族・竜人族などの亜人族です》
(結構色んな種族が居るんだね》
《はい。そして人族と魔族の関係ですが、数百年前までは互いに憎しみあい、自らの種族の信念の元に千年単位で戦争を行なっていました。人族は世界の安寧を望み、魔族は世界の混沌を望む事を理由に》
(そんな事があったんだ)
《人族は皇帝と勇者を筆頭に、魔族は魔王と魔将を筆頭に己が種族の信念の元に戦っていました。しかし、その長く続いた戦争も数百年前に終わりを迎え、現在では両種族とも良好な関係を築いています》
(そんなに長く続いた戦争なのに、どちらかが滅亡する事無く、それも良好な関係を築いているって一体何があったの?)
《話せば長くなるので今はやめておきます。レアン様とクティ様を待たせる事になってしまうので》
(んーそっか。んじゃまた時間がある時に聞かせてもらうね)
《分かりました》
「そうですね。私は特に容姿でその人の人柄を判断する事が無いのであまり気にしません」
「そうよねぇ!それが一番よ。あなたなら良い友達になれそうだわ。改めてよろしくね。ティルファ」
「こちらこそよろしくお願いします。クティさん」
「はっはっは!楽しく雑談をしている所を邪魔するようで悪いが、いいかな?」
「あっ!連合支部長!お疲れ様です」
「おう!連絡ありがとな。それでこちらの方が可憐なる【真紅】の女戦士だな。それにその鎧は【千撃】のレアンか」
「はい。お久しぶりです」
「丁度いい。お前も可憐なる【真紅】の女戦士と一緒に来い。ちょっと話があるんだ」
「?分かりました」
「んじゃクティ、ちょっと2人を応接室まで連れて行くぞ」
「はい!」
「よし。それじゃ付いてきてくれ」
連合支部長にそう言われ、私とレアン君はそのまま応接室まで案内された。
話ってのはやっぱりベヒモスベビーの事なんだろうなぁ。
申し訳ありません……
1日1話投稿を心掛けていたのですが変なトラブルが重なってしまい更新が出来ませんでした……




