冒険者レアンの感謝
さて、と。
街の外に出てみたはいいけど何から見て回ろうかな?
んー……とりあえず何か目的があるわけじゃ無いし適当にぶらぶら散歩してみよっと。
「安いよ安いよー!一角鳥の串焼きが一本70ゴールド!5本でなんと300ゴールド!さぁ見てって見てって!」
「エリアール商会の野菜はいつでも新鮮!飛びっきりに瑞々しい野菜を今日の夕飯にいかがでしょうか!?」
「隣国から取り入れた塩と胡椒はいらんかね〜。日々の食事に新たなスパイスを加えてみないかね〜」
あれだけの騒ぎがあったのに、どうやら冷静になるのが早いのはクローディスさん達だけじゃなく、街の人も同じようだ。
どこもお店を出している人は元気に売り込みをしているし、お客さんは皆んな笑顔で商品を見にきている。
なんだか元気で逞しい街なんだね。
凄い楽しそうな街だ。
「あっ!」
「ん?」
そんな感じで街の雰囲気を楽しんでいると、私を向いて驚いている男性……と言うか少年?が現れた。
えっと、誰?
「あなたはさっきのベヒモスベビーを倒したという女戦士では!?」
女戦士という呼び名がちょっと引っかかるけど、多分私の事で間違いないだろう。
「そうですけど……あなたは?」
「僕はベヒモスベビー討伐の為に編成されていた冒険者達の中に居たレアンと言います」
「あ、そうなんですね。私はティルファ。ごめんなさいレアンさん。あの時街の入口に居た冒険者の数が多くてレアンさんが居たのかどうかは覚えていないのですが……何か私に用があったのでしょうか?」
「それはしょうがないですよ。あれだけの数、名も知らない人を覚えるなんてよっぽど特徴が無い限りは難しいでしょうし。……それでティルファさんに声をかけた理由なんですが……その」
「?」
「あの、僕達の代わりにベヒモスベビーを倒して下さってありがとうございました!」
お礼を言うと同時にバッと深く頭を下げるレアンさん。
なんだろう。この短時間で凄い頭を下げられてる気がするなぁ。
「えっと、レアンさん?」
「正直言ってAクラス以上の冒険者が街の外に出てしまっている以上、どんなに頭数を増やして討伐隊を組んでもベヒモスベビーが相手となるとかなりの数の被害が出ていたと思います」
クローディスさんも同じ事言ってたな。
「いくら報酬が良いとは言え、死ぬ危険が高い強制依頼を僕としては受けたくなかったんです。でも、冒険者という手前逃げる訳にもいきませんし、どうやって生き長らえようかと考えていた所にトリエンタ様とティルファさんがやってきて、ベヒモスベビーは討伐されたと伝えられたのです」
かなりの数の人が討伐隊に加わっていたけど、全員が全員覚悟を持ってあの場にいた訳じゃ無かったんだね。
「それを聞いた時の僕の心の安堵と言ったらもう……!お陰様で命を救われました!だからどうしてもお礼を一言だけでも言いたくてお声を掛けさせて頂きました!」
私からすれば本当に大した事では無かったんだけど、改めてこうやって感謝されるとやっぱり嬉しい。
領主としてのクローディスさんの言葉とはまた違った意味で嬉しさが込み上げてくる。
「ううん。私としても私が出来る事を、私がやりたい事をやっただけですから。そんな私にわざわざお礼を言いに来てくれてありがとうございます」
「はぅっ……!?」
「はうっ?」
「い、いえ。何でもありません!」
「そう?何となく顔色が変わってきていますし、極度の緊張から安堵したものだから体調に異変が……」
「な、何でもありませんから!それよりもあの!もしよろしければこの街でも案内させてもらえないでしょうか?ティルファさんは初めてこの街に来るようですし、僕もこの街では長く生活しているのである程度は案内出来ると思います!」
レアンさんの顔色の変化が少し気になるけど……大丈夫そうだし特には問題無いのかな。
それにしても案内して欲しい場所か。
確かに色々見て回りたいけど何から手をつけたらいいのかな?
……あっ!
「あの、神殿って場所に心当たりはありますか?」
「えぇ勿論。お祈りをされたいのですか?」
「うん。まぁそんな所です」
「分かりました!そんなに遠くない場所にあるので案内しますね!」
「お願いします」
そう言えば神様のおじいちゃん、ここに来る時に神殿に来て欲しいって言ってたよね。
神殿がどの程度の規模を指しているのかは分からないけど、神殿と名が付いているのならきっと大丈夫な筈。
とりあえずこのままレアンさんの案内してくれる場所に行ってみよう。




