戦闘!グランドスライム!
「うわっとと……!」
「大丈夫ですかティルファさん?」
「う、うん。実は馬に乗るのって初めてなんだ」
「そうなんですか!?あまり無茶をせず、無理そうならゆっくり行きましょう。折角早い馬を用意してもらいましたが、討伐の前に落馬して怪我でもしたら本末転倒ですし」
「そ、そうなんだけどね。うわっと!でも、なんだろう?私が馬に乗るのが不慣れなのを感じとってくれてるのか、何となくギブンがサポートしてくれてるような気がするんだよね」
「ギブンがですか?」
「うん」
私が落ちそうになると少し速度を落として姿勢を立て直させてくれたり、左右に体が揺れるとそれに合わせてギブンも体を揺らしてくれて上手いこと姿勢を保たせてくれてるような気がする。
(ギブンってかなり知能の高い馬だったりする?)
《ギブンに限らず、基本的にどの馬も知能は高いです。人族や魔族の言葉を喋れないだけである程度は言葉の意味を理解していますし、状況の把握も他の動物に比べると優れています》
(そうなんだ。それじゃ私が感じてる、ギブンサポートされているってのは間違いではない?)
《恐らく間違いでは無い筈です。余程質の良い育て方をされてきたのでしょう》
(そっかぁ)
クティさんはやっぱり凄い調教師なんだね。
「言われてみれば確かにそんな感じはあるかも知れませんね。何度か僕が乗りづらいと感じていた時に、乗りやすくなるよう走り方を変えてくれたような気がしてましたし」
「レアン君もそう思うんだ。……クティさんは凄いね。こんな立派な馬を育ててしまうなんて」
「ですね。何としてでも、無事に送り返しましょうね」
「勿論!怪我一つ無くクティさんの元に帰してあげようね!」
「はい!」
『『ヒヒン!』』
ギブンとストラも私達の想いを汲み取ってくれたのか、嬉しそうに鳴く。
何が何でも無傷で帰してあげるからもうちょっと頑張ってね!
「あっ!見えて来ましたよ。あれがグランドスライムがいるエルトア鉱山です」
「ここに居るんだ。……でもどこに居るんだろう?」
大きく際立った山がいくつも連なり、開拓されているからか植物はあまり生えていない。
樹木も殆どが枯れ果てて、あまり身を隠すような場所は無さそうだけど、見た感じ周囲にそれらしい魔物は見当たらない。
「周囲を見渡す限りは居ませんね。多分どこかの鉱山の中で眠っているんじゃないでしょうか?グランドスライムは夜行性らしいですし」
「そうなの?もしそうならちょっと探すのは手間取りそうだね。……あ!でも!」
(スカーレならその位置分かったりしない?)
《他の魔物に比べて強い反応があるので恐らくそれがグランドスライムでしょう。マップに表示して視覚化しますか?》
(それ、レアン君に見られても大丈夫かな?)
《あまり良いとは言えないでしょう。まだこの世界には普及していない技術ですから》
(なら色々聞かれるのも面倒だから、私の脳内にイメージで表示出来る?)
《可能です》
(ならそれでお願い)
《分かりました》
スカーレにそう頼むと、頭の中にこの周辺のマップが浮かび上がり、どこにグランドスライムが居るのかをマーキングで示してくれた。
この位置だと……もう少し先の鉱山の中だね。
「レアン君、グランドスライムがどこに居るのか分かったよ。この先にある鉱山の中みたい」
「ティルファさん探索系の魔法が使えるんですか!?」
「う、うん」
そういうことにしとこう。
「武闘家でありながら魔法も扱えるなんて……ティルファさんのポテンシャルの高さには感服するばかりです。僕なんて剣術を磨くのに必死で魔法なんてロクに扱えないですからね」
「人それぞれなんだから気にしない方がいいよ。魔法を後回しにしたからこそAランクになれるぐらいの剣術を身につけられたんだろうし」
「そっか。それもそうですよね。励まして頂いてありがとうございます!」
レアン君のこういう立ち直りが早いとこ、良いと思うなぁ。
「それじゃ行こっか。場所はそんなに離れてないし、ギブンとステラはここで待ってて。万一私達が夜まで戻らなかったり、他の魔物に襲われたりして身の危険を感じたら私達を置いてクティさんの所に帰ってね」
『『ヒヒーン!』』
二匹とも私の言葉を理解してくれたみたいだね。
何が起こるか分からないから伝える事は伝えれる時に言っておかないとね。
「よし。行こっか」
「はい!」
そうしてスカーレがマップに示してくれた先の鉱山の中に、グランドスライムは居た。
ただし、非常にデカイのが。
「これは……!?」
「これが、普通なの?」
饅頭のような形をした土色の巨体。目や口などのパーツは無く、生物というよりは物質のようにも見える。
今はどうやら眠っているようで、私達が近づいても動き出す気配は無い。
……それにしてもデカイなぁ。
5mくらいはありそうかも。
「こんなに大きい個体は初めて見ました。普通はこれの倍は小さいんですけど」
「ここが鉱山だから、鉱物の食べ過ぎで成長しちゃったとか?」
「そんな事があるんでしょうか?」
(あるの?)
《あります。明らかにこの個体は異常です。名付けるならグランドスライム・異常種といったところでしょうか?》
(そんなレベルなんだ。普通の個体との差はある?)
《体が大きくなった事により、一撃の攻撃力が上昇している事と、攻撃範囲が広がった事でしょうか?それ以外は恐らく変わりは無い筈です。ただ、過去に例が無い個体ですので断言は出来ません》
神様のお爺ちゃんでもまだ知らない個体なんだね。
んー……!
それなら腕がなるね!
まだ誰も倒した事の無い魔物か!
「まぁどうでもいいよそんな事。それよりさ、今ってかなりチャンスなんじゃない?眠ってて完全に無防備な所に私達の攻撃を受けたらひとたまりも無いと思うんだよね」
「……それもそうですね。大きさはともかく、出来る事なら楽に早く倒して街に戻りたいですし。ティルファさんの準備は大丈夫ですか?」
「勿論!私が3.2.1ってカウントダウンを口にするから、0!って言った所でグランドスライムを思いっきり殴り飛ばすからそれに合わせてレアン君も攻撃して」
「分かりました」
これだけの大きさの魔物だ。多分普通に殴るだけじゃそんなに強い衝撃は与えられない。
この手の敵相手に有効な技だと……うん。あれだね。
「それじゃ行くよ!3…2…1……」
「おいおい!マジで居やがったぜ!?なんだよこのデカさ!ヤベェよおい!」
「デカ!ヤバ!でもこれだけデカイなら討伐した時の報酬も期待出来そうだな……よっしゃ!」
「ごちゃごちゃ言って無いでさっさと攻撃しなさいよ!私達より先に変なのが2人も居るのよ!?あいつらに倒される前にやっちゃいなさいよノロマ!」
え!?何!?誰!?
「他の冒険者……!?マズイ!ティルファさん避けて!」
「あ?え?うん!」
「おらぁ行くぜ!俺様の槍術を喰らえ!シャイニングショット!」
「俺も負けてられるかっての!弓技!ヘビーアロー!」
「今回ぐらい私も手を貸してやろうかしらね。上級炎魔法……フレイムトルネード!」
私達の後に来た冒険者達が次々にグランドスライムに向かって攻撃を放つ。
けど、スカーレの説明じゃ彼らが放った攻撃はどれも有効では無い筈。
もしかして、相手が何か分かってない?
「いよっしゃ!どストライク!もろに喰らいやがったぜ!」
「ふん。この攻撃を受けて生きていられるわけがない」
「あんた達私に感謝しなさいよねー?久々にデッカい魔法使ったから疲れちゃったわ」
彼らの攻撃は間違いなくグランドスライムに直撃した。自信ありげに攻撃しただけあって、かなりの威力があったのは確かに感じられた。
けど、それだけ。
《ティルファ。来ます》
(分かった)
「レアン君。来るよ!構えて!」
「はい!」
「ぷっ!あいつら何やってんだよ!もうあのデカイ魔物は俺たちが倒したってーの!」
「少しでもいいとこ見せたいんでちゅかー?はははははっ!」
「まさかあれ、冒険者じゃないわよね?あんな見栄張りの冒険者なんていたら真っ先に死んじゃうでしょ!あはは!」
後ろの外野は無視。
今は前に集中しよう。
さっきとは状況が変わった。
彼らが放った攻撃が巻き起こした砂埃が収まると、完全に眠りから覚めたグランドスライムは私達を敵とみなし襲いかかってくる。
「お、おい!?無傷じゃないかあいつ!?」
「馬鹿な!?何故!?」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!?何なのよあれ!?なんで傷一つついてないのよ!?」
「レアン君!攻撃方法はさっきと同じで行くよ!でも、私がまだ攻撃のタイミングが掴めないからそれまで何とか逃げて!」
「分かりました!」
私達は二手に分かれて、グランドスライムを挟むような形で相対する。
が、そんな事はお構い無しと言った感じでグランドスライムは高く上に飛び跳ね、全体重を乗っけたプレスで私達を押し潰そうとしてくる。
「幻反鏡で跳ね返せるか……?やるだけやってみよう!幻反」
「ティルファさん!?」
「あの女潰されたぞ!?」
「なんで避けないだよあの馬鹿!?」
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!?」
『駄目かぁ……そう言えば幻反鏡を上から降ってくる敵に使った事って無かったね。横からならともかく、上からは駄目か。よし。次!』
【やり直しますか?[はい][いいえ]】
『やり直す!』
「ティルファさん!?ティルファさん!?」
「大丈夫だよレアン君。心配かけちゃったね」
「ティルファさん!良かった……!でもあの状況でどうやって?」
「説明は後!あいつ、かなり攻撃力が高いから気をつけて。出来るだけ1回も攻撃を喰らわないようにとにかく逃げ続けて!まともに戦っちゃ駄目な敵だよあれ!」
「分かりました!ティルファさんも無茶をなさらないように!」
そう言ってさっきと同じようにグランドスライムを挟むように相対する。
さっきと違うのは大きく距離を空けた所だ。
これだけ離れていればまた上に飛んで押し潰そうとしてきても簡単に避けられる。
逆に言えば、こっちから攻撃もしにくいって事だけど。
「あの女、生きてやがった!?」
「どんなトリックを使えばあれを避けれるんだ!?」
「ほっ……」
確かに潰し殺した手応えがあったのに、ピンピンしている私を見て不快に思ったのか、レアン君には目もくれず一直線に私に体当たりを仕掛けてくる。
「けど!横からの攻撃ならこっちのもんだよ!幻闘術・肆ノ型……幻反鏡!」
『………!!!?』
グランドスライムの巨体を跳ね返す事は出来た。けど、浅い。衝撃が全身に伝わりきってない。
(あの程度じゃ無効化出来てないんだよね?)
《普通の個体であれば申し分ありませんでしたが、この個体ではまだ足りません。もっと強い衝撃が必要です》
(分かった!)
なら、あれを使おう。
使用後は少しの間動けなくなるからあまり使いたくは無いんだけど、レアン君がすぐに倒してくれる事を信じる!
「レアン君!3…2…1…0!幻闘拳・陸式……破城拳崩!」
破城拳崩は一対一なら比類なき効果を発揮する一撃必殺の大技。
試した事は無いけれど、名前の通り当たりどころさえ良ければ城が1つ崩れ去ると言われている程。
単純な攻撃力なら私の手持ちの技の中でもトップ3に入るぐらいの技だ。
しかしその反動故、攻撃後に動けなくなるというデメリットはあるけど、レアン君ならやってくれるよね?
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!神速撃閃!千の煌めき!」
『……!!!??……!!!!!!」
「あっはは!流石!」
レアン君の攻撃を受けたグランドスライムは小さく、細かく切り刻まれて生き絶えた。
これが【千撃】と呼ばれたレアン君の実力。
私の目でも何回斬りつけたか全く数えられなかった。
こんな人がまだまだ沢山、この世界には居るんだね!
「ふぅ……!大丈夫ですか?ティルファさん」
「もうちょっと待って。さっきの技を使った後は一歩も動けないの」
「そうなんですね。それじゃ動けるまで待ちますね」
「うん。ありがとう」
「お、お、お前ら一体何なんだ!?」
「蒼い鎧に目にも止まらぬ速さで攻撃する剣士、それに全身が真っ赤な装備に包まれた素手で戦う女……まさかこいつら【千撃】のレアンと可憐なる【真紅】の女戦士か!?」
「エルトア最強の剣士とベヒモスベビーを単騎で倒した化け物!?嘘でしょ!?」
……結局この人達は一体何だったんだろう?
戦いにはロクに参加せず、後ろでただ騒いでたみたいだけど。
まぁいいか。何となく小者っぽいし、相手にするだけ時間の無駄ってやつだろう。
あー早く動けるようになってー!
完全なモブキャラは書いてて楽です。
次話にも少しだけ出てきます。




