早馬のギブンとストラ
「そう言えばレアン君?ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「なんでしょう?」
「さっきベヒモスベビーには斬撃によるダメージが殆ど与えられないから討伐隊への参加は気が重かったって言ってたよね?」
「ええ」
「でもさ?グランドスライムって流動体っていう能力を持ってて斬撃によるダメージが与えにくいのにどうして今回は乗り気なの?」
実はちょっと気になってたんだよね。
スカーレの説明の感じだとどっちも剣士には少し相手にしにくい敵だと思うのに、ベヒモスベビーとグランドスライムじゃレアン君の態度が全然違う。
「あぁその事をですか。理由は簡単です。グランドスライムの持つ流動体の能力は強い衝撃を与えてやると一時的に効果が無効化されるからです」
(そうなの?)
《はい。能力・流動体は身体が形を保ったまま液体のようになり、あらゆる斬撃による攻撃を効率的に本人の意思に関係なく自動で受け流す事で受けるダメージを最小限以下にする効果を持ちますが、強い衝撃が加わる事でその効果を無効化する事が出来ます》
(なるほど)
「それで私達か。先に私が拳でグランドスライムに強い衝撃を加えた上で能力を無効化し、その隙にレアン君が切りつけると」
「はい。グランドスライムの討伐においてこれ程理想的な複数人編成は無いと思います。僕達2人ならまず間違いなく簡単に討伐出来る筈です」
案外レグナントさんもそこら辺の事が分かってて私達を呼んだのかもね。
こうして話を聞いてみると確かに理想的な組み合わせではあるみたいだし。
「でも別に物理攻撃以外にも魔法でもダメージは与えられるんでしょ?」
「与えられるのは与えられますけど、有効な属性の魔法がかなり限られるんですよね。魔法の属性についてはご存知ですよね?」
(ごめん知らない!スカーレ説明お願い!)
《魔法の属性には[炎][水][氷][風][土][雷][光][闇][無][聖]の全部で10種類の属性があります》
(うわ。結構沢山ある)
《属性についての詳しい説明は今行いますか?グランドスライムに有効な属性だけお教えしましょうか?》
(有効な属性だけお願い!)
《分かりました。有効なのはこのうち[氷]と[光]と[闇]の3つだけです》
(結構少ない!?そんなもんなんだ)
《はい》
「一応は知ってるよ。魔法の属性は全部で10種類あって、うちグランドスライムに有効な属性は[氷]と[光]と[闇]の3つだけなんだよね?」
「流石です。あまり出会わない個体の弱点にまでご存知とは」
全部スカーレの受け売りなんだけどね。
「ティルファさんの仰る通り、グランドスライムに有効な属性はその3つだけなのですが、どの属性も習得が難しく、扱う事の出来る人が少ないというのももうご存知なんですよね?」
(そうなの?)
《はい。どの属性もどんな種族でも問題なく習得する事は出来ますが、[雷]と[氷]と[光]と[闇]の4種類については他の種類の属性に比べ習得が難しくなっています》
(そうなんだ。ありがとう)
「うん。なんとなくは」
「魔法による攻撃であれば流動体の能力を無視してダメージを与えられるのですが、その属性の魔法を扱う事の出来る冒険者は皆んな他の依頼に出払ってて今のエルトアには居ないんです」
となると基本高ランクの冒険者が習得してるって事になるのかな?
まぁ属性からして色々応用は効きそうな感じはあるもんね。
「だから困ってたんです。僕1人じゃグランドスライムは倒せませんし、かと言って優秀な魔法使いも居ない。当然流動体を無効に出来る程の衝撃を与えられる冒険者も居ない。連合支部長も頭を抱えてましたよ。早く依頼を達成して戻ってきてくれって」
「そこに来ての私の登場か」
「はい。ベヒモスベビーを素手で倒すような方です。今回の依頼を頼むにはうってつけだったのだと思いますよ」
まぁそうだろうねぇ。
もし私が同じ立場なら絶対頼むだろうし。
「そっかぁ。うん。何となくの事情は察せたよ。後もう一ついいかな?」
「何でしょう?」
「レアン君が呼ばれてた【千撃】って何を現しているの?」
「あぁあれですか?僕としては大して意識して無かったんですけど、剣術を極めていくうちに自然と一度に繰り出せる斬撃の数が増えていって、その様子を見た他の冒険者が僕の事をそう呼ぶうちにその名が広まったんです」
千撃っていうぐらいだからかなりの速度で攻撃出来るのかな?
「それ、今見せてもらう事は出来そう?」
「んー……出来れば街の外でもいいですか?割と広範囲の攻撃なんで無意味に被害を出したくないんですよ」
「そういう事なら」
「ありがとうございます。ティルファさんには僕の実力を知っておいてもらいたいですからね。後で必ずお見せします」
「ふふ。楽しみにしておくね」
「は、はい!」
(ちょっと聞いてみるんだけどさ、能力に千撃ってのはあるの?)
《ありません。レアン様が自力で身につけた剣技です》
(そっか。それならやっぱり楽しみだ)
能力じゃなく、自力の努力で身につけた力。
予め入力された力が自分の実力になる私達じゃ分からない強さがあるのは凄い良いことだと思う。
「レアン。ティルファ。お待たせ」
「あれ?クティさん?依頼の手続きを任されてる筈では?」
「任されてるけど、グランドスライムの討伐をあなた達2人が受けてくれるって話だったから後回しにしちゃったわ。難易度の高い依頼だったからちゃんと送ってあげたかったし。それにあんなのすぐに出来る仕事だからね。それよりもほら。この子達を一緒に連れて行ってやってよ」
そう言ってクティさんは連れてきた焦げ茶色と灰色の二匹の馬を私達の前に向かわせる。
「焦げ茶の子がギブンで、灰色の子がストラ。二匹とも私が育てた自慢の馬なのよ」
「えっ!この馬クティさんが育てたんですか!?」
「えぇそうよ。気に入ってもらえたかしら?」
がっちりした体に艶のある毛並み。人が往来する街の入口に来ても全然動揺しているようには見えないし、凄い頼もしそうな馬だ。
これ程の馬を育てるなんてクティさんって何者?
「気に入るも何も、こんな立派な馬をお借りしてもいいんですか?」
「勿論!1番早い馬を用意してくれって連合支部長に頼まれたからね。連合支部で育ててる馬よりは断然に早い自信があるよ。何たって私の自慢の子達だからね」
「そんな大切な馬を……本当にいいんですか?危険が伴う場所に私達は向かうのに」
「大丈夫よ。レアンの剣士としての腕と、ティルファの武術家としての腕を信頼しているから。だから、何も気にせず行ってきて。それにほら。毎晩地鳴りが続いて二匹とも怯えて寝不足になりがちだから成長にも影響するのよ。私としても早く倒しちゃって欲しいし。ね?」
「そう言って下さるのであれば」
「よし!レアンも頑張ってね。ティルファに良いとこばかり持ってかれちゃ駄目だよ?」
「僕もいっぱしの男です。そんな無様な姿は見せませんよ!」
「ふふ。その意気よ。それじゃ2人とも、頑張ってね!また無事で帰ってくるのを待ってるから!」
「はい!ありがとうございます!」
「必ず無事に帰ってきます!」
クティさんに見送られ、私はギブンに。レアン君はストラに乗ってエルトアの街を後にした。
良い元気をもらったな。
……よし!ちゃっちゃと倒して早く街に戻ろう!
ちょっとの間だけどよろしくね。ギブン。ストラ。
更新が遅くなってしまい申し訳ありません……
次回でグランドスライムとの戦闘が始まります。
一応1話完結の予定です。




