レアンが呼ばれた理由
「ティルファ殿はこの街に来たばかりで恐らくまだ知らないだろうが、ここ最近この街はあるものに悩まされているんだ」
「あるもの、と申しますと?」
「……地鳴りだ」
「地鳴り?」
「あぁ。それも毎晩毎晩、家が震えて棚に置いてある物が落ちる程のものだ」
そんなに!?
ちょっとした地震並みの揺れがあるのかな?
「一応、その原因は突き止めているのだが……如何せん原因が原因だけに中々対処が出来なくて困り果てていたのだ」
「その原因とは一体何なのでしょうか?」
「この街を南にずっと進んだ先にある鉱山に住みついているスライム種のグランドスライムという魔物だ」
「グランドスライム?」
(って何?)
《スライムの変異種、サンドスライムが進化した魔物です。元々スライム種が持っている打撃無効の能力に加え、サンドスライムが習得する流動体の能力も持っている為に斬撃によるダメージも非常に与えにくくなっており、その上グランドスライムは体が非常に大きくその巨体から繰り出される体当たりやプレスはその余波で地震を発生させる程に強力です。これらの事から聖邪連合が定める冒険者の適正討伐ランクはAランク以上となっています》
うん。長い説明をどうもありがとう。
でも、打撃無効と斬撃がほぼ無効のスライムかぁ。
普通に戦うならかなり厄介な相手になりそう。
「本来ならAランク以上の冒険者が数人集まって集団で討伐するような魔物なんだが、タイミングの悪い事に今のエルトアにはAランク以上の冒険者の殆どが長期の滞在を必要とする依頼を受けていて暫く戻ってこないんだ」
レアン君もそんな事言ってたっけ。Aランク以上の冒険者は出払っていてベヒモスベビーの討伐が凄い厳しいものになるかも知れなかったって。
「だが幸いにもまだ2人、Aランクの冒険者がエルトアの街に滞在している。1人は言わずもがな。ティルファ殿だ。正式な手続きは後日になるが実力はAランク以上。戦力としては申し分ない」
もう1人はどんな人なんだろう?
まさかレグナントさん本人?
「もう1人はレアン。【千撃】の名前を冠されたエルトアきっての冒険者だ」
「え!?レアン君Aランクの冒険者なの!?」
「はは……ティルファさんを前にすると凄い名前負けをしている感じがしますが僕もAランクなんです」
「……あれ?でもAランクって事はそれなりの実力者なんだよね?どうしてあんなにベヒモスベビーと戦う事に弱気になってたの?」
命の恩人って感謝までしてくれたぐらいだし。
「その、加えてお恥ずかしい話なんですが、僕は剣士として剣術1つでここまで上り詰めてきたんです。ですがベヒモスベビーには斬撃によるダメージが与えにくく、僕とは完全に相性が最悪の魔獣だったので……」
あ、なるほど。
そりゃダメージが与えられない敵と戦うのはかなりの覚悟がいるよね。
こっちからはダメージが与えられず、相手からは一撃で致命傷を負うような攻撃を何度も繰り出されるんだから。
私も一回やられたからよく分かる。
「だが、剣による攻撃が有効な敵ならレアンの実力は実質Sランクにも相当する。相性さえ完璧ならエルトアの冒険者でレアンの右に出る者は居ない」
「褒め過ぎです連合支部長!それに今はティルファさんが居るんですから!」
「はっはっは!レアンもティルファ殿と同じでその謙虚な性格は失って欲しくないものだな!はっはっは!」
「笑って誤魔化さないで下さいよ!」
「はっはっは!」
なるほどねぇ……
レアン君Aランクの冒険者だったんだ。
それであの時、私達が連合支部に入った時ざわざわしてたのか。
ベヒモスベビーを倒した女と実質エルトア最強の冒険者が揃って入ってきたなら注目を集めるだろうしね。
「まぁそんな訳で現状エルトアの最高戦力とも言える人材がここに2人揃っていて、グランドスライムを討伐するには人数的には心許ないが実力を考えれば難なくこなしてくれるだろうと俺は考えている。ティルファ殿、レアン。報酬は弾む。どうかグランドスライム討伐の依頼を受けてもらえないだろうか?」
レグナントさんが頭を下げて私達にお願いをする。
仮にも連合支部長と呼ばれる程の人物がここまで頭を下げて頼み込んできているんだ。
私の答えは1つしかない。でも、レアン君はどうだろう?
「私はその依頼、受けたいと思います。でも、レアン君はどう?私は1人居るだけじゃやっぱり心許ないかな?」
「いえ!そんな事はありません!グランドスライムの特性上、僕1人では絶対に敵う事の無い魔物ですが、ティルファさんの力添えがあれば必ず勝てると思っています。だから、僕なんかで良ければ一緒に依頼を受けて下さいませんか?」
なら、決まりだね!
「分かりました。その依頼、受けさせて下さい。私達2人で力を合わせて必ず倒してきてみせます」
「【千撃】の名にかけて、期待に応えてみせます」
「おぉそうか!やってくれるか!この件は別段急を要する訳ではないが、街の者も毎晩響く地鳴りに怯えて心休まっていない者も多い。出来ればなるべく早くに倒しに行ってくれるとありがたい。勿論相手が相手だけに準備の時間は充分にとってもらって構わないからな」
「だそうだけどレアン君はいつ頃出るつもりなのかな?私は別に準備するものなんて無いからレアン君に合わせるよ」
「そうですか……グランドスライムが居る鉱山も馬車を使えば1時間もしないうちに辿り着けるから食糧とかはそこまで必要ないし……馬さえ用意してもらえば僕もいつでも出れます」
なんかレアン君、頼もしい!
「ほ、本当か?別に焦らなくてもいいんだぞ?」
「グランドスライムは一度倒した事がありますし、長期の移動では無いので食糧も大して必要になりませんので僕には鎧と剣さえあれば大丈夫です。ティルファさんもすぐに出れると言ってますし」
「いやはや……頼もしい限りだよ。分かった。なら1番早い馬を用意させよう」
「お願いします」
「依頼の手続きはクティに任せるから、馬の準備が出来るまで街の入口付近で待っていてくれ」
「「分かりました」」
「急な話で申し訳ないが、よろしく頼む」
そうして連合支部を出ると、私達は街の入口で馬が来るのを待つことにした。




