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輝石と煌石

「……よし。もう大丈夫!ありがとうねレアン君」


「いえ。思いの外動けない時間が長かったので少し驚きはしましたが、あの威力を考えると妥当なデメリットなのかなって。特に痛みとか怪我は無いんですよね?」


「勿論。動けなくなるだけだよ」


「良かった」



 ただレアン君の言う通り、私自身動けない時間が長過ぎて驚きはしてるんだよね。

 ゲームの世界だとほんの数秒動けなくなる程度だったのに、こっちでは体感だけど30分はまともに動く事が出来なくなってしまった。

 基本的な攻撃方法や威力は元々のと大差はないのかも知れないけど、攻撃後に発生するメリット・デメリットのある効果には違いがあるのかも。

 改めて技の効果を調べてみないといざと言う時に本当に困るかも知れないな。

 どこかで試しておかないと!



「それにしてもレアン君……凄いね。これ」


「はは。ティルファさんのお力添えがあったからこそです。それに、能力スキルが優れているだけでグランドスライムの守備力自体はかなり低いのも大きいですね」



 今、私達の目の前に広がっているのはグランドスライムの残骸とも呼べるバラバラになった黄土色のブロック状の塊。

 サイズは様々だけど、殆どが角ばった形で切り刻まれてちょっとした山のように積み重なっている。



「ただ……自分でやっといて何ですけど、この残骸の中から輝石きせきを探し出すのは手間がかかりそうですね。僕は向こうから探していくのでティルファさんはここから探してみて下さい」


「あ、うん。分かった」




輝石きせきって何の事?)


 《全ての魔物や獣の体内で生成される宝石の事です。個体の種類によって形や純度などに違いがあり、高ランクの個体程価値の高い輝石きせきを持っています。また、この輝石はその個体を討伐したという明確な証拠にもなる為持ち帰る事が推奨されています》


(別に持って帰らなくてもいいの?)


 《義務ではありませんが、持ち帰った方がスムーズに依頼達成などの手続きが行える為に推奨されているだけです。なので必ずしも持って帰らなくてはいけない、という訳ではありません》


(仮にもし、何らかの理由です討伐は出来たけど持って帰る事が不可能だったら場合、どうやって確認する事になるの?)


 《依頼を出した連合支部ギルド聖邪連合ユニオンなどから調査隊が派遣され、そこからの報告を受けてやっと正式に討伐したと認識されます》


(なるほど。それは確かに面倒そうだね。でもこの輝石きせきってただ討伐したよっていう確認の為だけのものなの?)


 《いえ。本来の用途は装飾品です。輝石きせきは鉱山から採掘される宝石よりも価値の高い物質として扱われ、高ランクの魔物・獣から取れる輝石きせきがあしらわれてた武具やアクセサリーなどは価値が倍以上に跳ね上がります》


(そんなになんだ!じゃあこれを集めて財を成す人も居たりするの?)


 《輝石きせきも物によってピンキリですのでそのような方はごく少数です。低ランクの魔物・獣から取れた輝石きせきは二束三文程度の値段でしか取引されませんので。なのでどうしても輝石きせきを売ったお金で財を為そうとするのであれば必然的に高ランクの冒険者になります》


(んー……簡単にお金儲け出来る気がしたんだけどそうはいかないか)


 《ティルファなら問題無いのでは?》


(そう?)


 《ティルファ達が倒したグランドスライムの輝石きせきは平均市場価格が500万ゴールドを超えています。グランドスライムに限らず、Aランク相当の魔物や獣が有する輝石きせきの殆どが数百万ゴールド取引されているのであの程度の相手に苦戦する事が無いようであれば輝石きせきを集める事で財を為す事も難しくないと思われます》


(そっか。言われてみればそうなのかな?ちょっと苦戦したけど多分あのグランドスライムが特殊なだけだろうし。……あれ?でも待って。魔物と獣に輝石きせきがあるなら魔獣と神獣にも輝石きせきがあるの?)


 《魔獣と神獣には輝石きせきは存在しません。ですが、それよりも遥かに価値のある煌石こうせきというものが存在します》


(結構な値段がするの?)


 《少なくとも1億ゴールドはします。過去の最高取引額は28億4000万ゴールドです》


(待って。桁が跳ね上がり過ぎて今一つピンとこない。なんでそんなに高額なの?)


 《単純に魔獣や神獣を倒せる者が居ない為に煌石こうせきそのものに希少性があること。輝石きせきを遥かに上回る純度と硬度を持つ為に装飾品としての価値があること。何より煌石こうせきはそれに魔力を通わせる事でその煌石こうせきを採取した魔獣・神獣の力の一部を使う事が出来るからです》


(そうなの!?)


 《それ故に高額な値段がつけられているのです。一部とは言え、魔獣や神獣の力を使えるとなればAランクの冒険者になるくらいは余裕で、Sランクも努力次第では無理なく登りつめる事が可能ですから》


(はー……それは確かに納得の理由だね。なら、もしかして私が倒したベヒモスベビーの体内にも煌石こうせきがあったの?)


 《あの個体はまだ幼体でしたので不完全な煌石こうせきしか取れません。希少価値こそありますが、脆過ぎて形を整える前に崩れてしまうので装飾品としての価値は殆どありませんし、どれだけ魔力を通わせても力の一部を使う事も出来ないので付加価値も付きません。なので良くて3000万ゴールド、悪くて1000万ゴールドにいくかいかないかでしょう》


(あ、そんなもんなんだ。ちょっと安心したよ)


 《それでも現存する煌石こうせきは23個とかなり少ないのでそういった価値のある物を集めるコレクターからしたら垂涎物の品でしょうけど》


(23個か……本当に少ないんだね)


 《魔獣や神獣の討伐自体が難しいので。それに23個のうち18個は老衰や魔獣・神獣同士の争いで自然に死んだ個体から採取されたものなので本当に実力で勝ち得たものは5個しかありません。因みにそれ以外の18個の煌石こうせきは国宝として国が管理し、有事の際にその国で最も優秀な力を持つ者に貸与されるという法律で守られ個人で所有はされていません》


(あ、そうなんだ。まぁでもそんな扱いにもなるのも当然か。それじゃ運良く遺骸から採取出来た煌石こうせきが取引されるのは国が管理する前の話になるの?)


 《はい。正確には普通の一般人や冒険者がたまたま見つけた煌石こうせきを国が買い取ったという方が正しいでしょう。なので基本的に市場に出回る事はまずあり得ません》


(まぁそうだろうね。それだけ価値のあるものなんだ。個人で売買するより国に買い取ってもらった方が高くつきそうだもんね)


 《その通りです。後、余談ではありますがこの世界では煌石こうせきの所有数によって国力が決定する傾向にあります》


(ん?どういう事?)


 《簡単に言えば煌石こうせきを国宝として所持している数が多い国程、所持している数が少ない国に対して有利に政治や貿易が行えるという事です》


(なんでそんな事になるの?)


 《煌石こうせきを扱う者が例え何の力の無い一般人でも神獣・魔獣クラスの戦力になり得るからです。

 仮にもし煌石こうせきの少ない国が戦争を起こして自分達の国が有利になるように他国を屈服させようとしても、当然ながら煌石こうせきが少ない国より多い国の方が戦力的に勝るので戦争を起こす前から既に勝敗が決定しているのと同義になります。それ故に所持数の少ない国は渋々所持数の多い国の言う事を聞くしかないという風潮が根付いています》


(でも、そんな事をしてたら不平不満は溜まっていく一方でいつかは限界がくるんじゃないの?)


 《確かにその通りかも知れません。ですが、そうは言ってもどの国も理不尽な要求を常に働かせる訳でも無いので実際はそこまでの負担はありません。せいぜいちょっと損をしたな、といった程度のものです》


(あ、そんなもんなんだ)


 《はい。それに各国の王族の取り決めにより、有事の際には煌石こうせきの所持数が多い国は煌石こうせきの所持数の少ない国を積極的に支援するように定められているので必ずしもどちらかが一方的に損をし続けるということも無いので国民自体もその風潮には納得しています》


(自分達が平和に生き抜く為に色々やってるんだね。この手の世界観のゲームだと大体自国が良ければそれで良しみたいな所が多かったからここにそんな感じなのかと思ってたよ)


 《今のこの世界は数十億人の各種族の歴史と想いが積み重なって為し得ているものですから。悪い言い方かもしれませんがほんの数十人程度の人間が思想・考案・開発したゲームの世界とはレベルが違いますので》


(あっはは!スカーレも結構言うね。でも確かにその通りかも。私達の世界ゲームは私達の神様プログラマーが設定した不変のものだもんね。時代の流れと共に変化するこの世界とは比べようもないか)


 《はい》


(んー!なんか改めてここに来て良かったなって思うようになったよ。やっぱりあっちの世界は全てが決まり過ぎていてここより断然に面白さが少ないし自由も無い。未来が全く決まっていないこの世界は凄く心地が良いよ)


 《ふふ。そんな事を思うのはティルファだけですよ。どんな者であれ、未来が分からないという事には少なからず不安を覚えるものですから》


(いいんじゃない?私は私。彼らは彼らって事でさ)


 《ですね》


(この世界の事を知るたびに、この世界の事を好きになっていく。もっともっと沢山私に教えてね。スカーレ)


 《勿論です。その為に私がいるのですから》


(あっはは)





「あっ!あった!ありましたよティルファさん!輝石きせきが見つかりました!」



 あっ!いけない!スカーレとの会話に夢中で全然探して無かった!ごめんレアン君!



「本当!?ごめんねレアン君!私殆ど探してなかった……」


「いいんですよ。さっきの技の反動がまだ残ってるんでしょうし、僕はまだまだ疲れてないのでこれくらい朝飯前です」


「ありがとう……」



 うぅ……レアン君の優しさが痛い……!



「それにしても……大きいですね。何度かグランドスライムの輝石きせきは見たことがありますが、ここまでの大きさのものは初めて見ましたよ」


「そうなの?私は初めて見たからあまりよく分からないけど」



 レアン君が見つけてくれた輝石きせきはグランドスライムと同じ透き通るような黄土色をしていて、人の頭ぐらいの大きさをしている。





(これってグランドスライムが異常種だったから?)


 《恐らくそうだと思われます》


(ん。ありがと)




「まぁでも小さいよりはいいんじゃない?輝石きせきって大きい方が価値が高いんでしょ?」


「それはそうですけど、持って帰るのが大変だなと思いまして。大きさ同様重さもかなりありますし」


「ん?それなら私が持って帰るよ?能力スキルに物質を別の空間に保存出来るやつがあるからさ」


「ティルファさん、万能倉庫ストレージ能力スキルを持ってられるんですね。僕もその能力スキルを会得しようと頑張ってるんですけど中々会得出来ないんですよね。やっぱりティルファさんは凄いなぁ」





万能倉庫ストレージって何?)


 《ティルファの持つ【袋】の下位互換にあたる能力スキルです。保存できる量が【袋】より少なく、保存出来る物の種類も制限されているものが多く、加えて保存した物の時間経過は止まる事なく普通に進んで行くので食料や植物の保存にはあまり適さないというデメリットがあります》


(そんな能力スキルもあるんだ。結構珍しい能力スキルなの?)


 《冒険者であれば比較的持っている方は多いです。ですが、ティルファの持つ【袋】はローグナー様が特別に創り上げたオリジナルの能力スキルなので口外する事はおすすめしません》


(おっと。そうなんだ。なら万能倉庫ストレージ能力スキルを持ってるって誤魔化すのか無難そうだね)


 《はい》





「うん。だからそこはあんまり深く考えなくても大丈夫だよ」


「分かりました!なら、お願いしますね」


「うん!」


「ちょっと待ったぁぁぁぁ!」


「おうおうおうおう!」



 ん?



「てめーら何勝手に輝石きせきを持ち出そうとしてくれてんだあぁん?」


「あの魔物は確かにお前達が倒したがその前に俺たちが攻撃してたよなぁ?あれだけの攻撃を食らって弱ってなかった訳がねぇよなぁ?」


「ちゃっかり良いとこ取りしてオマケに輝石きせきを持って帰るなんて舐めた真似、許される訳がねぇよなぁ?んー?」


「分かったらそれ、置いてけや。おう」


「ちょ、ちょっと2人とも!やめなよ!」


「うるせぇ!あんなデカイ輝石きせき、横取りされてたまるか!売れば結構な額になるだろうが!」


「目の前に大金を生む金の卵があるってのに見過ごせってか!おい!」



 あ、なんか凄い面倒臭そうな雰囲気になってきた。

 でも実際この人達の攻撃は通じてなかった訳だしそんないちゃもんをつけられるいわれは無いんだけどなぁ。

 どうしよう?このままさっさと帰っちゃう?



「そうじゃないけど、どう考えてもあれは私達の手に負える魔物じゃ無かったって!みっともないから止めよ?ね?」


「黙れこの役立たずの魔法使いが!」


「きゃぁ!?」


「態度の割にはデカイ魔法1発撃っただけですぐに使いものにならなくなるしよ!今更偽善ぶってんじゃねぇよ!」


「酷い……!」



 前言撤回。このまま帰るなんて事出来ない。

 無抵抗の女性に暴力を振るった挙句、暴言まで吐くなんて同じ女として許せない。



「このっ……!」


「待ってレアン君。私にやらせて」


「ティルファさん……?」


「ねぇ」


「あぁ?んだおい。輝石きせき、渡す気になったのか?」


「えぇ。あなた達を見ていたら渡した方が得策なのかなと思いまして」


「ははっ!それでいいんだよ!素直でいいじゃねぇか!」


「ビビったか?ビビったんだよなぁ俺達によぉ!ハハハハハハハハっ!」



 低俗だなぁこの人達。

 少し、懲らしめてやらないと。



「ただし」


「あぁ?」


「お?」


「私に勝てたらですけどね!幻闘拳・壱式……拳撃連牙けんげきれんが!」


「はぶっ!?」


「てぇふっ!?」



 拳撃連牙けんげきれんがは相手に接近してただ連続で拳で殴りつけるだけの技。

 魔獣や魔物相手ならともかく、人間相手ならこれだけの技でも充分通用する筈。

 事実、男2人は後ろの方に吹っ飛んでいき、気絶してしまった。

 これでよしっと。



「あわわわわわ……!?」


「ティルファさん……いえ。なんでもないです。わざわざありがとうございました」


「ううん。同じ女として男2人に虐げられているのを見てるのは嫌だったから」


「ティルファさんも人が良いですね。……それはそうと、魔法使いのあなた」


「は、はい!?」


「もうあんな奴らとパーティを組むのはやめるのをオススメします」


「わ、分かりました!調子に乗って本当にごめんなさい!」


「分かってくれればいいんです。さ。ティルファさん。帰りましょう」


「あ、うん」



 レアン君、結構大人しそうなイメージでいたけど案外怒るときは怒るような人なのかな?

 メリハリがついているっていうかさ。

 あんまり怒らせないようにしないと!


 そうして私達は輝石を回収し、外で待たせていたギブンとストラに乗せて貰ってエルトアまで帰ることにした。

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