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報酬の扱いと詳しい内容

「よし。それじゃ何から話そうかな……とりあえず自己紹介からやっておくか。俺はこの連合支部ギルド連合支部長ギルドマスターをしているレグナントだ」


「私は流浪の……冒険者志望のティルファです」



 流浪の旅人はもういい。

 なんかもう一々言うの面倒くさい。



「可憐なる【真紅】の女戦士殿の名はティルファと言うのか。良い名だ。とりあえず、よろしく頼む」


「はい。こちらこそ」



 連合支部長ギルドマスターのレグナントさん、あの時街の入口で指揮を取っていた人に間違いなさそうだ。

 それにしても……あの時は遠目にしか見なかったから漠然としたイメージでしか無かったけど、今こうして目の前で見ると凄い筋骨隆々な体をしている。

 ガタイの良さだけで言えばルティメイトさんとかなり良い勝負をしそう。



「それでティルファ殿。今回はあなたがベヒモスベビーをいち早く倒してくれたお陰で余計な犠牲を出さず、かつ貴重な魔獣の幼体の死骸を確保する事が出来た。本当助かった。ありがとう」



 そう言って深々と頭を下げてお礼を言われる。

 ……そろそろなんかこの光景、デジャヴだね。



「いえ。たまたま私が相手にできるだけの敵だっただけです。そんなに畏まらず、普通にしていて下さい」


「ティルファ殿は謙虚だな。長く冒険者を見てきたが、力のある冒険者程高慢な性格になりやすいものだからもしかするとティルファ殿もそうなのかと思ったが……いやはや。他の冒険者にも見習ってもらいたいものだ」


「そんな大袈裟ですよ」


「はっは!そんな事は無いが、ティルファ殿にはそのまま冒険者としてあるべき姿を他の連中に見せつけてやって欲しいな」


「……努力します」




(ねぇスカーレ?そんなにこの世界の冒険者って高慢な人が多いの?)


 《全員が全員とは言いませんが、Aランク以上の冒険者は10人に1人は該当します。Aランク以下の冒険者も自分より下のランクの冒険者には高慢な性格・態度で接する事が多いようです》


(あ、まぁまぁ居るんだね)


 《はい》




「それで少し話は変わるが、もし良ければベヒモスベビーを倒した時の状況と倒した方法を教えてもらえないだろうか?」



 これが本題なのかな?

 別に隠す事もないし、ありのままを話そう。



「私が街外れの草原で散策をしていた時に、逃げろ!と注意を促す声が聞こえたんです。それでその声の方向を向くとトリエンタさんがベヒモスベビーに追いかけられていて、少しの間一緒に逃げた後、幻反鏡リフレクションを使って倒しました」


幻反鏡リフレクション?それは何かの道具か?それとも魔法?能力スキル?」


「えっと、なんて説明すればいいんでしょうか?私の扱う格闘術……による技?でしょうか?」


「技……?それはMPもSPも使わない完全な肉弾戦による技と言う事か?」


「いえ、SPを使用する技です」


「なるほど。それでその幻反鏡リフレクションという技は一体どのようなものなんだ?」


「単純に相手の力をそのまま受け流しながら、そっくりそのまま相手の力を利用して反撃するというカウンターです」


「はー……そんな戦い方があるのか。いや、でも確かに言われてみれば過去の文献に似たような戦闘方法でベヒモスベビーを討伐したという記録があったのを思い出したよ。その人はかなりの武術の達人だったそうだがな」



 あ、私と同じような武術……というか格闘術が使える人が居たんだ。もしその人が生きているのならいつか会ってみたいなぁ。



「そうなんですね」


「あぁ。ならもしかするとティルファ殿もそれなりに武術を極めているのか?」





(極めているって言えば、極めているのかな?

 私の場合既にそう[設定]されていただけだから今一つピンとこないんだけど、どう答えるのが正しいの?)


 《極めているで問題ありません。元々先天的な素質を持って生まれたの と同義ですから》


 あ、そうなるのね。了解。





「そうですね。一部の格闘術を、極めています」


「格闘術……?まぁいい。その武術の名前を聞いても?」


幻闘拳げんとうけんと言います」



一応、幻闘術げんとうじゅつも使えるけどそっちは別に話さなくてもいいだろう。



幻闘拳げんとうけん……聞いたことの無い流派の武術だが、ベヒモスベビーを倒せるくらいなんだ。さぞ優れた武術なのだろうな」




(ねぇスカーレ?この世界では幻闘拳げんとうけんは格闘術に分類されるの?武術に分類されるの?なんとなく格闘術って言葉が通じて無い気がするんだけど)


 《そもそも格闘術と言う言葉がありません。対人・対獣問わず、己の体のみで闘う技術は全て武術として一括りにされています。武術には様々な流派があり、およそ23の流派が現在確認されています》


(そんなにあるんだ!……武術だけの世界大会とか無いかな。あれば喜んで参加するのに)


 《あります》


(本当に!?後でその話詳しくね!)


 《分かりました》





「その幻闘拳げんとうけんを扱う事が出来るのはティルファ殿以外にもいるのか?」


「多分、居ないんじゃないでしょうか?私のオリジナルの武術ですし」


「その若さで武術を創り上げ、実践レベルにまで高めたのか!?……いやはや。ティルファ殿には驚かされるばかりだ」





(Frontierのキャラなら居ない事もないけど、この世界じゃ似た武術はあっても幻闘拳げんとうけんそのものはないだろうからねぇ……適当にぼかした方が良かったかな?)


 《別にいいのでは?どの流派もルーツを辿れば1人の天才が独自に編み出したものですし。23の流派が24になっただけです》


(なんか結構凄い事のような気もするけどまぁいっか)





「弟子はいるのか?」


「いません」


「弟子を取る気は?」


「今の所は特にありません」


「そうか……それは残念だ」



 幻闘拳が普通の人にも習得できる武術なのかは分からないけど、今は色々やりたい事があるし、やらなくちゃならない事もある。

 いつかは弟子を取って幻闘拳を受け継いでくれる人が居たらそれは凄い嬉しい事だけど、もっと余裕が出来るまではお預けかな。



「もしまた弟子をとる気になったら私に声をかけてくれ。素質のありそうな奴をいくらか紹介するから」


「分かりました。その時はよろしくお願いします」


「あぁ。……それで次の話に入りたいのだか良いだろうか?」


「大丈夫です」


「ありがとう。次の話なのだが、ティルファ殿はどうやらまだ聖邪連合ユニオンに冒険者として登用されていないようだが間違いないだろうか?」


「間違いありません」


「だとすると……本来であれば今回のベヒモスベビーの討伐はエルトア連合支部ギルドから冒険者に向けて強制的な参加を求められた緊急の依頼クエストだったのだ」



 そう言えばレアン君もそんな事言ってたっけ。



「しかし、その依頼クエストを完遂したのは冒険者では無いティルファ殿であった為、規則により支払うべき報酬と討伐した魔獣の所有権がエルトア連合支部ギルドに帰属してしまった事をまずは了承して欲しい」



 あ、そうなんだ。

 というかクローディスさんから領主として褒賞を貰えるって話しだったのに、連合支部ギルドからも貰える予定だったんだ。

 やっぱり冒険者にはならなくちゃいけないね。



「が、規則とは言えこれだけの功績を残してくれた人を前にそんな不義理な事はしたくない。だから、連合支部長ギルドマスターの権限によってティルファ殿を一切の試験を免除し、冒険者として登用し、かつランクをAに、また本来の報酬金と同等の1500万ゴールドをこの俺のポケットマネーから支払わせてもらうからそれらを受け取って欲しい」


「そんな!悪いですよ!」



 それは流石に申し訳ないよ!?



「いや、そうでもしないと俺の気がすまん。聖邪連合ユニオン本部にも了承は得てある。その代わりと言ってはなんだが、ベヒモスベビーの遺骸の所有権については一切を放棄し、後々遺骸に関する事でいちゃもんをつけないで欲しい」


「そう、仰ってくれるなら……?」




(なんでレグナントさんはこんなにベヒモスベビーの遺骸に拘っているの?)


 《如何なる個体の魔獣・神獣であってもその遺骸には計り知れない価値があります。主に肉体の構造、生態の調査、武具や道具としての素材利用などです。そして、魔獣・神獣の遺骸自体滅多に手に入るものでは無いので、それを研究する事で次に同じ魔獣・神獣と相対する時の対策を見つける事にも繋がり結果として多くの命を救う事にもなるからです》


(でも、それなら最初からそう言って魔獣とか神獣の遺骸は聖邪連合ユニオンに所有権が発生するって規則?かなんかで決めとけばいいんじゃないの?)


 《当初はそのようになっていたようです。ですが、ある日冒険者達がその遺骸の利用価値に気づき、莫大な利益を生み出す遺骸を無償で取り上げるやり方に不満を抱き、大規模な暴動が起こった為に倒した魔獣・神獣の所有権はその冒険者に移り、そこから聖邪連合ユニオンが買い上げる、という形になったのです》


(はー……そんな事があったんだ)


 《はい。ですので中にはとんでもない額で遺骸を売りつけ、生涯そのお金で暮らしたという冒険者も過去にいくつか事例があります》


(生涯!?そんなに!?)


 《魔獣・神獣の遺骸は誰にとっても喉から手が出る程欲しいものですから。聖邪連合ユニオンもその要求に従うしかないんです》


(なんか……それだけの力があるんならそんなケチくさい事しなくてもいいのになって思うよね)


 《しょうがありません。人族・魔族・亜人族。どの種族も本能的に贅沢をしたいという気持ちが勝ってしまうのでしょう》


(私にはよく分からないけどね)


 《ティルファはデータですから》


(そんなもんか)


 《はい》




 まぁ、そういう事なら別にいいかなー

 贅沢とかは大して興味無いし。

 お金はともかく冒険者に即登用してくれるっていうんならその方がいいしね。



「少し、申し訳ない気はしますがその条件で言いと仰って下さるのならお受け致します。ベヒモスベビーの遺骸は好きに使って下さい。特に関与するつもりもありませんので」


「本当か!?はー……助かったよ。あれでも駄々をこねられたり、所有権は私にある!って言って暴れられでもしたら対処が大変だったからな。本当、ティルファ殿には助けられる」



 そこまで非常識でも無いしね。

 でもこの言い方だと前にそんな経験してるんだろうなぁ……



「まぁこれで安心して作業に取り掛かれる。冒険者登用の手続きと報酬金は後日行われるクローディスからの恩賞授与の時にまとめてもいいか?」


「はい。大丈夫です」


「悪いな。どっちも準備に手間がかかるものだから今すぐにって事が出来ないんだ。ありがとう」



 まぁ結構バタバタしてるみたいだし、気にしない気にしない。



「……さて。それで最後の話なんだが、これはレアン。君にも聞いて欲しい話なんだ」


「一応、なんとなくの予想は出来てます」


「だろうな」



 ん?なんだろう?

 何の話をしてるの?

 少し気を引き締めて聞いた方が良さそうな話だ。

 よく聞いておこう。

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