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内緒の魔王くん  作者: 如月結花
第4話「交流の魔王くん」
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4話目・その2

 携帯電話を入手する為には、グラゼルの出した条件である、茉莉以外に友達を一人は作ること、をクリアしなければならない。

 条件が提示されたのは昨夕のことだが、日付が変わろうとも、あまり良い考えは思い浮んでこない。

 朝のホームルームまでの短い時間でさえ、何か良い方法はないものか…と、頭を働かせている程だ。

 逆に、いつか茉莉と離れ離れになる、という件に関しては、既に自分の中で答えは出ていた。

 例え未来に離別が待っていようと、それを理由に距離を置いたり、関係を断ったりはしたくない。

 人間界に身を置く最後の瞬間まで、否、魔界へ帰ってからも、茉莉とは永劫に友という関係で在りたいと望むのだ。

 だが、残念ながら他に友と呼べそうな、友で在りたいと思えそうな人間は、今のところ存在しない。

 クラス内では未だに”浮いている”と認知されている為、エルに話しかける者自体、殆どいないのが原因ではあるが。

 決して人間と魔人が相容れない訳ではない。

 そもそも、エルが人間ではない事実を知るのは、同じ魔人であるグラゼル、そして秘密を知っている茉莉くらいなのだから、関係はない。

 単純に”浮く”原因を自分から提供してしまったのだ。

 それに関しては、最早終わった事。憤りをぶつける先もなく、考えても虚しい、という気持ちも確かにあるが。

 そんな風に周囲から”浮いた”存在に話しかけるクラスメイトなど、茉莉の他には、恐らく神田 亮吾くらいだろう。

 神田は、エルが女装姿の茉莉や、約1週間前まで人間界に来ていた妹のリアと一緒にいたところを、度々見かけている人物である。

 女装した茉莉はエルの”彼女”だと思われていて、初めて目撃された時点では、神田以外にも何名かの男子が机に集って来たものだが、現在も通っているのは神田だけだ。

 気は進まないが、他に話す者もいない以上、神田を友人としてグラゼルに会わせるしかないか…と、考えるエルだが、一瞬で思い改める。

 一度友達扱いしてしまえば、今以上にしつこく”彼女”を紹介して欲しい、と文字通り詰め寄って来ることになるだろう。

 何より、紹介するには、自宅を教える、という余りにも危険な行為を強いられる。

 約束も招待もしていないのに自宅にまで押し掛け、「今日は”彼女”来ないのか?妹ちゃんでも良いぜ、呼んできてくれよー。」などと言い出されては、たまったものではない。

 やはり神田ではダメだ。

 そもそも、神田とは友達ではないのだ。

 偽りの友人を連れて行ったところで、グラゼルの目は誤魔化せないだろう。

 携帯電話欲しさに、躍起になっていると思われるのも癪である。

 とは思うものの、何か簡単に友達が出来る方法はないだろうか…と考えてしまうのは、躍起になっている事の証明なのだが、エル自身はそこまで気付いていない。

 結局エルは、ホームルームが始まるまで、一人思案を続けるのだった。




「ね、まお…エルくん、何かあった?」

 茉莉がエルに話しかけたのは、放課後のことだった。

 人目は多少気になったが、朝の物思いに耽るエルを見て、また悩みがあるのではないか…と心配になり声をかけた。

 エルも人目を気にして、半ば無視するように鞄に教科書を詰め込むと、急いで廊下に出る。

 そして茉莉が追って来たことを確認すると、廊下を歩く生徒達の喧騒に紛れるようにして小声で返す。

「…昨日から考え事をな。話すと少し長くなりそうだが…。」

「うーん…じゃあ、別の場所で話そっか。」

 茉莉もなるべく声量を抑え、エルの若干斜め後ろに位置取った。

「一度家に帰ってから改めての方が良いのではないか?」

 こうして他者の目に触れる場所での長話しは、秘密を守る上で危険である為、エルはそう提案するが、

「…いや、今日は用事があるのだったな。」

 と、すぐに、茉莉に予定があったことを思い出す。

「…ごめんね。」

「いや、謝ることではない。それで、どこか良い場所はありそうか?」

 問いはしてみたものの、エルにも学園内で二人きりになれそうな場所が少ないのは分かっている。

 それは以前、お昼を一緒に食べようと、人のいない場所を探し歩いた結果、鍵のかかった屋上しか見つけられなかった事実が証明している。

「んー…、部活でもやってれば、部室って手もあったかもしれないんだけどね…。でも話するだけなら校舎裏とかでも、良いんじゃないかな。」

 茉莉にしても、具体的なイメージを伴って「別の場所」と口にした訳ではなかったが、確かに人目に付かないという意味でなら校舎裏でも問題ないだろう。

「それだ!」

「え?…校舎裏で、良い…んだよね?」

 エルが、単に校舎裏で話すのを肯定する、というには余りにも似つかわしくない言い方をした為に、茉莉は思わず確認を取ろうとして、

「否、そうではない。」

「ええっ!?」

 何故か否定された。

 茉莉からすると全然意味が分からない。

 エルはこの時既に、先程茉莉が発した単語により、問題解決の道を見い出していたのだ。

 だからこそ、嬉しさのあまり、説明をすっ飛ばしていた。

「部活だ…!感謝するぞ!我は今から部活を探しに行くが、茉莉は用があるのだろう?帰ってくれて構わぬからな。」

「え?…う、うん。」

 どうやら考え事の内容が、相談を受ける前に解決してしまったらしいことだけは、茉莉にも理解出来た。

 説明が無いので、状況はさっぱり呑み込めなかったが。

 しかし、悩みが解決したならそれで良いのではないか…とも同時に思う。

「ん。じゃあ…また明日?」

「うむ、また明日。」

 別れの挨拶を交わすと、茉莉はそのまま昇降口へと向かった。

 何だったのか気になる、という思いも当然あり、どこか釈然としない様子だった。

 対してエルはすっきりした面持ちで茉莉を見送ると、記憶を頼りに、学園内の”ある場所”へと歩き始める。

 ”ある場所”とは、部活動や同好会の人員募集用紙が貼られている屋外掲示板だ。

 ここ私立久十里学園には、多種多様な部活動が存在する。

 そして、多種多様な同好会も存在する。

 部活と同好会の違いは、構成人数、及び正式な顧問がいるかどうかによる。

 部活として正式に受け付けられるのは、人数が10名以上、且つ届け出の際に、顧問として了承を得た教師が最低1人いること。

 対して同好会は、人数が3名以上であれば、顧問の有無に関わらず届け出は受理される。

 その結果、顧問がいない、もしくは顧問が他の部活や同好会と兼任となる等の関係で、きちんと活動を行っているか監督する者が不足しがちな為、同好会には毎月活動報告を提出する義務が設けられている。

 部活になると活動報告の提出義務はなくなるが、顧問から活動をしていないと判断されたり、規定人数を下回ってしまえば、同好会への格下げや廃部といった処置を取られることはある。

 友達を作るなら、やはり仮の同好会よりも正式な部活の方が好ましい。

 何せ人数が多いのだから、1人や2人くらいなら、気の合いそうな者がいるだろう。

 掲示板には、体育系、文化系、その他…様々な募集の貼り紙がされている。

 エルは先ず体力的な面で困難であろうスポーツ関係を除外し、文化系とその他を中心に募集内容を見ていくことにした。

 吹奏楽、合唱、軽音、演劇、美術、囲碁将棋、化学、オカルト関係…等など、どの学校にもありそうな活動は、久十里学園にもあった。

 異色な物だと、黒魔術、モールス信号、校内かくれんぼ、旅行研究、一人遊び…といった、よく分からない同好会もある。

 新規設立の貼り紙では、超常現象解明同好会というものも存在した。

 もはや何でもあり状態だ。

 しかし、数だけは多いので、探す側からすれば有り難い。

 この中から何か一つくらいは、興味を持てる分野があるかもしれない。

 興味のある部活でなければ、例え友達作りが成功したとしても、最終的に形だけの在籍になってしまう可能性があり、部に迷惑をかけてしまう恐れがある。

 そんな配慮をした上で、エルは全ての用紙に目を通していくのだが、あまりこれといった活動はなかった。

 そもそも、何をするか検討もつかないものが多い所為もある。

 エルが人間界に来る前、魔界で詰め込んだ知識には、かなり偏りがある。

 魔界には娯楽というものが殆どない為、そういった知識にも疎い。

 主に娯楽の延長に当たる部活動に対し、名称だけを見て判断するのは、容易ではない。

 暫く難しい顔で掲示板を眺めていたエルだが、やはり見ているだけでは分からず、実際に見て回るべきだ、と決断を下す。

 そして、最初に向かったのは、吹奏楽部。

 選んだ理由は単純。募集用紙に書かれていた現部員数が、一番多かったからだ。




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