僕は姫士だから
武姫姫士専門学校に入学して一か月が経ったある日、エレノア先生にたっぷり扱かれ(訓練で)へとへとになりながら寮に帰っていると、数人の武姫が僕達の前に現れた。
「一年Dクラスの姫士、アーク様。先に謝罪しておきます。申し訳ございません」
「え?」
突然現れ、突然謝罪し、去って行った。一体なんだったのか。というか、誰?
「今のはBクラスの武姫ね。たぶんアレの事じゃない?」
シノアが指さした先を見ると、傷だらけの武姫を数人の武姫が物陰に運んでいた。
「シノア、行くよ」
「はいはい、そう言うと思ったわよ」
武姫達を追うと、校舎の陰に傷だらけの武姫だけを残して、他の武姫達は消えていた。
緑色のボブヘアの女の子は、気絶しているのか目を閉じてぐったりしている。
「さっきのもBクラスの武姫よ。この子も」
どういう事だ。同じクラスの武姫をこんな所に置いて行くなんて。
いや、それより、酷い傷だ。Bクラスの姫士の所に連れて行かないと。
顔や足など見える部分だけでも切り傷や痣で痛々しかったが、シノアが服を捲ると、お腹はもっと酷かった。
「切創に打撲痕、火傷もあるわね。武姫なら二、三日もあれば治る傷だけど、治る前に新しい傷ができて治癒が間に合っていないのね」
「Bクラスはそんなに厳しい訓練をしているの?」
「まさか。これは訓練でできた傷ではないわ」
訓練ではない。それはつまり……いや、でも、本当にそんな事が?
「うぅ……」
女の子が苦し気に呻いた。僕の予想が当たっているのなら、この子をBクラスの姫士の元に連れて行く事はできない。
「この子をどうするつもり?」
シノアは確信しているようだ。この子の傷が姫士によって甚振られたモノだという事を。
この子を治すという事は、Bクラスの姫士に喧嘩を売る事になる。もしかしたら、クラスのみんなに迷惑をかけてしまうかもしれない。それでも。
「治すよ。僕は姫士だから」
真っ直ぐシノアの紅い瞳を見つめ答えると、シノアは優しく微笑んだ。
「そう。ならいいわ」
女の子の前にしゃがみ込んだシノアは、そっと女の子の傷付いた頬を撫でる。ここからシノアの表情はわからないけど、バチバチ、とポニーテールの先端から散る火花を見ればどんな顔をしているかは想像に難くない。
「シノア、落ち着いて。火花が漏れてるよ」
「……ごめんなさい。もう大丈夫よ」
「じゃあ、この子に精液を飲ませるから、手伝って」
この傷は唾液程度では治らない。精液の膣内摂取が一番だが、流石に気絶している子に挿入するのは忍びない。
なので、経口摂取をしてもらおうと思ったのだが、何故かシノアは半目で睨んできた。
「アンタねえ……まあいいわ。ほら、出しなさい」
その投げやりな感じはなんなの。まあいい。今は緊急事態だ。一刻も早くこの子に精液を飲ませないといけないから。
目を覚ました女の子は、ぺたぺたと自分の顔を触り、傷が治っている事に気づいたようだ。
「なん、で……?」
「傷ついている子がいて、僕にはそれを治す力があって、治さない方がおかしくない?」
「でも、貴重な精液を……アタシなんかには、そんな価値無いっす」
「僕はそうは思わないけど。とりあえず、こんな所だとなんだし、僕の部屋で話そうよ」
もし、Bクラスの姫士に見られたりしたら、この子が大変な目に遭うかもしれないしね。
「ア、アタシが姫士様のお部屋に行っていいんすか?」
「勿論だよ。立てる? しんどかったら、お姫様抱っこで連れて行ってあげるよ?」
「い、いえ! 大丈夫っす! 自分で歩けるっす!」
そんなわけで、まだ完全に傷が治っていない女の子は自分で立ち上がり、何故か足腰がガクガクしているシノアに肩を貸す事になった。




