どの乳下げて言ってんのよ
部屋に着く頃にはシノアも回復し、お菓子の準備を始めた。
女の子にはソファに座って貰い、人一人分開けて隣に座る。
「先ずは自己紹介をしようか。僕は、アーク・ブランドール。一年Dクラスの姫士だよ」
「アタシは、リーン・シルヴェールっす。一年Bクラスっす」
リーン・シルヴェールさん。緑色のボブヘアで、身長は僕より10cm程低い。ぱっちりした黄色い眼が可愛らしく、童顔も相まってかなり幼く見える。しかし、ブレザーを押し上げる胸元は幼さなど欠片も無く、そのアンバランスがエロスを掻き立てる。
「私はシノア・セルージュよ。気を付けなさい、油断しているとすぐに食われるわよ」
お菓子と紅茶を乗せたトレーをテーブルに置き、シノアはリーンさんのすぐ隣に座った。
「食われる、っすか?」
「コイツの精力は半端ないのよ。今も、貴女の事をえっちな目で見ているわよ」
こらこら、初対面の人になんて事言うんだ。えっちな目でなんて見てないよ。ちょっとしか。
「アタシなんかをそんな目で見る人なんていないっすよ。こんなガキみたいな奴」
「どの乳下げて言ってんのよ」
「どの乳って」
相変わらず好き勝手言うが、シノアのおかげでリーンさんの緊張もほぐれたようだ。
「リーンさん、その傷はBクラスの姫士につけられた物で間違いない?」
「そう、っすけど……」
「Bクラスの他の武姫も関係ある?」
「あの人達は何も悪くないっす! 全部、アタシが悪いっす。役に立たないアタシが」
やっぱり、あの武姫達は僕ならリーンさんを治療すると思ってあんな事をしたんだな。
「言いたくない事は言わなくていいけど、何があったのか教えてくれないかな?」
ギュッ、とスカートを握るリーンさんは、ふう、と息を吐きぽつぽつと語り始めた。
「アタシはナイフの武姫っす。能力は【複製】っていって、自分と同じナイフを作れるっていうだけのしょぼい能力っす。だから、姫士様のお役に立てなくて、それならせめてストレス発散の為にサンドバッグになれ、って」
「はあ? 何それ、姫士なら何をしてもいいと思ってんの。ふざけるんじゃないわよ!」
「それ、先生は何も言わなかったの?」
リーンさんはふるふると首を横に振った。
「先生は気づいてないっす。姫士様は上手くやってたっすから。見える所には訓練でできる程度の傷しかつけなかったっす」
「そんな奴に様なんてつける必要ないわよ! リーン、アンタ、ウチのクラスに来なさい!」
ちょっと、シノアさん? それ、僕が言おうとしてたんだけど?
「え? Dクラスに? む、無理っすよ。武姫が勝手にクラス移動する事はできないっすから」
「僕がBクラスの姫士と話すよ。話し合いでダメなら決闘を申し込む。リーンさんがDクラスに来たいなら、だけどね」
何を言っているのかわからない、といった風なリーンさんをシノアが抱き寄せる。
「安心しなさい。私とアークが負ける事なんてありえないわ。本気を出せば、あのセクハラ教師だってボコボコにできるんだから!」
「エレノア先生はともかく、同学年の姫士には負けるつもりはないよ」
「だ、ダメっす! 決闘は絶対ダメっす! Bクラスには、元素系の能力を持つ武姫がいるっす!」
ぶんぶんと首を振るリーンさんに、シノアはニヤリと笑う。
「元素系? それがどうしたの?」
リーンさんの前に立てたシノアの人差し指が炎を纏う。シノアが元素系の能力である事もそうだが、リーンさんは武姫化せずに能力を発動している事に驚いているようだ。
「え? 火?」
「リーンさん、僕が聞いているのは、リーンさんがDクラスに来たいかどうか、だよ。リーンさんがどうしたいか、それを教えて欲しい」
「そ、れは……」
リーンさんは戸惑い、俯いた。Dクラスに来るのが嫌なのではなく、僕達の事を心配してくれているようだ。
それなら、僕は立ち上がり、リーンさんの正面に立つ。顔を上げたリーンさんに右手を差し出す。
「僕の副武姫になれ、リーン」
「へ? ええ?」
「僕は君の事が気に入った。君がほしい。主武姫でなくて申し訳ないけど、僕と契約してくれないか」
こんなに傷つけられても、リーンさんは誰の事も悪く言わなかった。優しい子だ。そんな子は幸せにならないといけない。僕が幸せにしたい。
「あ、アタシなんかを副武姫にしても、何もメリットはないっすよ」
「メリットならいくらでもあるよ。優しい君が傍にいてくれるだけで、僕は優しい気持ちになれる。役立たずなんて言っていたけど、君は優秀な武姫だ。僕なら、君の力を生かせる。君は僕と契約するべきだ」
差し出した右手に、リーンさんが恐る恐る右手を伸ばす。が、その手は途中で止まってしまった。
「アタシなんかの為に、アーク様達に迷惑を掛けられないっす」
ひっこめようとした右手を掴み、左手を重ねる。膝をついて、驚いた表情のリーンさんと目線を合わせ、ニッ、と不敵に笑ってみせた。
「掛ければいいよ。僕が君一人の迷惑すら受け止められない、小さな男だと思うかい?」
「っ! ……その言い方は、ずるいっす」
黄水晶の瞳に雫を溜めながら、初めて笑顔を見せてくれた。
「こんな幸福があっていいんすかね?」
「これを幸福だと思うなら、それは君の優しさが招いた事だよ」
「……アーク様、アタシを副武姫にして下さい」
「うん。これからよろしくね、リーン」
リーンの右手に口づけを落とすと、リーンは顔を真っ赤にしながらへへ、と可愛らしく笑った。
目を覚ますと、リーンが真っ赤になって僕を見つめていた。
「ん、おはよ、リーン」
「おはよ、ございますっす」
どうやら、僕がリーンの上に乗ってしまっていたので、動くに動けなかったようだ。
「ごめんね、重かったよね」
「い、いえ、そんな事はないっす! 寧ろ、心地良かったっす!」
そうか、それなら良かった。
体を起こすとリーンも同じように起き上がり、もじもじとお腹の前で手を遊ばせる。
「そ、その、夢じゃ、ないんすよね?」
「夢じゃないよ。リーンが良かったら、これから毎日しようね」
「ま、毎日!?」
勿論、嫌な時は無理に相手させるつもりはない。シノアとは毎日やってるけど。
視線を落とし、綺麗になったリーンのお腹を見る。白磁のようなすべすべの肌は、酷い傷が合った事など微塵も感じさせない程綺麗だ。
「もう、どこも痛みはない?」
「はいっす。おかげさまで、前より元気なくらいっす!」
むん、と両腕で力こぶを作るリーンは、当然全裸なのでおっぱいが突き出され実に良い。が、もう時間も時間なので、今日は我慢しよう。
「シノアはそのまま寝かせといてあげよう。リーン、シャワー浴びておいで。その間に、僕がこの部屋片づけとくから」
「い、いえ! アーク様が先にシャワー浴びてくださいっす! 片付けはアタシがするっすから!」
「そう? じゃあ、お願いね」
僕の体はいろんな液体でドロドロのカピカピだったので、そう言ってくれるのなら先にシャワーを浴びさせてもらおう。
一緒に浴びるとまた始まってしまうから一人ずつシャワーを浴びた。リーンがシャワーを浴びている最中にシノアが目を覚ました。
先にご飯を作ってしまう、とシノアは裸エプロンで誘惑してきた。しかし、僕は鋼の理性で、おしりを揉むだけで我慢した。料理中は危ないから、とキッチンを追い出されたわけではない。
断じて違うが、理不尽だとは思う。




