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紅焔の彼女  作者: MANAM


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紅焔の彼女 最終話

 フラムが鹿屋家に来て一月程経とうとしていた。そんなある日の朝マリは自慢のお弁当を持ってくれはに手渡す。

「はい、くーちゃん。今日のお弁当!」

「フラム、あんたにあげる」

「くーちゃんもお弁当食べて⁉︎」

 いつもと変わらぬマリとくれはの親子漫才を呆れ顔で見つめるフラム。

涙を流しお弁当を持って立ち尽くすマリからそれを受け取り、くれはを隅に寄せマリに聞こえない様に問い詰めるフラム。

「くれはよ…お前余りにも母御に辛辣ではないか? たまには弁当を持って行け。そんなに母御の事が嫌いなのか?」

「んなわけないでしょ。むしろ尊敬してるけど?」

 こともなげに意外な言葉を返すくれはに目を丸くするフラム。

「ではその事を母御に言ってやれば良いだろう」

「そんな事言ったら調子乗って面倒でしょ」

「…なるほど…確かに…」

 鹿屋家にしばらく滞在しマリの性格を知り尽くした今、くれはの言葉に納得しかないフラム。

「では蒼太郎も同じ様に母御を尊敬しているのか?」

 フラムの疑問にくれはは少し考えると顔には出さないが怪訝そうに聞き返した。

「蒼太郎って誰?」

「何を言っている。蒼太郎はお前の兄だろう」

「あんたこそ何言ってんの? 私にアニキなんていないけど」

「なに…? 悪い冗談はよせ…」

 フラムはくれはの顔をみる。その表情からは嘘を言っている様子は見られない。

「おい…本当に…悪い冗談だ…!」

 フラムの顔から血の気が引いていく。慌ててマリの元へと行き蒼太郎の事を尋ねる。

 しかし、答えは同じだった。

「蒼太郎…? うちはくーちゃんの一人娘だけど…フラムちゃんも知ってるでしょ?」

「そんな…まさか…」

 フラムはよろめきながら壁に手をつき、驚愕の表情で俯き床を見つめ呟く。

「こちらに来て…くれはに借りた本の物語にもこの様な状況になるものもあった…だが…だが! 普通は女性の存在が消え、蒼太郎がそれを探すのに奔走するものだろう! お前が消えてどうする!」

 混乱からか自分でもよくわからない事を口にして、首を横に振り冷静に考える事にするフラム。

「…蒼太郎の存在しない世界…こんな事が出来るのはただ一つ…願いの紅玉のみ…やはりこの付近に存在していたか!」

 フラムは駆け出し家を飛び出ると、丘の方を見上げた。

「しかし…一体誰がそんな願いを…」

 考えを巡らせるうち先日の玄関先での蒼太郎とのやり取りの事が思い出された。


『ふ…ふん…お前が居なくとも私は何とか紅玉を探していたはずだ!』


 そう、蒼太郎が居なくともと言う言葉を、あの時フラムは確かに言葉に出していたのだった。

「まさか…そのせいで蒼太郎が⁉︎…くそ! そんなはずはない! きっと奴は学校へ行っているんだ」

 フラムは悲痛な叫びをあげ、学校へと向け駆け出す。

その道中フラムはさくらと出会い、さくらはフラムをライバルを見る様な鋭い視線を向ける。

「あなた…こんな所で会うなんて奇遇ね…」

「やれやれ…蒼太郎の居ない世界でも私はこいつに嫌われているのか…」

 首を振りながら呆れた様に呟くと、フラムも負けじとさくらに鋭い視線を向けた。

「お前は私の事を嫌いかもしれんが、私はまだお前の事を嫌いにはなっていない! 覚えておけ!」

 さくらにそう言い放つとフラムは再び学校へと向け走り出す。

そして学校に着いたフラムは怪しまれるのを気にもせず、蒼太郎のクラスへと急ぎ、そして教室の生徒達に鹿屋蒼太郎と言う生徒が居るかどうかを聞く。生徒達は不審がりながらその問いに答える。

「鹿屋? そんな奴このクラスには居ない」

「て言うか、同じ学年で鹿屋なんて名前聞いた事ないわ」

 予想していたとはいえその言葉に愕然とするフラム。そしてフラムは三階の教室の窓から飛び出した。その背中からは生徒達の悲鳴や驚きの声が飛び交うがフラムの耳には届かなかった。

 フラムは蒼太郎が行きそうな所や紅玉の発する魔力を感じ取りその在所を特定しようと街中を飛び回る。日が高くなっても手掛かりは見つからない。日が傾いても同様だった。

「くそ…くそ!」

 フラムは鹿屋家の近くまで戻り、そして悔しさのあまり何度も何度も地面を殴りつける。拳からは血が滲むが、しかしフラムは殴りつけるのをやめようとはしない。だがそんなフラムの腕が不意に誰かに掴まれた。

驚きながら後ろを振り向くとそこにはさくらの姿があった。

「あなた…何をしてるの!」

「お前か…」

 フラムはさくらの手を外しゆっくり立ち上がるとよろめきながら丘の麓の木にもたれ掛かり額に血塗れの手の甲を当て黄昏時の空を見上げる。

「ふ…本当に…私は何をしているんだろうな…あいつを探して一日中飛び回って…」

「そんなに必死になるほど大切な人なの?」

 さくらに言われフラムは改めて自分の気持ちを確かめる。いつも自分の素足を見て鼻の下を伸ばす、どれだけ言っても聞かない変態。叩こうと、蹴り倒そうと懲りない困った人物。だが、思い出されるのはその変態で真っ直ぐな憎めない蒼太郎。

「そうだな…私はいつの間にか…あいつの事を…」

「そう…そんなに大切な人なのね…」

 さくらはハンカチを取り出し怪我をしたフラムの手を自分のハンカチで手当てする。

「すまん…」

 フラムは反対の手でハンカチを押さえながら申し訳なさそうに俯いた。

「そうよね…やっぱり鹿屋くんが居ないと寂しいし仕方ないわ…」

 さくらの言葉に一瞬思考が止まるフラム。俯いたまま目を大きく開き、そしてゆっくりと顔をあげてさくらを見る。

「お前…蒼太郎の事を覚えて…⁉︎」

「ふふ…忘れるわけないじゃない。鹿屋くんは私の憧れ。大好きな人だもの」

 さくらは夕陽を背にフラムへ笑顔を送る。だがフラムにはその笑顔が邪悪で不気味なものに見えた。

「お前…本当に…あの佐倉さくらなのか…⁉︎」

「何を言っているの? 当然でしょ。私は私。佐倉さくら。あなたに鹿屋くんの素晴らしさを教えるために彼の居ない世界にしてあげたの!」

 さくらが叫ぶと胸元から怪しく邪悪な赤い光を放つ石がゆっくりと顕現する。

「願いの紅玉⁉︎」

「あははは! この赤い石すごいのよ! なんでも願いを叶えてくれるの! 見て! 今誰も歩いてないでしょ! これもあなたと二人っきりで話すためにこの石にお願いしてみんなみんな! 世界中のみんなに眠ってもらったの!」

「よせ! それ以上その石に願うな! それは使う者の魂を喰らう願いの紅玉だ! このままだとお前は…!」

 フラムはさくらに駆け寄り紅玉を掴もう手を伸ばす。だがさくらの体から真っ赤な光が立ち昇り弾かれてしまう。

「バカな…これは魔力…⁉︎ こちらの人間のこいつがどうして…」

 驚愕し戸惑っているとさくらが笑顔でフラムの方へと手を向けると火球が作り出されそれが直撃する。

その場から数メートル吹き飛ばされ、空中で体勢を整えて両足と片手をつきなんとか踏みとどまる。

 そしてフラムはさくらを観察し気づく。

「あの魔力…紅玉がさくらの生命力を魔力に変換しているのか! まずいぞ…このまま魔法を使わせるとあいつの命が保たん!」

 さくらが放つ火球を避けながら再び接近していくフラム。

「紅玉さえ引き離せれば私の心を喰わせて相反する願いで破壊出来る!」

「近づかないで!」

 叫びながら一段大きな火球を作り出すとさくらが目に見えて消耗するのがわかった。

「くそ! 紅玉に心を支配されて自分が消耗している事にも気付いていない!」

 放たれた火球を避け、背後で爆発が起こる中フラムはさくらの懐に入り込み紅玉を掴む事に成功した。

「よし! これで!」

 フラムが勢いよく紅玉をさくらの胸元から離そうとした時、さくらが悲鳴を上げた。

「あああぁあ!」

 フラムは反射的に手を離す。そして紅玉がさくらに魔力の根の様なものを張っているのに気付く。

「これは…無理に引き剥がすと魂ごと抜け出すぞ…くそ…紅玉は活性化する毎に進化していると言うのか⁉︎」

 さくらは膝をつき苦しそうに胸を押さえている。フラムはこの隙に思案する。

「ここまで根を張られて確実ではないが…さくらを救うには紅玉を破壊する他ない…だが…そうすると蒼太郎はもう二度と…」

 究極の選択を迫られる。さくらを見捨て紅玉を引き剥がし蒼太郎のいる世界を願うか、それとも蒼太郎を諦めさくらを救うか。

「蒼太郎…お前ならこんな時どうする…⁉︎」

 その時フラムの脳裏にまたあの日の事が思い出された。


『俺ごとやっちまえ』『せめて壊せ。それが出来るのはお前だけだろ』『俺は人のためになれたら本望さ』


「そうだな…蒼太郎…お前の想い…私が成し遂げる!」

 フラムは再び紅玉を掴むと手に魔力を込め紅玉の中へと送り込む。

「ああああああ!」

「少し苦しいだろうが我慢しろ! 今お前をこいつから解放してやるからな!」

 そしてフラムは自らの魔力を全て注ぐ。紅玉が眩く光り限界を迎えた様に震え出しヒビが入っていく。

「願いの紅玉! 貴様の存在もこれまでだ! 消えろ!」

 パキン! と音を立て願いの紅玉は崩れ去り、そして赤く煌めく砂の様になり辺りに散っていく。

フラムは辺りを見回しそれを確認すると赤い煌めきの中、自分の足元で苦しむさくらの状態を膝をついて確認する。

「さくら! 大丈夫か!」

 息が荒く返事が出来ない様子ではあるが、命は失っていないさくらを見てフラムは胸を撫で下ろした。

「あなたが…助けてくれたの…? どうして…」

「当然だ。目の前の救える命を見捨てる訳がないだろう」

「ごめんなさい…ごめんなさいぃい! あああーん!」

 さくらは謝ると大声で泣き始め、そして説明を始める。

「私…あの日…あなたと鹿屋くんが話してるの聞いて…その帰り…丘で光る石見つけて…怖いから帰ろうとしたの…でも気を失って…気付いたら家にいて赤い石持ってて…」

「丘に紅玉が隠されていたのか…そしてお前が取り憑かれて…大丈夫か? 辛かったろう」

「ごめんなさい…あなたに嫉妬して…鹿屋くんが居なかったらどうなるかって思ったら…ホントにそんな世界になっちゃって…鹿屋くん…消えちゃったぁあ!」

 さくらはフラムの胸に縋りつきまた泣き出した。その頭を撫でながらフラムが言う。

「お前のせいじゃない。私がここに来てしまったからこんな事になったんだ。そう…紅玉を活性化させてしまったのはきっと私のせいなんだ」

 フラムは今までの事を思い出す。蒼太郎と出会い、鹿屋家に世話になり、クールなくれは、元気なマリ、そして足フェチの変態。この家族との生活する事を心の奥で願っていた。それを丘の紅玉が叶え続けていた。そして、より強い願いを持ったさくらを引き寄せ取り憑いた。

「そう…だから一人で抱え込むな。半分は私が背負う」

「もう…鹿屋くんは戻らないの? もう元の世界に戻せないの⁉︎」

 フラムは黙り込み、それを見てさくらも察して絶句すると、フラムを掴んでいた両手を力無く落とした。

 二人は沈黙する。世界中の人々が眠っている静寂の中、彼女達の息づかいと赤い煌めきの音だけが聞こえる。

「待て…なんだこの音は…紅玉を破壊した後漂うこれは…願いの砂か!」

 フラムは勢いよく立ち上がり辺りを見回す。未だに漂う赤い煌めきだが次第に薄くなっていくのが見てとれた。

「この状態で世界を変える程の願いが叶うのかはわからんが…私の願いは一つ! さあ! 願いの砂よ! 最後の願いを聞け! そして…彼を!」

 フラムが叫ぶと無数に漂う願いの砂が紅焔の如く次々と赤く眩く輝きだし、フラムとさくらを飲み込んでいく。

そして光が強くなるとともに次第に意識が薄れていき、目の前が真っ暗になりそこで彼女の記憶は途絶えた。



 フラムは魔力を使い果たした影響から数日間眠ったままだった。そして物音で数日ぶりに重い瞼を開けると目に映ったのは心配そうに覗き込むマリの顔だった。

「ああ…よかった! フラムちゃん気が付いたのね!」

「ここは…部屋か…私はどうして…?」

「フラムちゃん何日か前にお家の前で倒れてたのよ。お医者さんに診てもらったんだけど、原因がわからないって…」

「そうか…それは当然だな…」

 魔力切れによる昏睡などこの世界ではわかりようもない。自嘲気味に言うとフラムの耳に一番聞きたかった声が飛び込んできた。

「だから言ったろ? そいつの生命力は丘の雑草並みだって」

「こら! 失礼でしょ!」

 声の聞こえた方から鈍い音が響く。マリとくれはが声の主の頭にそれぞれゲンコツと踵落としを喰らわせた様だ。

「ふ…母よ…舐めてもらっちゃ困る! 俺の生命力も雑草並みなだ! たとえ踏まれようとも抜かれようともまた生えるのだ!」

 頭にコブを作りながら力説する彼に、くれはとマリは呆れ顔だが一人感極まっている人物がいた。そう、フラムである。

 彼が居なかったのはたったの一日。しかしその一日でフラムは彼の存在を自分にとってかけがえのないものだと自認した。

 フラムはベッドから飛び出すと勢いよく彼に飛びつき涙を浮かべながら笑顔で言った。

「おかえり! 蒼太郎!」


 翌朝、朝食を終えた後フラムは玄関先へ出て外の空気を吸っていた。そこへ登校途中に寄った制服姿のさくらがやってきた。フラムの傷ついた手を見て俯き静かに言う。

「やっぱり…夢じゃなかったのね……その…鹿屋くん帰ってきたんだね…ありがとう」

「ああ…お前の記憶はそのままなのか…最後の願い叶ってよかった。紅玉を消滅させることが出来たのはお前のおかげでもあるな」

 さくらが願った蒼太郎の居ない世界、そしてフラムが願った蒼太郎の居る世界。二人の相反する願いを叶えたため紅玉は完全に消滅し、二度と復活する事も無くなった。

「なあにそれ…皮肉?」

 さくらは少し膨れっ面になりフラムを睨む。

「ふふ…どうかな?」

 フラムは笑顔で返しさくらもつられて笑顔になる。

「私もね、あなたのことまだ嫌いになってないの。手当に使ったハンカチはあなたにあげる。友情の証ね!…だけど鹿屋くんの事はまだ諦めた訳じゃないから! これから宜しく、フラム!」

「ああ、こちらこそ譲るつもりはない。宜しくさくら!」

 二人は握手を交わし、そしてさくらはフラムに手を振りながらそのまま学校へと向かって行った。

その様子をこっそり見ていたマリがフラムの背後に気配も無く現れ声をかける。

「いいわねぇ! 青春って感じ! あたしも学生時代に戻りた〜い!」

「わ! 母御か…驚かせないでくれ…」

「でも…さすがフレアちゃんの娘ちゃんね。あたし達で壊せなかった紅玉を消滅させちゃうんだもの」

 フラムは少し驚いた様に口を開けるが、しかし納得した様にマリの顔を見つめる。

「母御よ…あなたはやはり我が母の友であるマリーゴールド…」

「ええ、20年前紅玉を持ち逃げしちゃったマリーゴールド本人よ」

 ウインクしながらちゃめっ気たっぷりに笑顔を見せるマリ。

「持ち逃げなど…あなたが紅玉を管理していてくれたお陰でリュヌシエールが平定された。母御よ…あなたには苦労をかけた…母も常に貴方の事を気にかけていた。紅玉が消え去った今、一度リュヌシエールに戻り母に会ってはくれないだろうか?」

「うーん…無理かな?」

 予想もしていなかった返答にフラムは驚き聞きただす。

「どうしてだ? まさか母の事を恨んでいるのか⁉︎」

「じゃなくて、あたしもう魔力殆どないの。向かいの丘、いつもそーちゃんがお昼寝してた下に紅玉を封じて、魔力を撹乱したりしてね。異送空間を作ったら多分もう二度と魔法は使えなくなっちゃうくらい。フラムちゃんに異送空間で送ってもらっても今のあたしじゃ燃え尽きちゃうしね」

「では他に安全な異送空間を作り出せる者に…」

 フラムの提案にマリは首を振る。

「いいのよ。あたしはもうリュヌシエールへは戻らない。その覚悟でこちらに来たんだもの。あたしのこの最後の魔力は紅玉が活性化した時に破壊するために残しておいた物なの。でもそれを使わずに済んだ。それだけでも感謝しきれないわ。何がどうなって紅玉を消滅させたのかわからないけど、フラムちゃんありがと!」

「紅玉を封じ続けるのに魔力を使い果たし…故郷まで失う事に…なんと言う事だ…」

 拳を握り締め悔しそうに俯くフラムとは対照的にマリは明るく返答する。

「やだ! そんな深刻にならないで! あたしはねこっちの生活に大満足してるのよ。あたしもうリュヌシエールのマリーゴールドじゃなくて、そーちゃんとくーちゃんの幸せママ、鹿屋マリなの。フレアちゃんにもそう言っといて」

「そうか…ではそう伝えよう」

 複雑な気持ちで頼みを了承するフラムに、当然の様にマリは彼女に聞いた。

「それで、何時に帰ってくるの?」

「え…?」

 フラムはリュヌシエールへ戻ったとしても鹿屋家へ帰宅する事は確定している様だ。


 登校の準備を終えた蒼太郎が部屋から出てきて本日の完璧な計画を口にする。

「今日は午前の授業は机で寝て、午後からは体育館裏の木陰で昼寝してから帰るとしよう」

「お前…一体学校に何しに行っているんだ…」

 フラムはまるで授業は子守唄かの様に言う蒼太郎に呆れて空いた口が塞がらない。

「俺にとって学校とは、快適な睡眠を約束してくれる理想郷さ。いや、今の理想郷は我が家でもある!」

 そう言う蒼太郎の視線はフラムの白い素足に注がれ、気付いたフラムは顔を真っ赤にして蒼太郎の背中をその素足で蹴飛ばした。

「もう早く行け! 遅刻するぞ!」

「へいへい」

 蒼太郎は満足した様に上機嫌で鼻歌を歌いながら玄関で靴を履き外へと出る。

「あ、そうだ! 蒼太郎よ、お前に伝えておきたい事がある」

「ん? なんだ?」

 フラムは小走りに蒼太郎の前へ進み出ると、少し屈みながら蒼太郎の顔を見上げ明るく言った。

「蒼太郎! 好き!」

 そこには紅の焔の様に真っ赤に煌めくフラムの笑顔が眩しく輝いていた。

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