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紅焔の彼女  作者: MANAM


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紅焔の彼女 第五話

 今日も今日とても蒼太郎は学校で自分の机に突っ伏して居眠りをしていた。

そんな蒼太郎を見てさくらは次の試験の心配をする。

「鹿屋くん…いつも居眠りしてて授業聞いてないし大丈夫かな…」

 そこでさくらは良い事を思いつく。

「そうだ! 私が鹿屋くんの勉強を見てあげればいいんだ! そうすれば一緒に居られる!」

 ウキウキで蒼太郎に近づき肩を人差し指で控えめにちょんちょんとつつき蒼太郎に声をかける。

「鹿屋くん、鹿屋くん…次の試験大丈夫?」

「んぁ…?」

「もし良かったら、私と一緒に勉強しない…?…なんて…」

 蒼太郎は寝ぼけ眼でさくらをじっと見つめた。

「佐倉さんが俺と勉強なんて…これは夢だ…」

 そう言うと蒼太郎は満足そうに再び机に突っ伏して二度寝する。

勇気を振り絞り勉強に誘ったさくらの心に寒風が吹きすさび、涙を流して真っ白になるのだった。


 さくらの勇気の試験勉強の誘いの後の休日。

蒼太郎とフラムの二人は玄関先で水を撒きながら話をしていた。

「私はすっかりお前の家に居着いてしまって…申し訳無いな」

「とか言いながら、そのまま居候してんだからお前も神経が図太いよな」

 蒼太郎がニヤリとしながら皮肉るとフラムは頬を膨らませ柄杓で彼の顔に水をひっかけた。

「おお、暑いし水はありがたい。んで? お前の探し物は見つかりそうなのか?」

「いや…近くにありそうではあるのだがな…」

 空になったバケツに柄杓を入れ玄関前に置くと丘の方へ視線を向けるフラム。

そんな彼女を見て蒼太郎は疑問を投げかける。

「その何とかってのは壊す事は出来ないのか?」

「うむ…最大限に活性化しなければ、殻を被った様に強固でな…願いの紅玉は元々願いの砂という状態だったのだが、人々の野心的な願いを叶えるうち砂が強固な宝石の様になったと言われている」

「欲望の塊になったのか。俺とは無縁の話だな」

 フラムは呆れながらため息をつき首を振りつつ話を続ける。

「お前…どの口が言う…まあいい。近年の紅玉の研究で物理的に破壊する他新たに破壊方法がある事がわかった」

「ほう? それは?」

「最大限に活性化した紅玉に、相反する願いを同じ強さかそれ以上で願う事だ。だがこれはかなり危険な行為だ。紅玉に魅入られた者と、後から願う者二人が犠牲になる可能性があるからな」

 蒼太郎は腕組みをしながら考える。

「なるほど…願いの順番が大切だな…俺が全女性の素足を見る事を願ったとして、後の奴が俺に素足を見せないと言う相反する願いを叶えれば俺は一生素足を見れん! 確かに危険だな…!」

 拳を握りしめ深刻に、だが熱く真剣に語る蒼太郎の頭にバケツを被せその上から柄杓で何度も叩きつける。

そんな蒼太郎とフラムのやり取りをしている所へくれはに新しい本を届けに来たさくらが鹿屋家へと近づいて来る。

「くれはちゃん、この本楽しんでくれるかな? それと…今日も鹿屋くんに会えるかなぁ…」

 ドキドキワクワクしながら丘の近くまで来てさくらは蒼太郎とフラムの姿を発見し、手に持ったトートバッグをその場に落とし衝撃を受ける。

「か…かか…鹿屋くんが…バケツを被って木魚になってる!」

 さくらは思わず丘の坂道の木の影に身を隠し二人の様子を伺う事にした。

蒼太郎はバケツを被ったままフラムと話す。

「しかしお前、丘で俺と会って良かったな。じゃなきゃ根なし草だったろ」

「ふ…ふん…お前が居なくとも私は何とか紅玉を探していたはずだ!」

 フラムは頬を染め、最後に思い切りバケツを叩くといい音が辺りに響いた。

その会話をさくらは両手を胸に前で握りわなわなと震えていた。

「か…鹿屋くんが居なくても良かったなんて…あの人…! なんて事を言うの…!」

 さくらは木の影からフラムを睨み、そして自分の胸の内を吐露する。

「鹿屋くんが居なかったら! 私の足を見せてあげられないじゃ無い!」

 蒼太郎に感化され熱く変態独白をするさくらであった。


 一方くれはは街に出て古本屋で立ち読みをしていたのだが、スマホで時間を確認し慌てる様子を見せず慌て出す。

「あ、さくら先輩との約束の時間」

 持っていた本を棚に戻すと古本屋を出て帰路に着く。

その道中で銀色の短髪に灰色の瞳、首にもふもふを巻いた男ネージュラスとバッタリと鉢合わせした。

「おや…あなたは…フラム様がお世話になっている…」

「あんた、あの時のもふもふ。てか、何で私のこと知ってるの。直接会ったこと無いでしょ」

 ネージュラスは銀髪をかきあげ格好つけて言う。

「ふふ…フラム様の動向は確認させてもらってますから。あなたの事も存じておりますよ」

「キモ。ストーカー」

 くれはは通りすぎざまに軽蔑の視線を向けて吐き捨てる様に言うと、ネージュラスは少し固まった後くれはに向き直る。

「これは任務でしてね…申し訳ありません」

「ついてこないで。てか、あんた任務失敗したなら帰ったら?」

「それは出来ません。フラム様を連れ戻す命を受けた以上、おめおめと帰っては主に顔向けが出来ませんからね」

 くれはは立ち止まり大きくため息を吐くとネージュラスへと振り返る。

「そう言うのよく聞くけど、それってあんたが任務でずっと居なくても国は回るって事でしょ。あんた体良く厄介払いされてない?」

「え…⁉︎」

「帰って主ってのに聞いてきた方がいいよ。じゃあね」

 そう言い残すとくれははまたネージュラスに背を向けて歩き出した。

「バカな…! フレア様に限ってそんな…いや…しかし…まさか…!」

 ネージュラスはくれはの精神攻撃による分断工作にまんまとハマり、急ぎリュヌシエールへと戻る事にしたのだった。


「フレア様! 我が主! お聞きしたい事があります!」

 リュヌシエールへ戻りフレアの執務室へ勢いよく入室すると、ネージュラスはデスクに両手をつきフレアに迫る。

「どうしたネージュラス。首尾良くフラムを連れ戻せたか?」

「それはまだ…いえ! 本日はお聞きしたい事があり一時帰還しました。…フレア様、どうして私にフラム様を連れ戻す任を与えたのですか?」

 フレアは必死になるネージュラスを怪訝な表情で見ながら答える。

「決まっているだろう。お前がフラムにとってのいわば天敵だからだ。今までもあいつが癇癪を起こした時お前が抑えていたではないか」

「は…では…私は左遷された訳では無いと…?」

「左遷…? ははは! 当然だろう。お前の様な優秀な者をなぜ左遷しようか。なればこそ、私やフラムの側に仕えてもらっているのだ」

 フレアは左遷疑惑に狼狽する滑稽なネージュラスを笑いながら、信頼の情を改めて伝えた。

「何があったかはわからんが、お前は少し疲れている様だ。追ってもう一度任務を伝える故それまで休息を取るといい」

「ありがとうございます。…フレア様…お疑いして申し訳ありません」

 ネージュラスは安心した様にお辞儀をして執務室を後にした。

「やれやれ…あいつは考え過ぎる所があるからな。…それにしても…これは良い方法だな。これからは面倒な部下は重要任務を大義名分にして地方に左遷する事にするか」

 くれは式左遷術がリュヌシエールに採用された歴史的瞬間である。


 ネージュラスの左遷疑惑の最中、主の娘であるフラムと蒼太郎はまだ玄関先で紅玉の話を続けていた。

「しかしまあ、俺がその何とかに心乗っ取られて、相反する願いがわからん場合は迷わず俺ごとやっちまえよ」

「何をバカな事を…そうなればお前を救う方法を考える」

「で、結局壊せず俺も死ぬってか? そんなのごめんだね。せめて壊せ。それが出来るのはお前だけだろ」

 フラムは蒼太郎を見てすぐに俯き、しばらく沈黙した後そのまま同意する。

「わかった…その時はお前を介錯しよう…」

「俺は人のためになれたら本望さ」

「私がそんな事にはさせん!」

 フラムは蒼太郎を見て力強く宣言する。

「だがお前…格好つける前にいい加減そのバケツを取れ」

「おお、何か暗いと思ってたんだ。忘れてたぜ」

 蒼太郎は頭からバケツを取ると、足元へと置き丘の方へと目をやり木の影に隠れているさくらに気付いた。

「あれ? 佐倉さん。何でそんなとこに?」

 いきなり名前を呼ばれたさくらは口から心臓が飛び出るほど驚き、飛び上がりながら木の後ろから蒼太郎へと歩み寄る。

「鹿屋くんこんにちは。そちらの人もごきげんよう…今日もくれはちゃんと約束して本を持って来たの」

 はにかみながらモジモジして上目遣いで蒼太郎に聞く。

「それでね鹿屋くん…良かったら一緒に試験勉強しない? いつも授業中寝てるし試験大丈夫かなって…」

「ああ、試験…の私見は…先見の明…」

 蒼太郎は次第に瞼を閉じていき、こくりこくりと首を揺らすと立ったまま寝息を立て始める。

「鹿屋くん⁉︎」

「こいつ…よっぽど勉強嫌いなんだな…」

 蒼太郎にとって試験という言葉は何よりの子守唄。よだれを垂らしながら気持ち良さそうに眠る。

「…そうだ…鹿屋くんが寝てる間にあなたに聞きたいんだけど…」

「なんだ?」

 さくらはフラムへと歩み寄り睨む様に視線を送る。

「あなた、鹿屋くんとどういう関係?」

「私はこいつの…」

 そこまで言って顔を逸らし頬を真っ赤にして言い淀むフラムにさくらは鼓動を早くしながら問いただす。

「あなた…鹿屋くんの…か…彼女なの…?」

 さくらの言葉に大慌てで両手を振り否定を始めるフラム。

「ち…違うぞ! 私はこいつの恋人では無い! 私はこいつの妻(候補)だ!」

「つ……⁉︎」

 恋人ではないのかと探りを入れ、それ以上の関係であるとの返答にさくらは魂が抜けたように真っ白に燃え尽き、そしてフラムは顔から火を出す様に真っ赤になり煙を吹き出す。

 そんな真っ白と真っ赤と立ち居眠りする三人を古本屋から帰って来たくれはが発見し小さく呟く。

「…類友…」

 くれははさくらの目の前で手を叩き正気に戻し、バケツに水を汲みフラムの頭から引っかけて鎮火し、空になったバケツを蒼太郎の頭に被せて蹴り倒した。

「さくら先輩、どうぞ中へ。あんたはその変態の処理しといて」

『あ…はい…』

 フラムとさくらはくれはの指示に声を揃えて言い、くれははさくらの手を引いてフラムと蒼太郎を残して家の中へと入って行った。

 蒼太郎はこの日、試験と言う子守唄のおかげで良く眠れたようである。

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