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紅焔の彼女  作者: MANAM


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紅焔の彼女 第四話

 青い満月が輝く夜。辺り一面岩だらけの荒野。時折爆音が響き、同時に人の断末魔が聞こえる。

その地獄の様な荒野へ二人の少女が駆けつける。長い黒髪に炎の様に真っ赤な瞳の少女フレア、そしてその友である茶色い髪でショートボブの人間の少女マリーゴールド。

「今度こそ奴の持つ願いの紅玉を破壊するぞ!」

「そうね! 最大限に活性化している今しか壊せない! 最初で最後のチャンス!」

「全く…願いの砂の状態であれば楽に処理できたものを…人の欲望のせいでこんな面倒な事に!」

「紅玉になって数百年過ぎてるんだから今更文句言わないの!」

 戦場の中心へとやって来た二人は上空を見上げ、そこに浮かぶ人物と対峙する。

 長い白髪に赤い瞳に尖った耳の女。半目を開き項垂れて全身から黒い波動を放ちその胸元には赤く怪しく光る願いの紅玉が浮いている。

「見ろ! 最早奴の意識は無い! 紅玉により操られている!」

「急がないと! 世界が滅ぶか、休眠されて破壊できなくなるか、それとも…」

「もちろんそれともに決まっている! 我らで紅玉を破壊する!」

 フレアはどこからともなく出現させた剣に炎を纏わせ紅玉へ斬りかかり、マリーゴールドは紅玉を破壊するための魔法の詠唱を始める。

操られた白髪はフレアの斬撃を片手で受け止めると、紅玉から衝撃波が放たれフレアは吹き飛ばされる。

着地したフレアは再び飛び上がり紅玉を斬ろうとするが、白髪が右手から放った火炎によりまたも引き剥がされた。

「おのれ…! 全てが借り物の分際で!」

 膝をつき体に火を燻らせながら白髪を見上げるフレア。すると白髪の全身から波動と炎が混ざり合った禍々しい赤黒い魔力が揺らめき始めそして一気に放出された。

「マリーゴールド!」

 フレアは詠唱中のマリーゴールドを庇う様に飛び付き、すんでのところでそれを回避する事が出来た。一息ついたのも束の間、振り返ってみると魔力が放たれたその場所には、幅は五メートル程で底の見えない大穴が一直線におよそ数キロ先まで穿たれていた。

「なんという…恐ろしい力だ…」

「フレアちゃん…今の一撃で詠唱が途切れてそれとも、の時間は無くなったわ…」

「そうか…」

 歯軋りをしフレアは白髪を見上げる。

「最早奴が死にゆくのを待つしか無いか…」

「ええ…全力で紅玉の破滅攻撃を防ぎましょう。世界を終わらせないために」

 先程の様な破滅的な魔法を放たせないよう、二人は魔力を全開にし紅玉への攻撃を始める。

紅玉は先程と同じく飛び上がって来たフレアを引き剥がそうとするが、そこをマリーゴールドが魔法で援護し紅玉へと剣が届く。甲高い音が響くと紅玉が光出し衝撃波によりフレアは吹き飛ばされたが、すかさずマリーゴールドが飛び上がり紅玉目掛けて魔法を放つ。

二人の絶え間ない攻撃により紅玉は防御一辺倒となり、そしてその時を迎える。

 突如として紅玉は光を失い地面へと落下すると、白髪の女も同じく地面へと叩きつけられ、轟音に包まれていた地獄の戦場は、鳴き声の様に風の音が聞こえる荒野へと戻った。

「終わったか…」

 フレアは白髪へと近寄りそれを見下ろす。

「ええ…そして始まり」

 マリーゴールドがその脇に落ちた願いの紅玉を拾い上げた。

「この白髪の女は封印されていた我が祖先の不滅の肉体…我が種族と人間が手を取り合う事を良しとしなかった名もなき研究者の男が、紅玉に願い見つけ出し己の魂をこの肉体へと移した…そして種族の呼び名を恐怖の象徴であった古きものへと戻し、世界に君臨しようとした…」

「魔族…そして魔王…ね…」

「これは我が種族が起こした戦…世界を混乱させた責は我らにある…なのにその紅玉の処置をお前に押し付ける結果に…」

「破壊出来なかった時は、あたしが紅玉を持ってあちらの世界へ行き管理する…最初から決めていた事でしょ? 嘆く暇があるならこちらの世界を平和にまとめ上げて。それがあたしの願いよ。大丈夫、フレアちゃんなら出来る」

 戦闘でボロボロになったマリーゴールドの体の周りに黄色やオレンジ色の花びらの様に見える魔力の渦が立ち昇る。

「もう行ってしまうのか⁉︎」

「ええ、これを一刻も早く安全な場所へ」

「お前の願い…必ず実現させてみせる…」

 二人はお互い顔を見つめ合い、力強く頷き合った。

「あたしがいなくなってもちゃんと足洗わなきゃダメよ? フレアちゃんすぐ臭くなっちゃうんだから」

「お前にだけは言われたくないわ!」

 マリーゴールドは笑顔を残し花びらの異送空間であちらの世界へと旅立った。

フレアが舞ってきた花びらを一枚掌で受け止めると音も無く消え去り、そして拳を握りしめるのだった。


「…マリーゴールド…」

 リュヌシエールの屋敷の執務室で疲れのためか机に頬杖をつき居眠りをしていたフレアが目を覚ます。

「やれやれ…私としたことが居眠りとは…年はとりたくないものだ…」

 椅子の背もたれにもたれ掛かり天井を見上げて思う。

「マリーゴールド…その花言葉の様に絶望と孤独を与えてしまった…許してくれ…」

 フレアは目を閉じ後悔の念を口にすると再び眠りについた。


 鹿屋家のバルコニーではマリが鼻歌混じりに鉢植えに水をやっていた。

「今日も元気でキレイねー」

 バルコニーに繋がる部屋では母の行動に興味なさそうにお茶を飲む蒼太郎とスマホを見るくれは。フラムはそんな二人を見て気を遣いマリに声をかけた。

「母御よ…その花はあなたが見繕った物なのか?」

「そうよー! フラムちゃんよくぞ聞いてくれました! そーちゃんとくーちゃんったらお水はあげるけど全然興味持ってくれなくってぇ!」

「まあ…そんな感じはするな…」

 母の嘆きに全く耳を貸さず黙々とお茶を飲み、スマホをいじる二人。

「キレイな花でしょ! マリーゴールドって言うのよ。花言葉は、『勇者』『健康』『変わらぬ愛』! あたしにピッタリでしょ!」

 マリは鉢植え持ち自慢げにフラムに見せると同時に、絶望や孤独など皆無の屈託の無い満面の笑みを見せた。

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