第64話 どうか、二人
八月十六日
安静期間が過ぎ、盆休み中の銀次さんとお会いすることになった。
金一さんが全てをセッティングして下さった。
高級レストランの昼の食事会で、静子様は青く涼しげなワンピースに、髪をアップさせていつもより一層お美しい姿で銀次さんを待っていらっしゃる。
体調はまだ万全ではないけれど、食事くらいなら大丈夫だと仰るので、私もついて行くことにしたのだ。銀次さんはまだ来られない。
静子様はかなり緊張しているご様子だ。
金一さんが気を回してあれこれ話を振って下さるので、私も場が静かにならないよう明るく振る舞う。
だが、肝心の静子様のご様子は、いつもより大人しい。
銀次さんがスーツ姿で遅れてやってくると、テーブルの前で立ち止まった。というより、静子様を見てえらく固まっておられる。
一目惚れ――。銀次さんからそのような雰囲気が伝わってくる。静子様もまた、今までに見たこともないような表情で微笑んでいる。
静子様から溢れる雰囲気がとても優しく、これまで閉ざされていたものが広がっていくような、そんな気配を察した。
「初めまして」
銀次さんの顔は真っ赤だ。
「初めまして――メールではお世話になっております」
静子様は恥ずかしそうに返す。なにかとても初々しく、瑞々しい空気を漂わせている。
体調は心配だが大丈夫だろう。私は金一さんに耳打ちした。
「これ以上私たちがいるのは野暮ではございませんか」
金一さんは頷き立ち上がる。私もそれに倣った。
「じゃあ、俺たちはこれで。邪魔しちゃ悪いし」
「え。二人とも食事は」
銀次さんが焦ったように言う。
「いいのいいの。運ばれてきた分は食べてよ。じゃああとは二人で」
静子様が不安げに私を見る。私はにっこりと笑った。
どうか二人、結ばれませ。




