第63話 静子様の覚悟
「顔を上げて」
静子様はゆっくりとそう言った。私はそのとおりにする。
「私、ずっと不安があるの。また誰かを失ってしまう不安が。千福も失うんじゃないかって毎日毎日心のどこかで思っていて私・・・・・・だから人間関係も最小限にしているの」
過去を思い出されたのか、静子様は涙ぐまれる。
「大丈夫です。私は消えませんし、お傍にいますから。共に前を向いて歩きましょう?」
「歩けるかなぁ。私、誰かと一緒になるのが怖くてたまらないの。家族全員一度に亡くしたときはもう、気が狂うかと思った。千福がいなければ今頃どうなっていたかわからないくらい・・・・・・」
静子様は小刻みに震えていた。私は静子様の両手を取り言った。
「今度は絶対になにひとつ静子様から失わせませんし奪わせません。私が約束致します。ですからお願いです。私を信じて下さい。祟りも消え失せています。もう幸せになってよいのですよ。心底安らかになれる日々が、きっと訪れます」
静子様の頬に涙が伝った。私は静子様に気を送り続ける。
「そうね・・・・・・いつまでも殻に閉じこもっていたら幸せは来ないわね」
「はい」
静子様は指で涙を拭いた。
「千福はさっき、ご縁は神様からの授かり物と言ったけれど、その神様って誰なのかな」
「それは・・・・・・やはり大己貴様もとい、大国主様かと」
「それもあるかもしれないけれど、外れ」
「え――」
「私はね、千福だと思うの。千福が持ってきてくれたご縁ならば、大切にしなくちゃいけないわね。それに、五條天神社の神様のご助力で救われた命の中で頂いたものならなおさら。千福がご縁を運んできたものと思って、お会いしてみるわ」
「本当ですか」
「ええ。私もそろそろ覚悟を決めなくちゃ」
私は安心して、渡されたメモを静子様に渡した。静子様は早速、メールをしている。
するとすぐにスマホから音が響いた。
しばらくやりとりをした後に、会おうという話になったようだった。




