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みつかった

 草むらから現れたのは二人の男だった。

 ここにはいるはずのない、青髪の男と……金髪の男。


「待て、先に行くなって言っただろ。」


「お前がトロいんだよ。」


 ヴァリスと、デリスだ。

 ニバリスは思わず、声を出す。

 すると二人の視線がこちらに向いた。


「あ?」


 デリスの眉が動く。

 ニバリスとイッシュを見て……それから倒れた男を見つけた。


「なんだこれ……甘いのと焦げたのが混ざって。

 気持ち悪りぃ匂いだ。」


 デリスが言う。


「……何者?君もこっち側?」


 イッシュが訝しげにデリスに尋ねた。


「はぁ?なんだテメェ……。」

「おい、ニバリス。これはどういうことだ。」


 ヴァリスが、地面に座り込んだニバリスに言った。

 ニバリスは小さく震える。

 責められているようで怖かった。


「し、知らない。わからない。」


 咄嗟に出た嘘だった。

 デリスは鼻で笑う。

 そしてニバリスの襟を掴むと、持ち上げた。


「んなの無理があるに決まってるだろうよ。

 テメェ、よくもオレのコンサートで客取ったな。」


 ニバリスはさらに縮こまる。

 イッシュの視線が鋭くなった。


「お前ら、なに?

 ニバリスの知り合い?

 手を離してくれる?」


 矢継ぎ早にイッシュは尋ねる。

 羽を広げて今にも襲い掛かりそうだった。

 デリスは一瞬、彼を見ると舌打ちしてニバリスを突き放す。


「キメェよ、お前。

 そ(・)ん(・)な(・)こ(・)と(・)す(・)る(・)奴(・)じゃなかっただろ。」


 視線が、地面の男に落ちた。


「……それ、テメェがやったのか?」

 

 ニバリスは金槌で頭を打たれたようだった。

 ニバリスの喉がひくりと鳴る。

 否定しようとして――できない。


「何があったよ。」


 デリスはニバリスに言う。

 言って良いのかニバリスはわからなかった。

 ただ怯えた瞳でデリスを見ることしかできない。


 ヴァリスが前に出た。


「とりあえず、帰るぞ。」


 ぐいと引っ張られる。

 ニバリスはどうしたらいいかわからなかった。

 イッシュがすかさず、ニバリスの腕を掴む。


「離せ。」


 ヴァリスが睨む。

 イッシュは動かない。


「いいの?僕いつでも君たちなんか殺せるけどさ!」


 彼の目は本気だった。

 桃色の瞳が怪しく光る。

 ニバリスが声をあげようとした、そのとき。


「はい、そこまで。」


 テスの声が聞こえた。

 森から彼が現れる。

 頭の葉っぱを払いながら、ふわと笑った。


「クッキー焼いたんで家に戻ってきてください。

 デリスもヴァリスも良かったらどうぞ。」


 気の抜けた声が響く。

 倒れている男には、一切触れずに。

 マグロの描かれたふざけたピンクのニットが浮いて見えた。


「げ、ババァ!」


 デリスが叫んだ。


「ババァってなんですか?

 私はあなたのママ(・・)ですよ。」


 テスが口を尖らせる。

 イッシュは目を丸くして、デリスを指差した。

 答えるようにテスはデリスとヴァリスを指差して、自分を指す。


「あっぶな、殺すとこだった。」

「血の気の多い弟で困っちゃいますね、全く。」


 テスは笑う。

 その様子をポカンとしてデリスとヴァリスは見ているのだった。


 *


「なんか増えてる。」


 帰って開口一番、ラドウィンに言われた言葉はそれだった。

 ソファで寛いでたメフィが、椅子から転げ落ちる。


「なんで、お前たちが、ここにいる!」

「うっせジジィ。」


 メフィは驚きつつもどこか嬉しそうだった。

 耳をぴこと動かして、二人を見る。

 経緯をテスは軽く説明して、お茶の準備をした。

 二階から騒ぎを聞いて降りてきた双子たちがヴァリスを見つける。

 一瞬、隠れようとした。

 だが、その隣にいるデリスを見て叫び声をあげた。


「「デリス⁉︎」」


 キン、と甲高い音が響く。

 デリスを含め、その場の全員が耳を塞いだ。


「うっさ!末のガキか、くっそうぜぇ。」


 バタバタと足音がしてウルツカとネイドが降りてくる。

 そして二人でデリスを囲むと、ペタペタと下半身を触った。


「わー、ほんとにモフモフだ!」

「本物だー!」


「そうか、俺より先に家出てるもんな。

 お前も忘れられてる口か。」


 ヴァリスが双子の頭を撫でる。

 ちょうど、テスが紅茶の入ったティーカップとクッキーを運んできたところだった。


「はーい、餌ですよ〜。

 たんまり食べてくださ〜い。」


 綺麗な焼き目のティークッキーが皿に並べられている。

 メフィが早速つまむと顔を綻ばせた。

 各々、席につきゆったりとした時間が流れ出す。

 デリスは双子の質問攻めにあっていたが、軽くいなしていた。


 ニバリスはそんな光景をどこか遠くで見ている。

 目の前のことなのに。

 クッキーも手につかない。


 先ほどの光景が忘れられなかった。


 ラドウィンが、こちらを見ている。


 目が合う。


 ――逃げ場が、ない。


 自分で自分が信じられなかった。

 変わってしまった、と思う。

 胸が軋んだ。

 空虚な穴ができたようだった。

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