完璧な犯行
「行ーきたい!行きたい!行くの!行きたい!」
「連れてってママ!パパー!」
双子が先ほどから駄々を捏ねている。
メフィとテスに抑えられて、足をバタ付かせていた。
「駄目だ。」
「駄目ですね。」
無情な両親の言葉に双子はわんわんと泣き始める。
トゥッコネリは引いた様子で見ていた。
「俺も行きたいです。母さん。」
「駄目です。ああ言う場所はあなた達にはまだ早い。」
部屋着のサボテンニットが涙でぐしょぐしょになるまで泣きつかれたテスは、チケットを自室に持っていってしまうと微笑んだ。
「はい、チケットは捨てておきました。
諦めてください。」
双子は火がついたように泣き始める。
ニバリスも眉を顰めた。
「「ママのばかぁ!!」」
息の揃った駄々こねだ。
ニバリスも怒って自室に篭ると、ネットでデリスのコンサートの予約を調べる。
しかし……。
「高い。」
そしてどれももう予約済みだった。
耳が自然と下がる。
きっと行ったら楽しいんだろうなとニバリスは考えた。
そして。
きゅる、とお腹が鳴る。
――美味しいはずだ。
今からコンサートに向けて胸がワクワクした。
だがチケットはもう……。
そのときニバリスの頭に悪い考えが閃く。
そうと決まったら実行する他なかった。
*
「いいか?母さんを学校に呼び出したらコンサート連れてってやる。」
双子に秘密裏に言ったのは今日の朝だ。
ふんすと息巻いて双子は、学校へ行った。
若干悪い気持ちもしたが、コンサートに行くことくらい許してくれない母が悪い。
計画のために仕事を早上がりして帰って来る。
父はジムのために今日も遅くなることは確認済みだ。
家に帰ると、母さんはいなかった。
念のため探してみると、学校からの呼び出しがあったと書き置きが残されている。
ニバリスはほくそ笑んだ。
そして両親の寝室のドアの前に立つと息を吸う。
初めて入る場所というのはいつも緊張する物だ。
念のため手袋をしてドアを開けて、中に入る。
そこは初めてみる光景だった。
フリルのついたダブルサイズのベッドに、二人が使ってるパジャマが置かれている。
ベッドの横にある小さなテーブルには本がいくつか並び、小さな写真立てがあった。
大きな鏡の下にある机には、真珠やら貝やら海をモチーフにしたアクセサリーがたくさん並んでいて綺麗だ。
でも、どこか“生き物みたい”で、少しだけ気味が悪い。
母のものだろうが、母がつけているところを見たことはない。
手始めにゴミ箱を漁るが例のモノはなかった。
ニバリスは、キョロキョロと辺りを見渡して他にしまえそうな場所を探す。
しかしどこにもチケットはなかった。
「うーん。」
ニバリスは本棚を眺める。この隙間にしまったのだろうか?
一冊ずつ手に取っていると、妙に軽い本があるのに気づく。
中を開けてみると、それは小物入れになっており、中に紙切れが五枚入ってるのが確認できた。
紙の匂いがする。
ほんの少しだけ、甘い気がした。
すぐさまニバリスはチケットを取って、先日買い直したコピー機に挟む。
余分な白い枠を取り除いたら、印刷しておいた裏面とくっつけて偽のチケットを作り上げた。
それを元のチケットがあった場所に入れておいて、本物を三枚持っていく。
完璧な犯行だった。
ニバリスは部屋を出ると深呼吸をする。
これで行けると安堵した。
なのに、胸の奥が少しだけざわついた。
……まあ、いいか。




