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「我が兄はロメロ・ラバンシア。実妹はカミーナ・ラバンシア。光の聖女に認められたあのカミーナが我が妹です。ラバンシア伯爵家の名に於いて、その責任を負いましょう。この指輪がその証左です!」
と、もはやわたしには用無しになった、家紋が彫られている指輪を掲げて見せる。
それだけでも効果はあるらしい。
「おお、あの」
「新しくブルーバード侯爵になった、あのロメロ様の妹様か」
「それならば、信頼ができる」
どの妹なの? と逆に知りたい気分だった。
ブルーバード侯爵って何? もう少しましな名前を思いつかないの、国王陛下? なんて心で呆れつつ、わたしは客車と先頭車両の双方をそれぞれ指し示す。
「二手に分かれて治療にかかってください。あなたたちの働きぶりを、国王陛下も見ておられますよ」
「そうですよ、私からも報告いたします!」
と、都合よく合いの手を入れてくれたのは、あの車掌さんだ。
彼はにっこりと円満の笑みを浮かべて、わたしの案を諸手を挙げて指示してくれていた。
「なら‥‥‥」
「やるか」
「俺は前に行く」
「なら、俺は後ろだ。誰か、一緒に患者を診てくれ!」
一度やる気になれば、それは大したもので。
彼らの中には、言葉ほどに優れてない医者もいたし、言葉以上の名医も存在した。
「なあ、あんたも治癒ができるんだろう。やってくれよ、セレンディアのお嬢様」
「え? でも、わたしは闇属性‥‥‥」
だけど、闇属性という部分は「いいから、早くしろよ。患者が優先だろ!」の大声でかき消されてしまう。
いいのでしょうか、と車掌さんに許可を求めたら、にっこりとほほ笑んで頷いてくれる。
「あのトンネル、光属性にはなにか問題がある場所だったのかもしれないじゃないか。それでも多くは平気な顔をしているし、闇属性だからって悪さをしたわけでもないだろうが」
「え、ええ。そうです、ね」
「なら、手伝ってくれよ。その――」
と、わたしに向かい、数人の先頭車両に向かうことになった班の彼らは、済まさなそうに頭を掻いて言った。
「あんたに患者を横取りされたような気がしていたが、それは俺たちの未熟、かもな。救われた分、礼はする。今度は俺たちが患者を救う番だ。きちんとあんたのこともフォローするよ、その闇属性のことも、な」
「でしたら、ええ。参りましょう」
「そうこなくちゃ、な。さ、急ごうまだ先には苦しんでいる者がいるはずだ」
そうね、二十人ほどはスウェイが叩きのめし、わたしが呪いをかけたはずだから。
自分がかけた呪いを解除するところをどうにか察知されずに治癒したと見せかける必要があり、それからしばらくはあちらにこちらにと走り回ることになる。
なにせ、スウェイが殴った人にも――食堂車から以降にも呪いをかけた人たちは少なからずいるからだ。
そんなこんなとしているうちに、列車は次の駅に到着してしまっていた。
そこでわたしは重要なことに気づいてしまう。
‥‥‥王都行きの路線は、ここから分岐するんだった。




