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一人ひとり、時間を掛けてはいられない。
わたしのかけた呪いをリセットするには特段、表だって見える者はないのだけれど。
手早くするとなると、ある問題が発生する。
それは、『隠匿者』で全てを隠すには無理があるという、そんな難点でもあった。
「大丈夫ですか? ほら、しっかりして下さい。もうすぐ痛みが消えますからね」
と、息も絶え絶えの彼らを抱き起しては声をかけ、三つのスキルを駆使して、問題の患部を正常に戻しつつ、こちらに敵意や悪意、あのエルスティーネの関係者ではないかということを洗っていく。
総勢十二人ほど助けたうち、怪しいのが三人ほどいたので、彼らにはしばらく眠りについてもらうことにした。
問題は、彼らに治癒や回復を施したら‥‥‥身体から闇色の。薄墨のような霧状のものが治癒をする患部にまとわりついて、完治したらそれが消えるという点だった。
間接的に自身の属性を披露してしまうことになる。
それはスウェイも同様であちらではすでにばれていた。
「なんだ? この黒いのは‥‥‥」
「あ、気にしないで下さい。私、闇属性なので、それが表に出ているだけですから」「闇? 大丈夫なのか‥‥‥」
「大丈夫ですよ、ほら。もう痛くないでしょう?」
「あ、まじだな‥‥‥ありがとう!」
と、和やかな会話が聞こえてくる。
それを耳にして、わたしの治療方法も同様だと見て取った患者たちだが、こちらは特段、気にしてないようだった。
「あんたも、闇属性?」
「そう‥‥‥です、ね」
「そうか。王国じゃ珍しいが、他じゃ普通だしな。‥‥‥助かるよ。どうしてか、自分の治癒スキルが発動しないんだ」
「おかしいですね。わたしは後部車両にいましたけれど、上流の方々が座する車両は神々の恩寵があるのかもしれません」
「くそっ、このトンネルは開発されてまだ間がないからな。もしかしたらとんでもない魔物でも封印されているのかも」
「そんなことはどうでもいいじゃないですか、それより、スキルは? もう使えますか?」
「え? そう言われてみれば。なぜだ、普通に‥‥‥」
スキルが発動しなかったのはわたしの呪いのせいです、などとは口が裂けても言えない。
心を読むスキルを誰かが持っていたらすべてが露呈してしまうから、『隠匿者』にふんだんに活躍してもらった。
「なら、他の方々を助けてください! わたしたちだけでは、手が追いつきません」
「えー‥‥‥。しかし、なあ」
と、彼らは一様に同じ反応をして見せる。
自分が苦しんでいたことは棚に上げて、他人を救うときには金銭を要求しないと気が治まらないらしい。
もうどうなっているのよ、と心で悲鳴を上げた。
こんな守銭奴たちを助けるために、わたしのスキルを使ったわけじゃないのに。
でも、いまは協力を仰がなくてはならない。
さすがに‥‥‥自分たちがやらかした後始末を二人でするには、怪我人が多すぎた。
「では、わたしに金貨百枚でも払いますか? それとも、こんな集団事故が起きた中で奮闘した献身的な医師や治癒師として、王国から褒章されるのと、どちらを選びますか? 名誉はときとして金貨を産みますが?」
「それも‥‥‥そうか」
「報償されるなら悪くない話だ。しかし、誰が請け負う?」
ああ、もう。そんなところにだけ、目端が利くなんて、男って本当に‥‥‥救いようがない。
ここは兄と元夫、そして、実妹の名を借りることにした。




