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そのうち、スウェイがもしかして‥‥‥と、ある可能性を口にした。
「あの猟師、確認をしたのかもしれません」
「確認?」
「夫人がこっちを訪れたのは、本当に偶然じゃないですか」
「それはそうだけれど」
「でも、夫人が来たことは疑いようがない事実ですから。こちらと夫人がなにかこの車内で取引をしたとか思ったかもしれませんよ、リシェル」
「取引、ねえ。どんな取引」
さあ、とスウェイは目を上に向けた。
その中身はどうでもいいのではないか、と言いたそうだった。
それよりも、死にそうだった彼女を治癒したことにより、こちらも仲間と思われた節はある。ここにやってきて、なにかを預け。もしくは連絡を交わして夫人は戻ったと捉えられても、何も不思議はない。
「……で、その短剣から、誰を狙ったか。それは分かったのですか」
「うーん……そこまで正確には、分からないわ。もう時間もそこそこ過ぎているし、でも標的がこのハンカチだった、というのは間違いなさそう」
調べたとき、このハンカチに刺繡された紋章が、一瞬だけれど鮮明に思い返された。
つまり、短刀の持ち主であるパトリックの狙いは、夫人。もしくはその身につけていたこのハンカチ――という線で間違いはなさそうだった。
「エントス夫人がわざと置かれていかれた、とか。そんなオチだったらかなりきついですね、リシェル」
「もしそうなら、わたしたちが今度は狙われる番になるだけよ。でも、そこまでは都合が良すぎでしょう? この襲撃とハンカチのことを知って、残していったって言うなら、それはそれで酷い置き土産だけれど」
残りの二本も貸して、とスウェイの手からそれを受け取った。
精霊を介して誘導したのなら、元の持ち主に戻るように仕向けてやればいいのだ。
それだけで、パトリックという謎の猟師がどこにいるのかが、明らかになる。
‥‥‥三本も投げつけて、命にかかわるような傷を負わないで欲しい。
そう願いながら、わたしは三番目のスキルを発動させる。
『奪還者』はわたしが『追跡者』と『隠匿者』の二つで知った情報を基にして、それまであった何かの痕跡を基に戻すことができる。
言い換えれば、この短剣にかかっている魔法を復元することができるのだ。
もっとも、それは巻き戻しになるから‥‥‥パトリックが移動していれば、こんどはこの短刀たちが彼を追いかけていく羽目になるのだけれど。
「リシェル、なんだか物騒なことを考えていません?」
「え? 気のせいよ。ただ、この三本が、猟師のどこを貫くか、想像してみただけ」
さあ、ほら。戻りなさい。おまえたちの主の元へ。
わたしの命令に従い、短刀が三本、ふわり、と宙に浮いた。
そしてそれらはぐるん、と通路側に向いていたその刃先を窓の方向へと移動させる。
「あれ?」
「え? どういうこと」
と疑問を口にした瞬間、三本の短刀は素晴らしい速度で、窓ガラス割り、車外へと飛び出していった。
「えええ? そんなのあり?」
慌ててスウェイがその行方を視線で追う。
しかし、陽光にキラッと刀身を反射させたそれらは、後続の客車には戻って行かず、まっすぐに森の方へと突き進んでいき――。
「ひっ!」
いきなりスウェイが頭上の獣耳を両手で抑えてしまった。




