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本気? とわたしは眉を跳ねあがらせる。
もちろん、とスウェイはまたしても微笑んでいた。
「えへへ。オルブレイトは元々、獣人の国ですし。なにより、このカナルディア王国よりも文明は進化しております。帝国並みに都会かと」
「呆れた。でも、そうなると子供たちをどうやって――」
「帝国学院の分校もできるそうですよ、そこ」
「あら、本当。でもここで話しても仕方ないわね」
「それはそうですね。しかし、これで当面のやることは決まったかと」
むふーっといい仕事を仕切った後のように、どことなく満足感に浸るスウェイ。
その尾はさっきのとは別の意味で、大きく、自信満々に膨らんでいた。
いや、膨らんだりしぼんだり便利よね、それ。
と、上を見上げると彼女のまだらになった獣耳は後ろに両方とも向いてピンッと立っている。
「騒がしいわね」
「さて? また病人でしょうか」
「そんな雰囲気でもなさそう――」
カラリとガラス扉を開いて廊下を覗き見る。
向かってくるのは車掌さん、あの老紳士、それと――。
「パーシャ様?」
「え? どなたですか、お嬢様」
「さっき倒れていた女性よ。こっちに来られて――でもなんだか引きとめれているような‥‥‥?」
いや違った。
引きとめられているのではなく、彼女の治療をしたいと色々な客車から医師や治癒師が引きとめるようにして、話しかけているのだ。
「お待ちを、ご婦人。王国認可の治癒師の私なら――」
「王都で開業しています、わしならあんたの病を」
「いや、俺こそ神殿で神官の資格を持っている。俺こそが相応しい――」
相応しいもなにも選ぶのは患者さんの自由でしょうが!
思わずそこにいってそう叫んでやりたくなる。
病気の治療を受けるのは本人なのだ。
医者が自分を押しつけてどうするのか――。
「醜い売り込み詐欺が横行しているようですね」
「売り込み詐欺って」
思わず苦笑が漏れる。
確かに。
パーシャ様が倒れているときはなぜか分からないけれど、平民の女性という触れ込みで誰もが治療費を請求できないと忌避していた。
遠慮し、そ知らぬふり、見知らぬふりをして、貧しさというものを寄せ付けようとしなかったのだ。
それが彼女が回復し、それなりの身分であろうという噂が回ったのだろう。
今度は売り込もうと立ち位置を変化させている。
「人間って本当に柔軟に生きることが出来るのね。見習わないと」
「それより、こちらに来られるようですね。謝意を伝えにきたのでしょうか」
「さあ、それはどうかしら?」
遠目からだけれども、容態が良くなったと見て取れる。
血色もいいし、背筋だってちゃんと伸びていて、健康感は増しているようだ。
でもなぜだろう。
彼女の足取りはどこか怒りに満ちた不満めいた足取りのように、見えてしまうのは。




