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 それなら、とスウェイは脇に寄せてあった荷物の山の上から、幾つかの新聞を出してきた。

 単純に、熱くなった食器を運ぶために下敷きにしてきたのだろうと思っていたから、わたしは首を傾げる。

 帝国に王国、魔族の国のものと数種類あるそれは、どれも昨日の日付のものだった。


「いつ購入してきたの」

「最初の旅券を購入しにいったときに、旅の暇つぶしになるかと思いまして」

「てっきり古新聞だとばかり思ってたわ」

「お嬢様はあまりこういったものを読みませんからね」


 どこか呆れたような口調で彼女はそう言った。

 わたしの場合世界の情勢を知るなんていうことよりも古代書物。

 建築学や薬学などが今よりも話を聞いた時代のそれを読む方が好きだった。

 第一、貴族の女が新聞を読み、世論を論じるなんてこと。

 夫が許さなかったのだ。

 だから知りたいと思うことはあっても、与えられることはほぼなかった。


「読みたくないわけではありません。許してもらえなかっただけ」

「そうですね。旦那様は考えの方でしたから」

「もう旦那様じゃないわよ。貴方もそろそろ、侍女って考えを辞めて独立してはどう?」

「私はこの立ち位置がちょうどいいのです。これから先結婚することもないでしょうし」

「どうだか。それで私に何を見せようというの」


 スウェイはあらかじめ隅々まで目を通しておいたのだろう。

 わたしが治癒にかかりっきりになっている間にも、読むことができたはずだ。

 これとこれとこれ、という感じに、少しだけ折り目をつけたページが開かれる。

 それは、王国、帝国、魔族のものに続いてもたらされた。


「まず、王国の新聞。昨夜付けでロメロ様が昇進という言葉が並んでおります。侯爵位におなりあそばすのだとか」

「いいわ、見せなさい」


 読み上げられるのもなんだか億劫なので、自分でさっさと確認することにする。

 兄の昇進、元々の伯爵位をエドワード。元夫が継ぐ、うんぬん。

 光の神殿の聖女? 聖女‥‥‥? と再婚のエドワード様? 

 聖女って誰のこと?


「これってもしかして」

「妹様のカミーナ様のことのようですね。聖女様とは、大した出世をなさいました」

「あの子そんなに偉大な存在になれるほど、素養があったってこと? 姉は闇属性だと忌み嫌われて地下に押し込まれている間に、妹は神殿の最高位にまで成り上がるなんて。はっ!」


 馬鹿馬鹿しくて笑いが止まらない。

 何もかもありとあらゆるものを妹に奪われてしまった。

 ‥‥‥子供達まで、あの夫婦に利用されるのだけは我慢できない。

 でもそれはもしかしたら私の個人的な恨みではないだろうか。

 そんなところに迷っていたら、次は帝国の新聞が突き出されてきた。


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