9話:他人の恋路を見るのは楽しい
本日三回目の更新です。
まだ見てない方は7話からどうぞ!
魔法学園ヤマダ、教員棟地下のコアルーム。
以前よりもグレードアップしたその場所にはコアを中心に円卓が設置され、教員たちが席についていた。
いずれもコアの魂を分割して作ったヤマダ一族であるが遺伝子や魔力などの検査を行ったとしてそうであるとは分からないだろう。彼等はあらゆる観点から見て「独立」した個体であり、文字通り「創造」された存在なのだから。
その根源たるコアは報告を聞いて何度も頷いていた。
今は丁度、キリアンから通信魔法で報告を受けているところだが……。
「……ふーん。じゃあ、キリアンたちは上手くやってるんだな」
『ああ。とはいえ苦労はある……何度縁談を持ち込まれたか数えたくもない』
「凄いな。概ね狙い通りじゃないか」
『それはそうかもしれないけどな……ああ、事前に聞いてなかった問題も見つかったぞ』
「問題? いっぱいありそうだけどどれだ?」
『自力で魔法を習得した奴がチラホラいるみたいなんだ。王家魔法だの秘伝魔法だの、そういうのが結構ある。体系だったものじゃなくて単発だけどな』
「ふーん……なるほどなあ」
キチンと理論化された魔法は魔塔が独占していても、魔力がないわけではない。その中で野生の天才的な人物が何かしらの魔法を1つ作れば、それが秘伝だなんだともてはやされる……というわけだ。
(深刻ではあるけど、魔法そのものへの関心は世界的に高い……まあ、だから魔塔が権力を握れてるわけでもあるか)
「ありがとな、キリアン。その調子でやってくれ」
『ああ』
キリアンからの通信が切れてコアは「ふーむ」と手に入れた情報を反芻していた。
クリスからの報告でもやはり同じように婚約話が数えきれないほど出てきているそうだが、たぶん魔法学園でも似たようなことが起こるだろう。それはなんとも……。
「青春大爆発! いやあ面白いなあ! 学園にレモンの香り漂いそうだ!」
「レモンの香りで済みますかのう……儂も狙われそうな気がしますぞ」
ダリアン校長が苦笑するが、他の教員の面々は困ったような顔や苦々しい顔……色々だ。
まあ、当然だ。「先輩」がああなるのだから「教師」であればどうなるかなど予想するまでもない。
しかも教師陣は皆美形揃いなのだ。狙わない方がおかしいかもしれない。
「あ、そうすると俺だけモテないのか? ちょっと寂しいな」
「コアはコアですからなあ……存在が露見すればある意味でモテるかもしれませんが」
「絶対略奪愛じゃん、物理的な。ヤダよ」
「ハッハッハ!」
「この野郎……」
大笑いするダリアン校長をそのままに、アベルが手をあげる。
「よろしいですか?」
「お、どうしたアベル」
「コアがその気になれば、形を変えて此処から動くことも可能だと俺は推測しています」
「まあ、そうだな」
それはその通りではある。コアがその気になれば自分自身に「設定」をつけて動くことだって可能だろう。それをしないのは何故か?
実際ダリアン校長もそれは理解していたが、言わなかったのはダリアン校長とアベルの性格の差だろう。
アベルは此処にコアが縛り付けられていることに納得がいっていないのだ。
「うーん……これを言って理解してもらえるか分からないんだけどさ」
「仰ってください」
「うん。俺さ、主役になりたくないんだよ」
「……はい?」
「どっちかというと壁とか空気とかになりたいタイプなんだ。そうして永遠に良質な物語を特等席で摂取していたい……」
アベルが大きな疑問符を浮かべているのを見て、コアは「あー、やっぱ分かんないよな」と苦笑する。
「俺が動けば絶対目立つだろ?」
「そうですね」
「そういうのが嫌なんだよ。俺のことなんか気にせず明るく元気に生きてほしい……そして俺はそれを見ていたい……」
「傍観者でありたい、と」
「そういうこと。もし万が一何か動かなきゃならない事態が発生したとしても、人間にはなりたくないな……出来ればそういう役割もキリアンとかに任せておきたい」
コアが人間の姿になれば、間違いなく最強だ。この魔法学園ヤマダのエネルギー源そのものであり、学園最強であるダリアン校長よりも理不尽な力を振るえるだろう。なんか、それが嫌なのだ。
「まあ、気持ちは分かりますがのう……では人間ではないマスコット枠に変化できる「設定」をつけておけばよろしいのでは?」
「なるほど猫か。流石ダリアン、学園に猫は必須だけど、その為に作ったり連れてきたりするのもどうかとは思ってたんだよ」
「そこまでは言っておりませんが……」
この世界にも犬や猫は居る。愛玩動物としても人気であるため、学園に猫がいてもおかしくはない。
とはいえ、最強の猫というのは……ちょっと、どうかとは思う。
「よし、今日の議題はそれからにしよう! 俺はどうあれば皆の楽しい学園生活を特等席で見守れるのか! 優秀な皆の力を貸してくれ!」
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