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魔法学園ヤマダ~転生するなら魔法学園とかやりたいって言っただけなのに~  作者: 天野ハザマ


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8話:あいつらは何者だ、って騒ぎになるやつ

本日2回目の更新です!

 キリアンの最初の活躍から2カ月ほどが経過した。

 黒の魔法剣士キリアン。

 白の聖女クリス。

 突如現れあちこちで人助けをして回る2人の少年少女の名は、あっという間に世界中に広まっていた。

 黒だの白だのというのは、人々が勝手に囁き始めた称号だが……その称号は当然のように黒魔塔や白魔塔のことを思わせる。

 しかしながら彼等が魔塔の所属でないことはキリアンたち自身が「魔法学校ヤマダ」という所属を名乗っていることで明らかだ。今やその辺の子どもですら「魔法学園ヤマダ」の名前を知っている。

 キリアンやクリスに助けられた者のうち一部が持っているという「魔法学園への招待状」は今や謎めいた魔法組織へ行ける鍵として、貴族や王族がこぞって「同行」するべく交渉しているという話すらある。


「交渉だ。交渉だぞ……! 連中のほとんどは庶民だというのにだ!」

「そうではあるが、誰も自分たちに魔法を教えてくれるかもしれない連中の機嫌を損ねたくはないということだろう。何しろ招待状自体が高度な魔法道具であるようだ。激しい拒絶で奪おうとした奴が気絶したらしい」

「ぬぬぬ……! 鉄魔塔の連中ではないのか⁉」

「違うと返答が来ている」

「なら何なのだ!」


 ドン、と。会議室の机が叩かれる。此処は白魔塔。光魔法を中心に取り扱い、そのせいか聖人や聖女と呼ばれる魔法使いを多く輩出してきた。当然神殿とも深い繋がりがあり、数ある魔塔の中でも特に俗世の権力と関わっている場所だ。

 だが、そんな白魔塔出身でも何でもない「聖女」が現れたというのだ! こんな許せないことはない。


「魔法学園ヤマダだと……? 魔法を教える学園? そんな胡乱なものが存在すると本気で思っているのか⁉ 魔塔に弓引く連中が現れると! まだ王権簒奪のほうが現実味があるだろう!」

「おい、言い過ぎだ。何処に目と耳があるか分からんぞ」

「フン、聞かれたからって何になる! 儂らに何かできる者など何処にもおらんだろう!」


 それは事実だ。だからこそ、もう一人の男も肩をすくめて。


「それでも礼節は保たねばな。儂らは偉大なる白魔塔の元老会なのだから」

「チッ……まあ、それもそうか」


 元老会。それは魔塔の要職にあった者たちで構成される機関だが、魔塔主に様々な面で助言を行ったり権勢を振るったりする……まあ、そんな感じの場所である。

 先代魔塔主も此処に所属するため、魔塔主であろうとも中々に頭が上がらない。

 そんな彼等が話しているのは魔法学園ヤマダに関する罵詈雑言ばかりに思えるが……どうにも、それだけではない。


「それでクリスとかいう子どもの足取りは掴めたのか?」

「まだ分かっていないようだ。愚民共はその話になると知らんと口を噤むようだ」

「何を生ぬるい! そんな連中、魔塔の力で少し脅せば口を開くだろう!」

「そうだ。諜報の連中はたるんでいる! いっそ追撃部隊を出すのはどうだ? 白魔塔の権威に対する挑戦だ、充分に名分はあるんじゃないか?」


 段々ヒートアップしてくる会議の熱を、一つの溜息が抑え込む。

 この中で一番若そうに見える元老はしかし、常若……高い魔力を持つが故の若さを誇り、プライドばかりが肥大した元老会の中では今も確かな実力を持ち続けている。


「何が追撃部隊だ、他の魔塔に笑われたいのか」

「し、しかしアーク様。これは白魔塔の、ひいては世界の秩序を乱さんとする行為です」

「そうです。今のうちにどうにかせねば」

「まずはこのキリアンとクリスとかいう子どもの裏をしっかりと見極めるのが先だろう。他の魔塔も本当に魔法学園なんてものがあるのか探っているはずだ……あるなら、相当な実力者が裏に居るはずだからな。どうにかするのはそれからだ。黒幕さえ分かれば潰すのも容易い」


 恐らくは何処かの国が裏に居るのだろうと、そうアークは推測していた。

 魔塔の権勢を削ごうとする連中は何時の時代もいたものだ。それでもそうなっていないのは、魔法を独占する魔塔の体制が盤石であり、多少面倒な国が幾つかあるにせよ……国という単位であろうと魔塔と本格的には敵対できないからだ。


「諜報部隊の数を増やして、他の魔塔とも連携を深めるんだ。網を大きく細かくしていけば、何処かで必ず引っかかる」

「は、その通りに致しましょう」

「ああ」


 確かに多少魔法が使えるのだろうことはアークも理解している。

 特に魔法剣士だなんだと言われているキリアン……何処でそんな大道芸を仕込んできたのかは分からないが、魔塔に取り込むには良い技術であるようにも思える。


(とはいえ、だ。その手の旗印を捕まえてみれば、つまらん詐欺師だった例は多いと聞く。今回もそういう類かもしれんが……)


 それでも、もしかしたらという期待はある。自分の知らない新しい魔法の可能性。

 それは白魔塔の実質的な頂点であるアークの心をも知らずのうちに揺らしていたのだ。

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