89話:ダンジョン再挑戦!
昼食を終えたエピンたちが売店に行くと、珍しく人がいない。お昼時だからだろうか?
携行食も売店で売ってはいるが、ダンジョンの外にいるなら食堂に行ったほうが良いし、エピンたち新入生がそういうものを必要とするのはまだ先だろう。
と、いうわけで……エピンたちが見ているものは前衛用の武具だった。貴族の生徒たちがたまに見ていたりするが、お値段のこともあり中々手が出せていないシリーズではある。
「今の鎧は鉄製だろ? このグレートアーマーがいいんじゃないか?」
「うーん……確かに今着てるのより相当強いけど……これ全身揃えるのは今は無理だよ」
「何言ってるんだ。俺も出すって言っただろ。あと武器も買え、武器も」
「流石に棒はないよ。自作だし」
「槍でいいだろ」
ワイワイと話しているエピンとイヴァンは鎧の前で値段や性能を確認していたが、売店の装備は将来的には鍛冶魔法で作った装備には敵わなくなってくるだろう。特に強化することを覚える頃になってくれば鍛冶魔法は更に輝くはずだが……まあ、さておいて。そんな二人の背後でカリックスは静かに見ていたが……イヴァンが購入したグレートアーマーを着込んで、メタルスピアを持って今持っているものを下取りに出して、と。そこまでやった時点で、紹介状をカウンターに置いていた。
「あら。これを持って来たということは……そういうことですか~?」
「……はい。収納魔法を、教えて、ください」
そこでイヴァンは「あ、俺もお願いします!」と手をあげて。エピンも少し迷ってから「俺にもお願いできませんでしょうか」と頭を下げる。
「ふふふ~。売店の業務が滞ってしまうので、こっちを専攻にする人以外には紹介状なしでは授業料を頂いてるんですけども~……ま、皆さんお友達みたいですし、いいですよ~?」
「ありがとうございます!」
そう、この授業料がとっても高く設定されているので手を出せなかったのだが……カリックスの紹介状のおかげでどうにかなったというわけだ。
「では早速ですけど~、まずは亜空間というものについて理解していきましょうか~」
……そんないきなり始まる高度な授業から1時間後。内容をしっかりと理解できて発動まで出来たのはカリックス一人であった。
また学びたいと思えば今度は紹介状を持って来れば生活魔法に関しては他の授業と同じように無料でやってくれる……というのは非常に助かる話ではあるのだがエピンもイヴァンもすっかりげっそりとしていた。
「収納魔法……分かってはいたが高度過ぎる魔法だな……」
「ほんと、カリックスはよくアレ1回で理解できたね?」
「……ん、まあ。死霊魔法と通じるものがあったから」
ダンジョン前広場で座りながら話していた三人だが、やがてエピンは「よし!」と声をあげ立ち上がる。全く知らない概念に頭がクラクラしていたが、次回はアベルに紹介状を貰って今度こそ覚えようと決めていたし、それはイヴァンも同じだ。
「よし! それじゃあダンジョン再挑戦、行くか!」
「あ、その前に掲示板見てみようよ。何か面白いもの出てるかも!」
「そうするか」
仲良く3人並んで取引掲示板の機能を見ていく三人だが……その表情はやがて、非常に真面目なものに変わっていく。
火難除けの指輪。こんなものがあることにイヴァンは驚いた。
エピンはマジシャンズメイルに何か心の中の男の子の部分が反応するのを感じていた。
魔法の杖にもなるというのは凄い。イヴァンの作ったアイアンドラゴンスタッフを握っていなければ、どうにかして買おうと算段をつけるところだった。あと値段もエピンを正気に戻した。
「10万イエンか……ちょっと今の稼ぎでは無理だな……」
「あ、エピン! もしかしてマジシャンズメイル見てる!?」
「僕は、冷感のインナーも……いいと思うな」
「確かにそれもいいかもだよね」
しかしまあ、高くて買えないのは事実だ。インナーは少し安めだが、今すぐ必要かと言われれば別だ。別だが……イヴァンは、製作者の欄にハリエットの名前があるのを見て尊敬の念が凄いことになっている。まあ、すぐに必要ないものは買いはしない……ということでエピンとイヴァンの新しい装備のお披露目となったわけ、なのだが。
「……構成、スケルトンナイト」
イヴァンとエピンの目の前で組み上がっていくフル装備のスケルトン3体が盾を構え剣でゴブリンたちを切り裂いていく姿は、あまりにも圧倒的に過ぎた。
覚えた収納魔法に鉄の装備一式を3つ収納していたカリックスだったが、早速それが役に立っているわけだ。
「わあ、凄いなあ……俺の出番、あるかなあ」
「安心しろイヴァン。俺の出番もないぞ」
「ふ、二人には……二階でお願いする、から」
少なくとも一階層ではカリックスのスケルトンナイトたちがゴブリン相手にオーバーキルなくらいに活躍して。非常に良い勢いで再びの二階層へと突入できたのだ。




