84話:ドラゴンソードのキーホルダーもコアは好き
さて、鍛冶魔法とは何か? 言うまでもなく魔法である。
鍛冶は技術であり、鍛冶魔法も技術。しかし、この二つは明確に違っている。
たとえば鍛冶では当然ながら各種の精錬された金属を用意した上で各種の工程を行うだろう。
しかしながら、鍛冶魔法は違う。簡単に言うと鉄鉱石から直で製作を行えてしまう。
それだけではない……そこに込める魔法効果だけではなく、たとえば「メタルセイバー」の材料と作り方を知っていれば成功するかどうかはさておき作れてしまうのだ。
レシピが頭の中に記録される、というべきだろうか? 完成させるのは技術だが、その工程を間違えることはない。それが鍛冶魔法だ。そしてそのレシピは伝授されることもあれば開発することもある。
今ハリエットがやっているのはまさに、そのレシピを作る工程であり……それはどれだけ「完成品」を自分の中で想像し、鍛冶魔法という魔法に流し込めるかで変わってくる。
「目指すのは魔法使いの鎧……肩鎧に魔石を嵌めこんで巨大な肩鎧に……必要な材料は魔力銀、赤の魔石……あとは……」
材料を収納魔法で取り出し、鍛冶台に並べていく。ふう、と集中するために深呼吸して。ハリエットの手には鍛冶用の槌が握られている。魔力が込められ輝く槌を、イヴァンは緊張の面持ちで見守る。
「……よし、決まった。鍛冶魔法、鎧、名称『マジシャンズメイル』。鍛造……開始!」
魔法の炎が燃え上がり、ハリエットが材料を叩き、伸ばし、整え……その形があっという間に鎧に変わっていく。やがて出来上がった鎧は銀色に輝き、凄く大きな肩鎧には真っ赤な魔石がはめ込まれている。
美しい鎧だ……そして肩鎧が凄く大きい。
近くにある鎧立てにハリエットが飾っているが、物凄く肩鎧が大きい。狭いところに入るのが難しそうだが、それを差し引いてもカッコいいし、イヴァンが見る限り肩鎧には魔法の杖としての機能が追加されている。あの魔石がその機能を果たしていることは明らかで、イヴァンはハリエットの想像力……鍛冶魔法使いとして必要なものが自分より遥かな高みにあることを理解していた。
「……恐れ入りました、ハリエット先輩。俺はまだまだです」
「ふふーん。精進するといいよ、イヴァン!」
「俺、頑張ります!」
これなら着けて死ぬのも不足はないって可愛さ&カッコよさ。
その言葉の意味が、イヴァンにもようやく実感として分かってきていた。
確かに。確かにあの鎧のでっかい肩のところはデザイン的にもっと小さく作れたかもしれない。
けれど、格好いいというのはよく分かる。エピンにもきっと良く似合うだろう。
……けれど。エピンが今後長く使う装備はやはり自分で作りたい。
(いきなり凄いものは作れない。でも、必要なものは俺が一番良く知ってる……!)
デザインはドラゴン……レッドドラゴンだ。火のブレスを吹く強大なるドラゴンをイメージした杖。
大きく開かれたドラゴンの口元にファイアオーブを咥えさせる?
以前手に入れた初心者のファイアオーブは拳よりも大きい。となると、ドラゴンの頭もかなり大きくなってしまう……不格好だ。ならドラゴンの上半身をイメージし、腕に抱えさせる形がいいだろう。
素材は……鉄鉱石しかないから鉄製になるが、大きさはどれがいいだろう?
今回のデザインを考えるにワンドは論外だ。ロッドでもいいが、かなりバランスが悪くなる。
なら……スタッフだろう。長杖であれば重さのバランスは丁度いい。勿論、その分重くはなるけども。
「……イメージできた。イヴァンの杖が……!」
どう作るべきか、材料は何か。それはすでにイヴァンの中で見えている。
鉄鉱石をザラザラと出して、初心者のファイアオーブを置いて。コガンダやハリエットのものと比べると、初心者用の槌を取り出して。
「鍛冶魔法、両手杖、名称『アイアンドラゴンスタッフ』。鍛造……開始!」
槌を振るう。魔法の炎が鉄鉱石を鉄へと変え、イヴァンの望む形へと変えていく。
イヴァンの想像する通りのドラゴンの上半身を模した杖。その腕には真っ赤なオーブが抱えられて。
「……出来、たあ!」
鍛冶台の上に置かれたのはイヴァンのオリジナルレシピとしてイヴァンの鍛冶魔法自体に登録された杖。ハリエットの目から見れば今の時期としては充分すぎるほどに優秀な出来。
コガンダの目から見れば大分荒いところもあるが、それでも評価出来る。
さっき学んだことを自分のものとして会得できているのは、素晴らしいとしか言いようがない。
それをハリエットも分かっているからこそ、コガンダを肘でツンと突いて。
「あー……イヴァン。良い出来だぞ。やったじゃねえか」
「はい! お二人ともご指導ありがとうございます! 俺……早速これをエピンに届けてきます!」
「おう、行ってこい」
「行ってきます!」
杖を掴んで走っていくイヴァンを二人は見送って……開いたままのドアから、白猫コアがひょいと顔を出す。
「やっぱ男の子っていえばドラゴンだよな。ブラックドラゴンとか」
「貴方はエレメンタルドラゴンでしょーが」
「正直そっちの姿を見せる機会がないから俺自身忘れかけてるよな」
無いほうが良いんだけど、と言う白猫コアは本当にどうしようもないが……そんな機会がないほうがいいのは事実なので、ハリエットもコガンダも唸るしかできなかったのである。
忘れがちな、コアが自分にやった設定
名前:エレメンタルドラゴン
役職:エネルギーコア
魔法学園ヤマダのエネルギーコア。その本来の姿はエレメンタルドラゴンと呼ばれるドラゴンの変異種。
精霊のごとき力を扱うエレメンタルドラゴンは学園の始祖ヤマダと共に「理想の学園」を作る為、自身の姿を変えエネルギーコアになることにした。コア形態、世界を見て歩くための猫形態、子竜形態、竜形態に状況に応じて変化可能であり、何処に居ても学園の機能は維持できる。




