81話:間違いながら学ぼう
さて、無事に地上へと戻ったエピンたちは地面に座り円陣を組んでいた。
キャリーゴーレムが回収したものは鉱石類を除いて全部売り払い、学内通貨は3人で平等に分けている。
結構小銭が多いのは相変わらずだが、今は取引掲示板で入金も出来るのでそんなに量で困ることはない。なので、今悩むべきことはオークとの戦いの振り返りと、オークと安定して戦うための「必要なもの」探しだ。
「やっぱり火力じゃないか? 俺の使える魔法でオークを一撃で倒せると確信できるものがない」
「エピンが言うならそこは否定しないけど、僕が前衛をする際の防御の不足はあると思うな」
「……死霊魔法でもっといいものがないかな、とは思う」
3人それぞれが「自分の悪かったところ」をあげるのは、まさに3人の性格を現わしているが……いつのまにか近くに座っていた白猫コアは心の中で「うんうん」と頷いていた。
(まあ、実際全部だろうな。オークはゴブリンとは身体能力が段違いだ。リリカとキアラがある程度上手くいってるのは、キアラのロックゴーレムが強いだけじゃない。リリカ自身が攻守揃った確かな前衛として機能してるからなんだよなー。つまるところゴーレムを借りるなら正解はファイターゴーレムだったんだが……ふふふ、間違いながら成長していくといいぞ。それも青春だからな!)
勿論、探索支援ゴーレムに頼らずともやり方は色々ある。ハリエットなどはまさにその正解の1つであるわけだが……「良い装備で固めて」「召喚魔法で自分に足りない部分も埋める」はどんな状況でも対応できるということを示している。
(見て学べ、とはよくいったもんだが……まずは手本を見せろ、あと説明もしろ……だっけか? まあ、そうだな。一応俺が考えても変なことになりそうだし、ハリエットに相談しておくか?)
白猫コアが今ハリエットは何処に居たっけか、と学園マップを自分の視界に展開して見ていると……意外にもカリックスが打開案を提示していた。
「……新しい死霊魔法を、学ぼうと思う。前衛が出来るような魔法が、きっとあるから」
「俺は……そうだな。オークでも倒せる属性魔法をアベル先生に聞いてみようと思う。勿論、すぐに取得できるとは思わないが」
「とすると……俺はまず、アベルの杖を作るべきだね。この前のオーブを使う時は今だと思う」
そんな3人を見て、白猫コアは黙って学園マップを閉じる。エピンたちは自分なりの正解を見つけようとしている。であれば、そこにわざわざ干渉する必要もないだろう。
「よし、なら決まりだな! 各自の進捗については毎日、昼に食堂で報告し合おう。しっかり準備をして再挑戦するんだ!」
「うん。頑張ろう!」
「……僕も、頑張るよ」
エピンとイヴァンが拳を握り、カリックスもそれを真似して。ふと何かを思いついたようにエピンが、その拳を前に突き出す。それを見ていたイヴァンが気付き拳を打ち合わせて……戸惑うカリックスにエピンが手招きすれば、カリックスもおずおずと……けれど、しっかりと2人の拳に自分の拳を打ち合わせる。そうすると、何故だろう……なんだか不思議な一体感があるのだ。
「……なんだかコレ、いいね」
「だろ? 前に見て、いいとは思ってたんだよな」
「エピンって、凄くリーダー感あるよね」
「分かる」
「ハハ、なんだよ。褒めても何も出ないぜ?」
少なくとも白猫コアのアルカイックスマイルは出ている。思わぬ友情イベントに出会えたせいだろう……本当に幸せそうだ。喉もゴロゴロ鳴っている。
「それじゃあ、一度解散だ。また明日!」
去っていくエピンたちを見送ると、白猫コアもその足で売店へ走っていく。幸いにも生徒は誰もいないようで、ケイトに軽く尻尾を振ると生徒の入ってこないバックヤードへと入れば……そこには何かを作っているハリエットの姿があった。
「あれ? えーと……」
一応ハリエットは周囲に誰もいないのを確認するとドアを閉めて「どうしたんですか?」と聞いてくる。この辺り、まだ白猫コアの突発的行動に慣れていない証拠であるがさておいて。
「いやまあ、用事はあったんだけどさ。何作ってたんだ?」
「あ、これですか? 彫金魔法でアクセサリーを1つ。如何にも練習用で作りましたー、みたいなのを流しておくと取引掲示板も活性化するでしょ?」
「あー、まあな。今あそこ、たいしたもの取引に出てないもんなあ」
「キリアンが下の階で出る鉱石とかアイテムを高めで出してはいるみたいですよ」
「まあ、そういうのも必要だよな。なんかサクラみたいな感じだけど」
「今は仕方ないですし、憧れにはなるんじゃないですか?」
「かもなあ……」
「で、コアはあたしに何のご用事です?」
机の上に転がる白猫コアをハリエットが転がして、へそ天にさせているが白猫コアはされるがままだ。サービス精神というやつだ……。
「んー、思ったんだけどな? ハリエット、お前……なんか凄い装備作ってみないか? あくまで先輩レベルで作れる範囲内で、他の生徒に指針みたいなの示せるやつ。あと、あからさまに趣味みたいなやつ」
「うわー……嫌な範囲で細かーい」




