78話:こいつは凄いよ!
探索支援ゴーレムのレンタル開始。その知らせは売店に大きく張り出され、店内に並べられたサンプル5体を見に来た生徒たちはそれぞれ感嘆の声をあげていた。
ファイターゴーレム、マジシャンゴーレム、シーフゴーレム、そしてキャリーゴーレムとクッキングゴーレム。
「ファイターゴーレムか……これがいると便利だよな。壁になってもらえるし」
「いやあ、究極的には召喚魔法使いのほうがいいんじゃないか?」
「なあなあ、シーフゴーレムの罠解除の成功率ってどのくらいなのかな?」
「マジシャンゴーレムのヒールって凄いけど、こんな魔法あるなら覚えられないかな?」
「そもそも回復魔法の先生って誰だっけ。保健室の先生?」
「キャリーゴーレムの収納魔法ってなんだよ!? え、そんな魔法あるの!?」
「クッキングゴーレム、地味に凄いけど使いどころは何処だろう……」
まずは概ね……だが、教師陣の意図した通りになっていると言えるだろう。探索支援ゴーレムの有用性と、ゴーレムの使える魔法を自分たちで学ぼうと考える者……そして召喚魔法使いは「魔法を使えるゴーレム」という新たな可能性に目を輝かせていた。
そして……鍛冶魔法使いであるイヴァンはファイターゴーレムに頬ずりしそうなほどに目を輝かせていた。
「うわあ……見てよ二人とも! ゴーレムなのに鎧に武器に盾まで! これが自分専用なら、自分の作ったものを試し放題になるんだよ? 俺、召喚魔法も習おうかなあ!」
「まあ、そういう考え方もあるか……だがこれはレンタル品だからな?」
「そうだよね。あー……うん。召喚魔法も習おう。俺、決めたよ」
「……確かに、あると便利そうだよね……」
カリックスがイヴァンに同調すればエピンも「そうだな」と頷く。このゴーレムが凄いことは言うまでもなく、購入品であればエピンも目の色を輝かせていただろう。
しかしレンタル品ではあるし、こんなものを学園側が導入した理由は明らかだ。
「まあ、あくまで代役に過ぎないだろうな。基本的な魔法しか使えないようになっているのがその証拠だ」
「……うん、それは……僕も、そう思う。ダンジョン探索で、必要になってくる技能を……教える意味も、あると思うな」
「もう、急に現実に引き戻してくるのやめてよ……でも実際、俺達にはシーフとキャリーは必要なんじゃない?」
イヴァン自身、しっかりと自分たちの状況を見据えているしゴーレムの限界もしっかりと考えていた。恐らくだが、あまり深い階層に連れていくのは無理である程度の能力なのだろう。それまでに自分たちのやり方を構築しろという狙いなのは分かっている。此処にあるものは全てが教育なのだから。
(……でも、これは本当に凄い技術だ。ファイターゴーレムとマジックゴーレムを量産できるだけで、エピンの家の問題も解決するかもしれない。うん、絶対覚えよう……!)
ゴーレムの概念を覆す、そんな技術だ。イヴァンは本当に心の底からそう思う。これの存在を知ることが出来ただけでもイヴァンは魔法学園に来てよかったと言える。しかも学べるのだから、魔法学園ヤマダ最高! と叫びたいくらいだ。
「で、どうする? 俺達は借りる?」
「そうだな……悩みどころではあるな」
今のエピンたちの構成は、まず鍛冶魔法使いであるイヴァンが前衛。属性魔法使いであるエピンが後衛で、死霊魔法使いであるカリックスも後衛だ。カリックスについてはどんなことが出来るかを知るためにこれからダンジョンに潜ろうという話ではあったのだが、そこにこのゴーレムの登場だ。出来れば安全にやりたいと思っているから、あからさまに足りないところを補強するのは良いことだ。では、何処が穴か……となれば、やはりシーフゴーレムの持っている魔法だろう。それは間違いない。
「シーフゴーレムは確定だろうな……とはいえ、キャリーゴーレムも欲しいな。イヴァンの負担を軽く出来る」
「……そう、ですね。僕も……二人の意見に賛成、です」
「よし! 借りる代金は……1体500イエンか……結構するけど……いや、安いほうか……」
ダンジョンから戻ってくるまでの貸し出しとなれば、長く潜れば潜る程お得になるといっていい。そしてそうなるとクッキングゴーレムの利便性も見えてくる。水を作り出し食材があれば料理もしてくれるクッキングゴーレムは、数日間ダンジョンに潜るような状況で心と体の助けになるはずだ。
「ケイトさん! 決まりました、シーフとキャリーのレンタルをお願いします!」
「は~い。言うまでもなさそうだけど~。ゴーレムに頼り過ぎないようにね~?」
「ええ、勿論です。どういう形で補完するかは……考えないとですが」
「ふふ~、えらいえらい。じゃあ1000イエンになります~」
支払いと共に奥からゴーレムたちが歩いてきて……その実際に稼働する様子を見て、他の生徒たちもどれを借りて誰が幾ら払うかを真剣に話し合い始めたのだ。




