77話:終わった後が教師たちの時間だ
魔導祭は大好評で終了した。露店を出していた各教師は来ていた保護者たちからの「こいつを是非次期の入学者として推薦したい」という内容が長ったらしく書かれた推薦状を山のように受け取っていたが……まあ、それ含めて想像通りといったところだろうか?
「さて、まずはお疲れさま皆。どうだった?」
「面倒でしたがまあ、やった価値はあるのではないですかな?」
「縁談を持ち込まれるのは勘弁してほしいな。なんで肖像画を持ち込んでいるんだか」
「占い、次回から値段上げてもいいかなって……」
占術魔法教師のオリビアが円卓に突っ伏しているが、まあ仕方ないだろう。今日一番忙しかった可能性すらある。あと縁談を持ち込まれたアベルはやはり顔がいいのと担当している魔法のせいだろう……さておいて、ほとんどの教師の感想は「やった意味はある」で統一されていることにコアも「うんうん」と頷いてみせる。
「次回以降は基本的に生徒に露店を出してもらうつもりだけど、そこに向けてのテストケースにはなったな」
「それより聞きましたぞ。魔塔の魔法使いが妙なことを企んでいたと」
「あー、あれな」
コアが威圧だけで制圧したが、まあアラーム機能を作っておいてよかったというところだろうか。
一応魔法学園には外敵から学園を守る機能はついている。いるが……内部工作に対する機能はあまりない。毎回コアが対応するのも面倒ではある。面倒なものを素直に面倒と思えるのはコアの正直さの証である。
「やっぱ内部を守る機能は必要だよなって思った。で、それをどうするかなんだが……ハリエットとケイトを上手く活用しようかなって。あとはウルだな」
「え? 私ですか?」
「あ~。もしかして~、ついでに売店にも何か追加しようとしてます~?」
「ボク? てことはゴーレム?」
疑問符を浮かべているハリエットと比べるとケイトとウルは察しがいいが、この辺りは生徒と教師の設定の差だろうか?
「もしかしてだけどさー。騎士ゴーレムを学園内で闊歩させようとしてるでしょ。アレ、一応生徒寄せなんだけどー?」
「してるぞ! ああいうのをさー、警備に回してさ。ついでに学園内でダンジョンのお供に連れ回せたら面白いと思わねえ?」
「うーん……まあ、製作系の子は重宝するだろうけど……自分の召喚物でもないゴーレム頼りになるのは良くないと思うなー」
「まあまあ。制限をつければ良いのでは? ゴーレム頼りでは奥に進めないなどの能力制限があればよろしいかと思いますがな?」
「ダリアンこうちょー。それはそれで良くないよー。ゴーレムのイメージが悪くなるじゃない。でも警備に使うのは賛成かなー」
ワイワイと始まった議論だが、ケイトがパンと手を叩いて全員黙らせる。
「ちょっといいですか~? 今思いついたことがあるんですよ~」
「おう。どうしたケイト」
「今回の魔導祭ですけど~、知らない魔法を生徒が知ることも目的でしたよね~?」
「そうだな。それがどうしたんだ?」
「ダンジョン探索補助用のゴーレムにですね~? 各分野の初期魔法を仕込めたら面白いと思いませんか~?」
たとえば属性魔法のファイアとアイス、回復魔法のヒールだけを使えるマジシャンゴーレム。
たとえば生活魔法の鑑定や無属性魔法の解錠、罠解除だけを使えるシーフゴーレム。
たとえば召喚魔法と武術魔法の象徴として剣、盾だけを使えるファイターゴーレム。
こういった基本的な魔法を使えるゴーレムを用意すれば、自分たちに足りないものを知れるし……より深い階層を目指そうと思うのであれば、その分野のエキスパートが必要だと知ることが出来る。
そして必要な魔法を持つメンバーが足りない場合でも、ゴーレムをレンタルすることで「とりあえず」の穴埋めをすることが出来る。
「とまあ、こんな感じですね~。レンタル料は安くもないけど高くもなくって感じでいいと思うんですけど~。形としてはウル先生からの委託ってことでいいかなあって」
「ふーん……どうだ、ウル?」
「うん、いいと思うよ。それならアリだね! それなら警備ゴーレムもさー、緊急時に出てくる仕組みでいいんじゃない? 詳しい魔法系統とかは後回しでコアがそういうの作れるでしょ?」
「えー? まあ出来ると思うぞ。ちょっと待ってな?」
【魔法学園ヤマダ全体メニュー】
・学園施設作成・拡張
・人材創造
・研究
・特殊
研究コマンドで「魔法研究。学園内に特定のゴーレムを召喚する魔法」と入力すれば即座に反応が返ってくる。
―魔法の創造に関する研究です。魔法陣による設置型召喚魔法と位置付けます。よろしいですか?―
「設置型召喚魔法か……完成したらダリアンとウルにも結果を入れといてくれ。出来るか?」
―魔法研究実行中……100%。結果をコアと該当人物へ転送します―
「おお、入って来た……どうだ、出来るかウル」
「まずはさっき言ってた4タイプの作成からだねー。ケイトもだけど、ハリエットも使ってるってことになるんだから特徴覚えてねー?」
学園内の警備と、売店初のレンタル商品である探索支援ゴーレム。前者は生徒が知らなくてもいいことだし、後者は生徒からどんな反応が返ってくるのか?
コアとしてはちょっとドキドキであったが……翌日のイヴァンの反応は、そんなコアの心配を吹き飛ばすようなものだった。




