71話:将を射んと欲すれば先ず将を射よ(タイパ抜群)
「問題? お前そういうの好きそうだと思ったけど」
「ハハハ。何事にも限度というものはありますからのう」
実際のところ、今日此処に来た保護者たちは魔法学園ヤマダの実力を……個々で受け止め方は違うが充分に理解しただろう。
で、あればどうするかという話だが、大抵の場合は生徒の将来の引き抜き……については大抵紐付きなので一端様子を見るとして、すでに彼等のうちのほとんどは「次回以降」に目を向けている。
先輩としてのキリアンたちの存在、そして今回大規模に受け入れた生徒たち。
であれば、次回がないなどと誰が言えるだろうか? 教育機関として始動した魔法学園ヤマダの凄まじい実力はその目で確認した。身分も何もかも問わないのも知っている。
……だが、出来れば次回は招待状そのものが欲しい。出来れば自分たちの望む人物に。
しかし、それを望むのならば誰に言うべきか?
決まっている。ダリアン校長だ。何しろ魔法学園ヤマダで一番役職が上の人物だ。頼むのであればそうであるに決まっている。
しかし皆で集まってガヤガヤやれば嫌われるのは必至。可能であれば最初に交渉して結果を得たい……!
「とまあ、そんな感じでやる気満々の保護者たちが儂を探しておりましてのう。教員棟の前にすでに人がワサワサおりますでな。ま、どっちにしろ教員以外は入れんのですが……学園内に出ていて不在という形の方が波風は立たんでしょう?」
「それで逃げてんのか……いやまあ、確かに次以降の募集の形は決めてなかったけどさ」
「そうでしょう。まあ、儂としては招待状方式が良いとは思いますが……どこぞの誰かにくれと言われて予約してやるのは……違いますからなあ」
「だよなあ。ま、その辺はまた考えよう」
ひとまず後回しにすると、白猫コアは「そういえばさ」とダリアンにこそっと話しかける。
周囲には誰もいないし近づいてこないのも知っているが、こういうのは何となく小声になってしまうのだ。
「……職人系の先輩ってさ、必要じゃね?」
「今更そんなのをどう出そうと?」
「正論で殴るんじゃねーよ。いや、俺も憧れの先輩っていうとバトル系しか想像してなかったけどさ。そういうのもアリなんじゃないかって思ってる」
「まあ、そうですが……今更が過ぎますぞ。何処で何をしていた設定にするおつもりで?」
「やっぱ無理?」
「うーむ……」
ダリアンは真面目に考える。そもそも「先輩」が受け入れられたのは魔法学園ヤマダの現状が不明だったからだ。今となっては学園内を生徒もウロウロしており、「謎の先輩」は何処に行っていたのだという話になってしまう。つまるところ、何処かから勝手に生えてきた感が否めないのだ。
だから無理が過ぎる、のだが……そこでダリアンはハッとする。この学園であれば抜け道があることに。
「いや……出来ますぞ!」
「お、なになに!? 聞かせてくれよダリアン!」
「ケイトの生徒ということにしましょう。その上で生産系の先生方にも教えを乞うているということにすれば……」
「え? あ、そうか。ケイトも実は教師だって皆気付いてねーもんな」
「ハハハ。アレは『売店担当』と書いたコアが悪いと思いますぞー?」
そう、実は売店のお姉さんであるケイトも望めば魔法を教えてくれる。将来商売をするのであれば覚えたい収納魔法に整頓魔法、掃除魔法……そうした生活魔法の教師であるのだから。
「で、それだとどうなるんだよ。見えないところにいたって?」
「あるでしょう。見えない場所が」
「んー……? そんなのあったかあ?」
売店のバックヤード……いや、違う。きっとそういう話ではない。で、あれば。
「……あっ。そうか、ダンジョンか?」
「そうです。ダンジョンに潜っていたから今まで出会えなかった。この話を疑う生徒など居ませんからな」
「流石ダリアンだぜ……よし、なら……こう、だな!」
名前:ハリエット・ラピス
役職:生徒
生活魔法を主として学ぶ生徒。召喚魔法や服飾魔法、彫金魔法など使えそうなものは片っ端から学んで一定以上の練度で修めている天才であり、変人でもある。ダンジョンに潜り実力磨きついでに売店の商品補充手伝いもしている。将来は売店の店員だと公言して憚らない。そのせいか、魔法の応用の仕方が非常に上手い。
特記事項:初期位置はダンジョンの生徒の未到達層
「おお、これは……中々に……」
「いいだろ? 強烈なのが出来るぜこいつは」
「そこはともかく、魔法の応用が上手いというのがいいですな。いい刺激になりそうです」
「おお、そうな。じゃあ……実行!」
―設定を確認……実行可能。実行します―
―ハリエット・ラピス顕現開始……顕現完了―
「お、今回は早かったな。さて、どうなるか……」
「ハハハ、ダンジョン付近にはも保護者が見に来ていますからなあ。さて、どうなりますやら」
気軽に笑う白猫コアとダリアン校長だが……だから想像できなかったのだ。
青春は、いつだって突然だということに。




