63話:世界のみなさーん! 再びの魔法学園ヤマダですよ!
そんな無数の思惑がありつつも……魔導祭の当日、招待状に書かれた海辺に、魔法学園ヤマダの入学式の時同様に多くの人々が集まっていた。
招待状を持っている者、同行者、そして魔法学園を見に来ただけの者……多くの目が魔法学園の「到着」を待っていた。
前回、突然現れた浮遊島。その正体を見極めんとする魔塔の魔法使いたちも集まっている。
なんだかんだ言いながらも浮遊島という浪漫あふれるものはやはり気になるということだろう。
まあ同時に、自分たちがそれを再現できたらと思っているだろうが……。
「今日は虹魔塔主様とご一緒できて本当に嬉しいです! 親戚から魔塔主様のお話は聞いていましたし、将来息子もそうなってくれればと思っていたんですが、まさか魔法学園とかいうところに入るだなんて。けれどその縁がこんな風に繋がるなんて!」
「ハハハ、俺も今日ほど縁というものを有難く思ったことはないです」
(俗物だな……まあ、他の魔塔の連中も似たようなものだが)
招待状の持ち主……名前は何だったか……とにかく、その男を適当に持ち上げながら虹魔塔主は魔法学園が現れるであろう方向へと視線を向ける。
先程から虹魔塔主も他の魔塔の連中も魔力の動きを探っているが、何も掴めない。
まだ居ないのか、それとも……と。そう考えたとき、虚空から一人の男が現れる。
その黒髪の男は恐らく教師なのだろう。しかし、一瞬凄まじい力が発生したら男が現れていた、ということしか分からない。まあ、コアによる転送機能なので分からなくて当然ではある。
「……私は魔法学園ヤマダの教師、アベル・オータムランド。本日は魔導祭の為にお集まりいただいたこと、感謝する。招待客ではない者もいるにはいるが、我々の実力を分かりやすく示す必要があるとのこと、そして歓迎の意味を込めてこの魔法を贈る……ファイアフラワー」
アベルが天へと向けた杖から何かが発射され……ドオン、という轟音と共に空に色とりどりの光がまるで大輪の華のように散っていく。
この昼間の青い空の中でもなお美しいソレを花火だといったところで理解されるか分からないが……コア発案のこの魔法をアベルが連続で打ち上げ、その度に歓声が響いていく……が、単純に喜べない者たちもいる。魔塔の魔法使いたちだ。
(なんだアレは……! 火魔法!? いや、光と風の力も感じる……複合魔法!? いや、合成魔法とでも呼ぶべきか……! くそっ、歓迎だと!? あんな威嚇を歓迎とはいい性格してやがる!)
一般人であれば喜び、魔法を理解する者ほどその深さに驚き、畏怖するような魔法。一体魔法学園の誰がそんなことを考え出したのか……当然コアである。原案であって、味付けはダリアン校長とアベルだけれども。そして虹魔塔主はその「歓迎」を正しく理解して、同時に魔塔の連中の中にもそこまで理解できない者たちがいることに舌打ちしそうになる。
「では魔導祭を現時刻より開催する。招待状の持ち主と同伴者は順番に進むように」
パチン、と。アベルが指を鳴らすと同時に浮遊島が出現したその事実に、今日何度目かも分からない青褪めるような感覚を虹魔塔主は味わっていた。
(隠蔽……幻影? 分からない……あのアベルとかいう男、いったいどれほどの……!)
「あの、虹魔塔主様?」
「あ、ああ……すまない。行きましょうか」
確かに何もない場所から浮遊島が現れたという話は聞いていた。
いたが……質の悪い魔法使いが何かを見逃しただけだと思っていた。だが、そうではない。
これは虹魔塔主の理解を超える超高度な魔法だ。理解する事すら許されない程に。
(……恐ろしい。あのアベルとかいう男の上に校長のダリアンとかいう男がいることが更に恐ろしい。魔法学園ヤマダ……俺が想定していたよりもずっと上なのでは……!)
実際のところ、虹魔塔主はかなり勘が良い。今回ダリアン校長ではなくアベルが出たのも「こんなに凄いこと出来るアベルより上がいるの!?」みたいなことを思わせる作戦だからだ。
前回より警戒している状況で一発凄いものを見せつけて、しかも魔法学園のトップではない。
その衝撃と想像のもたらすものたるや、ダリアンの予想通りといっていい。なおコアは説明されて「いいね!」と言っていた。
そう、魔法学園ヤマダの世界への二度目のお披露目はこの時点で成功したといっていい。
此処から先は、魔法学園ヤマダへの切符を手に入れた人々に思う存分見せつける番だ。
そして学園の誇る教師陣は今日このときのために、程よいレベルで魔法学園の力を見せつけるべく、全力で話し合って準備をしてきたのだ!
「ようこそ魔法学園ヤマダへ! 本日は魔導祭! 学園の誇る教師陣による屋台や出し物を思う存分楽しんでいただきたい! 夢のような体験になることを、この校長たるダリアンが約束しよう!」




